第31話「昼飲み親父」

 ギルドは街中と違って、アルガスをちやほやする人間が少なくていい。


 むしろ、嫉妬交じりの視線で見られているくらいだ。

 地元の冒険者はともかく、流れの冒険者や街出身者以外の冒険者連中にとって、街の英雄だとかの話は、どうでもいいのだろう。


 ズシン、ズシン、と歩きつつ、冒険者を威圧(別に威圧しているつもりはない……)しながら、アルガスは酒場の奥の方───入り口が見える席についた。


 ここなら、窓からミィナの姿も見える。


「エールと、後は適当にツマミを」


 クエスト中に行動食として飯を食べたので、腹が減っているわけではない。


 給仕に来た店員に酒を注文すると、どっかりと席に着き腰を押しつかせる。


「……俺に用事ねぇ?」


 一体、誰だろうか?


 ちょっと想像がつかない。

 これがもし街の住民だったならば、市長当たりのハニートラップを疑うのだが、聞けば冒険者だという。


 しかも、若い女性……。


「……………………皆目、見当がつかんな」


 運ばれてきた安いエールで喉を潤しつつ、ツマミの炒った豆をポリポリ。


 うん……塩味が旨い。


 特にすることもないので、ノンビリと飲んだり食べつつ、手持ち無沙汰なのでステータス画面を弄る。



 ブゥン……!


名 前:アルガス・ハイデマン

職 業:重戦車(ティーガーⅠ)


体 力:1202

筋 力: 906

防御力:9999

魔 力:  38

敏 捷:  58

抵抗力: 122


※ 状態異常なし


残ステータスポイント「+2304」


スキル:スロット1「戦車砲56口径88mm砲

    スロット2「車載機関銃MG34

    スロット3「対人地雷Sマイン

    スロット4「履帯蹂躙轢き殺せ

    スロット5「未設定」

    スロット6「未設定」

    スロット7「未設定」

    スロット8「未設定」


習得スキル:「近接防御90mm NbK39兵器擲弾筒

      「避弾経始維持昼飯の角度

      「荒野迷彩」

    

 重戦車:ラーニング済み

(その1)ティーガーⅠ



「ふむ…………」


 わからん……。


 アルガスはステータスをポチポチと弄り、ヘルプなどを参照していく。

 傍から見れば、ブツブツと怪しい人MAXだが、ギルド内では他の冒険者も結構やっているのだ。


(現状、ステータスを弄る必要はないな……ティーガーⅠが強すぎて、その必要性を感じられないし───いつか、必要な時のためにプールしておこう)


 取りあえず、スロットに収めるだけ収めておく



 ぽちぽち。


スキル:スロット1「戦車砲56口径88mm砲

    スロット2「車載機関銃MG34

    スロット3「対人地雷Sマイン

    スロット4「履帯蹂躙轢き殺せ

    スロット5「近接防御90mm NbK39兵器擲弾筒

    スロット6「荒野迷彩」

    スロット7「避弾経始維持昼飯の角度

    スロット「未設定」



 あとは、使いながら任意に変えていこう。

 というかティーガーⅠがマジで強すぎる。


 デメリットといえば、使用後はやたらと腹が減るし、多少なりとも魔力などが減っているが、所詮はスキルの範疇だ。


 ザラディンやメイベルの魔法とは異なり、使用制限がほとんどない。


 近い所で言うならジェイスの雷光剣や、リズの弓による「多段攻撃マルチショット」や「範囲射撃ハイレンジショット」だろうか?


 あれらも武器さえ無事なら、体力の続く限りいくらでも撃てる。


 もっとも、攻撃時のモーションの大きさや範囲の指定などができないので使いどころが限られるのがデメリットではある。


 それは、ティーガーの戦車砲でも同じことだが……。


 だから、腕のいい冒険者ほどスキルを乱発するより単純に剣技などの一撃に重きを置く。


 アルガスもどちらかというとそっち側だ。

 リズにも、そういった方法で冒険者をやるように教えていた。


 冒険者はスキルだけを使えて、敵をボカスカ倒せればいいものではない。


 たしかに、ジェイスは強いし、ザラディンやメイベルもかなりの使い手だが、それにおごって他の技術を学ぼうとしていなかった。


 確かに街で技を競うだけならそれで十分だろうが、冒険者とは───これすなわち魔物だけを相手にする商売ではない。


 時には自然。

 時には悪意。

 時には───味方……。


 そうした臨機に対して、素早く適応できなければ何処かで必ず失敗する。


 アルガスの失敗は、ジェイスのような権威に対して、それを突っぱねるだけの機転が利かなかったことだろう。


 だからリズを見失った……。

 痛恨のミスだ。


(くそッ!)


 バリンッ……。


 自分のミスに腹が立ち、知らず知らずの内に力が籠っていたのか、ジョッキを割り砕いてしまった。


 周囲の冒険者が、ギョッとした目をしていたが無視。


 給仕に謝罪して代わりのジョッキを貰い、手付の金を渡しておく。


 オカワリのエールに、口を付けようとしたとき───、


 ドガァァァァアアアアン!!!


 と、ギルドのスイングドアを蹴り飛ばして、乱入してきた小さな影が2つ。


 ひとつは、小脇に抱えられたミィナ。


 ふたつは………………、





「この子の保護者っちゅうんは、どいつやぁぁああ!」

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