光の戦士たち5

 夜───。


 広大な荒野にも夜は来る。


 リズの見つけた廃村にも、例外なく夜は訪れ、今はその闇を払おうと火が焚かれていた。


 焚火に周辺の人影は3人。


 ジェイス。

 メイベル。

 ザラディンの3バカ───勇者たちだ。


「いやー……一時はどうなる事かと思いました」

「まったくだ。リズを生かしといて正解だったな」

「ほーんと、下心丸出しのくせに、ファインプレーなんだから」


 ゲラゲラと笑う彼らは、腹こそ減っていたが取りあえず水をたらふく飲み、一時的にも空腹を誤魔化していた。


 何よりも誰よりも、渇きが本当に深刻だったのだ。


 辛うじて持っていた鍋を使って水を沸かし、井戸からくみ上げたそれを回し飲みをしている。


 少々苔臭いが、解毒魔法を使えるメイベルが毒見をした。


 もっとも、毒見を買って出たわけでなく、我慢しきれなかったメイベルが勝手に飲んでしまっただけなのだが……。


 巧妙な男性陣はといえば、実はそれをジッと見ていたりする。

 メイベルが腹を押さえて暴れ出さないかと───……。

 だが幸いにも毒の類は無さそうで、メイベルは元気にがぶ飲みしていた。

 そうして、ようやく水を飲んだ一行は一息をついていた。


「いやー……やっぱ、あの村に残るべきだったな」

「えー……いやよ。こんな土地に住む土着民と暮らすなんて」

「都市にも住めぬ掃きだし者の、はみ出し者、そしてあぶれ者の類ですよ。───荒野に住もうなんて連中は」


 違いない、とゲラゲラ笑うジェイス達。


 戦利品として持ち出した、純度の高いアルコールを回し飲みし始める。


 そして、気分良く自慢話をしている所に、


「何の話?」


 リズが帰ってきた。


「───お、リズじゃねぇか!」

「あらら、遅かったわね~。水飲むぅ?」

「なんでもありませんよ。ちょっとした小噺です」


 ふ~ん?


「それは?」


 リズが興味をもったのはアルコールだ。

 そんなものは、旅荷物になかったはず……───。


「え? あー……ざ、ザラディンのとっておきだよ」

「そ、そーそーそー! こういう時に飲もうと思ってたのよぉ!」


「え、えーえー! そうですとも。さ、リズ───あなたもいかがですか?」


 急に眼をキョドキョドを泳がせ始め、挙動の怪しくなる3人。


 わざとらしく酒を勧めてくるが、

「いらないわ。それより───火を借りるわね」


 焚火の間に入ると、火にあたり体を温める。

 荒野の夜は冷える。


「あー。リズ……そのぉ」

「わかってるわよ」


 ふぅ……。


 ジェイス達が、やたらと期待する様な目を向けてくる。

 コイツらに尽くしてやる義理は毛ほどもないけど、アルガスを思うなら見捨てるわけにもいかない。


「ごめんねぇ、大感謝~!」

「いやはや、さすがの私も荒野の食料までの知識は……」


 ゴチャゴチャうるさい3バカは放っておいて、リズは背嚢を開ける。


 そこに確保した食料をいくつか見繕い、木の板に並べると簡単に調理していく。


「えっと、」

「げ、」

「そ、それは……」


 リズの取り出したもの。

 

「虫よ。結構、おいしいらしいわ」


 そう言って、ウゾウゾと動く大量の虫を3バカに見せてやった。


「「「ぎゃあああああああ!!」」」


 ※ ※


 ぎゃあああああああああ!!


 3人で抱き合い、リズから距離を取ってドン引きアピール。


「何をギャーギャー言ってんだか、いらなきゃ、食べなくていいわよ」


 虫を初め、荒野で見つけた動植物。

 そして、廃村あとで見つけたものを順繰りに並べていく。


 巨大芋虫。(何の幼虫かは知らない)

 大量の毛虫。(何の毛虫かは知らない)

 でっかいトカゲ。(種類不明)

 リザードマンの卵。(多分、上位種)

 顔の長いネズミ。(何かいい臭いがする)

 棘だらけの植物。(汁がネトネト)

 西瓜みたいな実。(甘い香りがする)

 廃村の畑あとで見つけた、筋だらけの芋。

 ハーブ各種。

 岩塩と、山椒の葉っぱ。


 ま、こんなとこである。


「言っとくけど、確保できた食料はこれだけよ。今後獲れる保証もないから、えり好みしたら渡さないから」


 さっそく、芋や西瓜に手を伸ばそうとしている3バカに睨みを入れる。


 今は日持ちするものに手を出すわけにはいかない。


 特に、植物類は数日はもつはずだ。

 ならば、やはり足の速いものから───。


「マジでそれ食うのかよ」

「無理。絶対無理」

「せ、せめて火を通しましょうよ!」


 滅茶苦茶怯んでいる3バカを無視して、リズは調理を始める。


 廃村にフライパンがあってよかった……。


 食材に祈りを捧げ───。

 いざ調理開始。

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