第100話

 私は完全に自重を捨てました。

 中級精霊四柱との絆が、私を奢り高ぶらせているのかもしれません。

 中級精霊目線で人間を、いえ、王族を下に見てしまっているのかもしれません。

 それと同時に、ムク達の影響で群れを守りたい、仲間に食糧を与えたいという想いが、とても強くなっているのかもしれません。


 炊き出しに続いて病人やケガ人の治療を始めました。

 無償の治療を無暗に行うと、これまで治療で生活していた人達の仕事を奪い、路頭に迷わせてしまうことになります。

 だから治療費を払える人は診ないことにしました。

 治療費が払えない貧民街の人に限定しました。

 炊き出しのように、露店で診療するのは父上にも母上にも反対されたので、貧民街に近い空き家を購入して、そこ拠点に治療することにしました。


 次に働く気があって悪意のない貧民を召し抱えることにしました。

 特に身体を売って生活している売春婦と孤児を中心に召し抱えました。

 どうしても彼らが目に付いてしまうのです。

 ムク達の影響かもしれませんが、本気で働けば自分一人で食べて行ける成人男性ではなく、女子供を私の群れに加えようとしているのかもしれません。


 仕事はいくらでもあります。

 いえ、将来独立することを考えれば、領地を繁栄させる人材を今から育てておく必要があるのです。

 地下耕作地で労働する人間がまだまだ不足しています。

 彼らは将来私が開墾した耕作地を与えられ、食糧を作ってくれます。

 森や魔境で狩った獣や魔獣の素材を、加工して商品にする職人が必要です。

 一人前の職人を育てるには十年二十年といった長期の修行が必要になります。

 領内の職人に預けて育てる必要があります。


「御嬢様。

 犯罪者組合の者が様子をうかがっております。

 敵意を持った者が多く集まっております」


「組合長や幹部とは話がついていたのではなくて?」


「王都の犯罪者組合は規模が大きく、一枚岩とは言えません。

 多くの派閥に分かれていて、虎視眈々と組合長の座を狙っております。

 それに地区や商売によって派閥の利権が複雑に絡まっております。

 御嬢様が売春婦や孤児を集められたので、収入源がたたれた幹部もおります。

 破れかぶれで御嬢様を狙ってくるかもしれません」


「女子供を見捨てることはできないわ。

 歯向かってくるのなら返り討ちにするまでよ。

 戦闘準備は整っているの?

 必要なら犯罪者組合を根こそぎ叩き潰してもいいのよ。

 私に刺客を放ったこともあるのでしょ?

 一度はシーモア公爵家の家臣の中に付き合いのある者がいたから見逃したけれど、二度目はないわ。

 二度も見逃したら舐められてしまうわ。

 邪魔をするなら、譜代の家臣でも家ごと潰すわ。

 そのつもりで対処して」


「承りました」


 レヴィが真っ青になって下がっていきました。

 どういう決断をするのでしょうね。

 

 

 

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