第75話

「私が思い浮かぶ策は、ムク達に水をかけて火炎陣を突破させることです。

 事前に御嬢様に痛み止めを飲んで頂き、ムク達が火傷する度に御嬢様に治癒魔法をかけます。

 突破ができたら、そのまま敵を撃退させます」


「今はまだ私に飲ませてくれた痛み止めが効いているのですね?」


「はい。

 半日ほど効力のある痛み止めを処方しております」


「ムク達は既に水に入っていますね?」


「魔犬達が目潰しを受けて苦しんでいましたので、池で身体を洗った後です」


「だったら今が好機ですね。

 反撃に移りましょう」


「ですが御嬢様。

 苦痛ですめばいいですが、致命傷を受けた時に、御嬢様の心臓が止まらないとも限りません。

 御嬢様が魔獣と絆を結べば不死になれるというのは、まだ推測でしかありません」


 私がリリアンと意見を戦わせていると、コックスとオーロラが話したそうにしているのが目に留まりました。


「コックスとオーロラも考えがあるようですね。

 まずは魔犬を知るコックスから話して下さい」


 どちらから先に話を聞くのか、そんな些末な事でも寵愛争いというか、心が傷つくものだと、今ならわかります。

 だから、誰もが納得できる理由を言っておかねばなりません。


「ありがとうございます。

 リリアン殿の心配以上に不安な事がございます。

 もしあまりに強大な魔獣と遭遇し、従魔が喰い殺された時が怖いです。

 従魔が殺されるだけでなく、消化されてしまった場合、御嬢様にどのような影響があるのか、想像するのも恐ろしいです」


「確かに、それはとても不安ですね。

 リリアンはどう思いますか?」


「思案が至らず申し訳ありませんでした。

 御嬢様には苦痛を我慢して頂く事になりますが、即座に反撃してください」


「わかりました。

 オーロラの話は何ですか?」


「従魔達の反撃ですが、池の精霊に助力を請おうと思います」


「ちょっと待ってください。

 オーロラと絆を結んでいる精霊は、大地の精霊ノームでしたね」


「はい、左様でございます。

 このような危急の時に時に役に立てず申し訳なく思っています」


「いえ、そんな事はかまわないのですよ。

 人には得意不得意がこざいます。

 それぞれが能力にあった役割を果たしてくれるのです。

 オーロラに活躍してもらう時が必ず来ますよ。

 今無理に新しい精霊と絆を結ぼうとしなくても大丈夫ですよ」


「有難きお言葉、感無量でございます」


「ちょっとお待ちください。

 私の考えが至らなかったようです。

 オーロラ。

 精霊の能力的に可能かどうか教えて欲しいのですが、ノームはトンネルを掘る事ができますか?

 人間が通れなくて構いません。

 ムク達が通れれば十分です」


 リリアンが新たな策を思いついてくれました。

 

 

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