第63話

「ルーカス叔父上、申し訳ありませんが、魔獣達の事お願いできますか?」


「御任せください、姫様。

 姫様の魔獣達は、姫様がおられる時と同じように部屋を与え自由にさせます。

 御指示通り、雄には自由に狩りをさせます。

 雄が持ち帰って来た獲物は、雌や子に与えましょう。

 雄が馬房に持ち込んだ獲物は、加工して王都屋敷に送ります」


 叔父上が約束してくださいました。

 これで何の心配もなく王都に行くことができます。

 国王陛下の勅命で王都に行かなければならなくなりました。

 国のため王太子殿下のため、自ら潔く身を引いたのですが、運命を変えることはできないのか、王都に行かねばならなくなりました。


 生き戻る前は、王太子殿下の婚約者と言う、絶対だと思っていた地位でさえ、簡単に奪われてしまっているのです。

 盤石の権力を持っていると思っていたシーモア公爵家も、私の愚かな行動で取り潰されてしまうのです。

 しかもその全てを行った王家が、マナーズ男爵の傀儡になってしまったのです。

 叔父上一人の約束で安心してはいけませんね。


「メイソンにも御願しておきますね。

 この子達は私の命にも等しいパートナーです。

 王都に行く私の命綱と言ってもいい存在です。

 秘密を打ち明け、この子達を託せるのは叔父上とメイソンだけです。

 頼みますね」


「御任せください、姫様!

 命に代えて、この子達を護って御覧に入れます。

 本心を申せば、姫様を護って王都に御供したいのです。

 しかしながら、これほど大切な御役目を任せていただいた以上、勝手を申す訳にはいかないと、涙を呑んで諦めました。

 その分この子たちを護る事に命を賭けさせていただきます」


 メイソンの想いと言葉を少々重く感じてしまいます。

 いくら王太子殿下一筋の私でも、デビル魔境で共に狩りをし、デビルイン城で度々食事を供にしていれば、メイソンが私を好いてくれている事くらいは分かります。

 ですが、私の心には王太子殿下しかおられません。

 殿下のため国のため、殿下への想いは押し殺すしかありませんが、他の人と結婚する気にはなれないのです。


「ありがとうございます、メイソン。

 その気持ち、心からうれしく思います。

 私もその想いに応えるべく、公爵家令嬢としての責務を果たし、王都に参ります」


 リリアンの表情が引き締まっています。

 他の戦闘侍女も同じように厳しい表情です。

 ですがそれも仕方ありません。

 国王陛下からの急な勅命による王都への移動です。

 休暇を与えられている戦闘侍女を待つ事ができません。

 出産育児中の魔犬達も残していかねばなりません。

 領地に戻る時に比べたら激減した戦力で、必ず襲撃されるであろう王都までの旅程を、私を護りながら移動するのです。


 いえ、そうではありませんでしたね。

 王都を出る時には、私のパートナーはムクしかいなかったのでした。

 いつの間にかあまりに自然な存在になっているので、生まれてからずっと側にいてくれた気がしていました。

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