第39話王太子ウィリアム視点
正直驚いた!
マールバラ伯爵がシーモア公爵を裏切るとは思わなかった。
マールバラ伯爵はシーモア公爵に次ぐシーモア公爵派の実力者だった。
それがラトランド侯爵の意見に賛成したのだ。
しかもマールバラ伯爵だけではない。
シーモア公爵派と目されていた重臣一人が同調した。
中立派と目されていた二人も賛同した。
シーモア公爵派が圧倒的多数で献策を通すと思われたが、拮抗する人数となってしまった。
父王陛下と母上は迷っていらっしゃるようだった。
どちらの献策も一長一短がある。
安定を選ぶならシーモア公爵の案だ。
王国を発展させるのなら、ラトランド侯爵の案がよさそうに思えるだろう。
だが私には、好機だった。
断ち切れないグレイスへの想いを達成するためには、時間稼ぎが必要だった。
それにグレイスへの機会を残すなら、シーモア公爵もサマンサ案に拘泥しない可能性もある。
「父王陛下。
私の考えを述べて宜しいですか?」
私が願い出ると、父王陛下は安堵したようだった。
「許す。
話してみよ」
「皆が混乱するのは、婚約を辞退したグレイスが一番相応しいと思っていたからです。
グレイスが婚約を辞退しなければ、このような事にはならなかったのです」
「しかしながら王太子殿下。
グレイスは身体を壊してしまい、王妃殿下の激務を務める事ができません」
シーモア公爵がグレイスの体調を心配して嘴を入れるが、気にしていてはグレイスを手に入れる事などできない。
「それは聞いているし、確認もした。
確かに今は身体が弱っている。
だが時間が経てば健康を取り戻すかもしれない。
それに、身体が弱いのなら、正妃を補佐する側妃を置けばよい。
決してグレイスを蔑ろにしない者を側妃に選べばよい。
グレイスに忠誠を誓う侍女がいるであろう」
「それは……確かに忠誠無比の侍女はおりますが、グレイスが子を産めなければ結局同じでございます。
グレイスが肩身の狭い思いをして不幸になります」
娘を想う父親の心は分かるが、その言葉は私の愛情を疑っているように聞こえる。
子供ができなくても、私のグレイスへの愛情は変わらない。
「それは違うぞシーモア公爵。
貴君はサマンサ嬢と養子縁組して親子の絆を結ぶと言ったではないか。
同じように、グレイスが信頼する侍女が側妃として産んだ子供を、グレイスの養子にすればいいではないか!」
「それは……その通りではございますが……」
私は何もシーモア公爵を言い負かしたいわけではない。
シーモア公爵の影響力を削ぎたいわけでもない。
いや、グレイスを正妃に迎える事ができるのなら、今以上にシーモア公爵の力が強まっても構わないと思っているのだ!
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