アイスクリームシンドローム - スキマスイッチ


 前回からの流れを受け、切ない夏の曲繋がりでこの曲が選曲されました。


 はい、言いたいことは分かります。スキマスイッチといえば、「奏」や「全力少年」でしょうっていうお声が。有名曲から行きますと言っておいて、それらをあえて避けるのは詐欺以外の何物でもないだろう。というご意見もしかと受け止めました。


 受け止めましたが、それで僕の性格が変わるわけではありません。ここでは、有名であっても僕が言及したい曲と、もっと有名になって欲しい曲の紹介棚ですから。個人の裁量に全面的に則った企画であることをご承知おきください。ご承知おき頂かなくとも、曲を聞いて「良いな」と思って頂ければそれで結構です。

「Askewは人の気持ちが分からないスカポンタンだな!」と正鵠を得た発言は響きません。真実ですからね。一緒に頭を縦に振りましょう。


 前置きが長くなりましたが、今日はアイスクリームシンドロームです。この曲は一言で言えば、「友達から踏み出す勇気のない臆病者が失恋する歌」です。こんな言い方をしたら元も子もないのですが、「後の祭り」感を言い表すには、そのくらい情けなく言った方が良いと判断しました。

 

 歌詞を見ればすぐに分かります。


 ――――――――――


 陽炎の中で立っている 不器用なだけのボンクラ

 ぼやけている世界でも 君だけは歪まないや

 

 友情って名前のシンドローム 出口の無い永久迷路

 動くのも怖いから 踏み出せないでいる


 食べようとしていたはずのアイスクリーム

 べたべたに溶けていたんだ

 運命って待ってくれないんだなぁ


 ――――――――――


 あぁ……!!


 分かりますかね。このどうしようもない臆病者の気持ちが。男なら行動あるのみ、という標語の真逆を行く、チキンで情けないデクノボウの想いが。現状に満足して、本当の自分の気持ちに気付いているくせに何もしないで、手をこまねいて、終わってから感傷に浸る女々しい男の気持ちが……。そしてこの後に続く、2番のサビとラストの大サビが更に感情を湧き立てます。


 一歩下がってみて見れば、友達関係という帰結に陥った時点で男には魅力がないのです。こんな男に寄ってくる女なんて、ほくろとほくろの間をつまんで「ぞうさん」とか言いながら、暇をもて遊んだ幼少時代を持つ人並みに希少だと思うのです。


 でもね、僕は世の中には完璧超人ばかりではないと思うのですよ。世界はこんなクソ野郎で溢れていると思うのですよ。漏れなく僕もそのクソ野郎の中の一人です。幾度と無く、自分が傷つきたくないから、現状を壊したくないなんて言い訳を盾にしてきました。クソ野郎の名に恥じぬ生き方をしてきたつもりです。


 幾度もの夏を無駄に過ごし、幾度も自分に気付かない振りをして、幾度もの失態を繰り返してきました。


 振り返っても、もう少しどうにか出来ただろうと薄ら笑いが出てくるほどです。そんな何をしても裏目ってしまう人間にとっては、表を出せる人間は尊敬に値しますし、同類は同情に値します。繰り返しますが、僕は僕の同類の方が多いのではないかと考えています。


 世の中、数の暴力というのは往々にしてあり得ると思います。つまり、いくら情けない内容であっても、現実に完璧超人なんて圧倒的に少ないのですから、この曲はもっと多くの野郎に刺さるのではないか、と感じています。


 ――――――――――


 いつになくマジメな声で誘い出してみようかな


 ――――――――――


 そして、いつか。

 ボンクラの中から、マジメに誘い出す馬鹿が現れることを祈っています。





 アイスクリームシンドローム / スキマスイッチ

 https://www.youtube.com/watch?v=y2e5J9kxCwI

 (Short Ver)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る