After Data.29 弓おじさん、激突する双子山
「いや、耐えている場合でもないか!」
【
流石に24秒では山の頂上付近からふもとまで飛ぶことは出来なかった!
こうなると着陸を考えないといけなくなるが、無理な減速をするとバランスを崩して地面に投げ出されることになる。
だから、ここはあえて減速なしの攻めの着陸を敢行する!
「ネクス! しっかり掴まってるんだぞ!」
「こ、今度は何をする気だ!?」
「テイクオフ!」
俺は急斜面を生かして限界まで加速し、宙を飛ぶ!
まるでスキージャンプのように!
そしてこの瞬間、炎の翼は消滅した。
「うわあああっ!! これでは落下ダメージで……!」
「いや、落下ダメージは無効さ!」
俺は足から地面に落下する。
同時にスキル【ストロングフット】の効果が発動!
落下ダメージを無効化し、足にダメージ量に応じて威力が上がる衝撃波をチャージする!
やはり【不死鳥の双炎翼】と【ストロングフット】の相性は抜群だ!
「ビックリさせてすまない。地面スレスレで減速するより、この方が安全な着陸方法だと思ってね」
「ああ、その通りだ……。【ストロングフット】の効果を失念してた私が悪い」
ネクスが俺にしがみついたまま言う。
彼女は名前や赤い見た目からして不死鳥フェニックスをモチーフにしていると思うのだが、高いところが苦手だったりするんだろうか?
まだまだ彼女への興味は尽きない。
ヴォオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!
おっと、今は戦闘中だった。
それもまだ本格的な戦いは始まっていない!
ふもとまではあと少し……!
なんとか移動を続けなければ!
「そうだ! エイティは無事か……!?」
背後を振り返った時、エイティもまた宙を飛んでいた。
いや、『飛ぶ』よりも『舞う』という表現がふさわしい……。
エイティは宙を舞っていた!
「あれは……ムーンサルト!」
巨体を華麗に捻り、回転し、ブレることなく着地する。
うーん、これは10点満点だ!
――ぴこんっ! ユニゾン『エイティ』が新たな奥義【ムーンサルト】を獲得しました。
◆獲得理由
『華麗なる月面宙返り』
完璧なムーンサルトを決める。
【ムーンサルト】
月光のごときオーラをまとった両足で高く跳び、宙返りの要領で敵を蹴り上げて攻撃する。
その後、着地までに決められた動作を完遂することで攻撃を加えた対象にさらに追加でダメージを与える。
ま、まさかのタイミングで奥義を覚えたっ!?
名前もそのまんま【ムーンサルト】だし、説明文の『着地までに決められた動作』というのも、きっとリアルに存在する『ムーンサルト』という体操競技の技をやれということなのだろう。
確か……『後方二回宙返り一回ひねり』だったかな?
俺も空中で2回宙返りをして、1回体をひねり、ブレることなく着地をすれば、この奥義を獲得することが出来るのだろうか?
それとも、エイティのようなビッグフット系モンスター限定の技なのだろうか?
……どちらにせよ、俺にそんな動きは不可能だから考える必要はないな!
今考えるべきは、どうやってイフリートの追跡を逃れ、ふもとにたどり着くかということだ。
炎の翼は消えてしまった……。
これではエイティの前に雪の道を作ってあげることも出来ない……。
「……いや、手はまだある。エイティ! 俺とネクスを抱えてくれ!」
「ヴルル……ッ!」
「私はまさにお荷物だな!」
「い、いや、そんなことはないよ……。ネクスの出番はこれからさ!」
小脇に抱えられたネクスはぐったりしているが、あまり励ましている時間はない。
俺には道を作る使命がある……!
「ブリザードストリーム! エイティ……ゴーだ!」
「ヴルル……ッ!」
エイティの小脇に抱えられた俺が正面に向かって【ブリザードストリーム】を放てば、エイティの向かう方向に自動的に雪の道が作られていく!
これぞ『いつでもどこでもスキー作戦』!
もし俺がエイティのスキー技術を知っていれば、最初からこの作戦で山を下っていたと思う。
それくらいリスクが少なく、スピードは速い!
俺たちはあっという間に火山のふもとに到着した!
「よし、ここまで来れば傾斜もキツくないし、転がってくる噴石も避けやすい! ここから反撃開始だ! 頑張ろうネクス! エイティ!」
「ヴルル……ッ!」
「ふふふ、お荷物の汚名……返上させてもらう!」
「いや、ちょっと待ってくれ……」
「なぜだ!? 私は一生お荷物なのか!?」
「何か……雪山の方からも音が聞こえないか?」
そして何より、『戦闘空間』は雪山の方にも広がっている……!
本来ならこれは喜ぶべきことだ。
火山のボスを雪原におびき寄せて戦えるのならば、これほど自分たちに有利なことはない。
まさに理想的な戦闘の流れ……。
しかし、このNSOというゲームはそこまで甘いものではない。
『戦闘空間』が雪山まで広がっている理由はプレイヤー救済ではなく……!
ブォオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!
雪山の方にもボスがいるということ!
降り積もった雪を巻き上げながら
その頭部には雄々しい角が生えている!
こいつは雪山の洞窟の壁画に描かれたボスモンスターにそっくりだ……!
つまり、これから俺たちは2体のボスモンスターを同時に相手しなければならない!
厳しい戦いになるだろう……。
しかし、この戦いを勝ち抜いた暁にはVとA……紅白装備のすべてが揃う。
やっと風雲装備再生に向けて動き出すことが出来るんだ……!
「やることは変わらない。すべて倒すだけだ」
間に合わせで選んだ装備たちもここまでよく頑張ってくれた。
特に武器の『ショットクロスボウR』はよくやっている。
あと少し……俺に力を!
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