After Data.24 弓おじさん、噴火力充填
それは『Vフェニックスアーマー』と同じ金属の鎧だった。
腰回りと太ももを守る紅い金属プレートの表面はドラゴン……いや、トカゲ?
まあ、爬虫類の鱗っぽい細かくザラザラした質感になっている。
頑丈そうな分、動きにくいかと思いきや案外そうでもない。
股関節周りは柔軟な生地で出来ているようだ。
おかげで脚の可動域に不満はないが、流石にふわっとした風雲装備の袴に比べると少し動きにくいし重みもある。
ただ、重みは射撃時の体の安定にもつながるし、デメリットばかりではない。
要するに慣れしまえば問題ないということだ。
「さて、ステータスはどうなっているかな」
◆Vサラマンダーレッグ
種類:脚部<軽鎧> 攻撃:40 防御:40 魔防:40
武器奥義:【噴火力充填】
やはり、こちらも『攻撃』が上昇する装備か!
代わり『防御』と『魔防』が見た目よりも低いという特徴も『Vフェニックスアーマー』と同じだ。
となると、一番の注目点は武器奥義の【噴火力充填】だが……。
【
この奥義発動後に行われる最初の攻撃に属性『噴火』を付与し、その攻撃の威力を50%上昇させる。
クールタイム:3分
これは……いわゆる自己強化効果?
それも1回の発動につき1回の攻撃のみを強化する非常に非効率的な効果だ。
強いのか弱いのかは、この『噴火』という謎の属性によって決まる!
俺は『噴火』の文字をタッチし、説明文を呼び出した。
『属性『噴火』は属性『火』の上位属性です。属性『火』にとって不利な属性相性をすべて無効化し、有利としている属性へのダメージは3倍になります』
火属性の上位属性……だと?
不利な属性相性を無効化するということは、水属性などとも対等に戦えるということか!
それに有利属性に対しては3倍のダメージ……!?
氷属性や植物属性モンスターに噴火属性を付与した【
しかも、3倍ダメージということは【
まさに火を上回る火の属性!
これからの雪山攻略に大いに役立ってくれることだろう。
それに【
相手の属性がなんであれ、シンプルな攻撃バフとして運用することも出来そうだ。
うーむ、どんな場面でも腐りにくい良い奥義じゃないか!
これで火山の装備は2つになったし、雪山のさらに奥地へと進むことが出来る。
しかし、壁画的に火山の残りのボスは1体だ。
このままじゃ装備は3つだけでシリーズ装備にならない……と、少し前までは思っていた。
いや、正直『Aビッグフットブーツ』を手に入れた時から薄々感づいていた。
火山で手に入るVの装備と雪山で手に入るAの装備。
これらは合わせて1つのシリーズ装備となる!
その証拠に脚部装備の『Vサラマンダーレッグ』と両足装備の『Aビッグフットブーツ』のちょうど
これは2つの装備がシリーズ装備であることを意味しているに他ならない。
それに壁画の数的にVの装備は3つ、Aの装備も3つで計6つとなるはずだ。
シリーズ装備とは基本的に『武器』『頭部』『両腕』『胴体』『脚部』『両足』の6つで構成されるので、この部分でも辻褄が合う。
やはり、VとAの装備は1つのシリーズなのだ。
風雲装備のように全体で統一感のあるシリーズではなく、あえて異なる2つの属性を併せ持ったシリーズ……。
いうなれば『VA装備』、または『紅白装備』か。
まあ、呼び方はどちらでもいい。
大事なのは、このまま火山と雪山を順番に攻略していけば、強力なシリーズ装備が手に入る……ということ!
残る装備は火山に1つと雪山に2つの計3つ。
数的にはちょうど折り返しだが、難易度的にはどうだろうな。
「エイティ、次に向かうとしようか」
「ヴルル……ッ!」
俺たちはボス部屋から抜け出し、火山を下りて雪山へと向かった。
その途中の雪原で、俺はふとネクスのことを思い出した。
彼女と初めて出会ったのは、この雪原だった。
今はプレイヤーとの交流イベントをこなしているとのことだが、上手くいっているだろうか?
お嬢様のような尊大な口調をしているが、本当は不器用で真面目な女の子だ。
苦手なことを頑張りすぎて、気が滅入っていなければ良いのだが……。
「ヴルルルルルル…………ッ!」
おっと、考え事をしている間に雪山に着いていたか。
敵モンスターを発見したエイティが唸り、攻撃を仕掛ける。
うむ、やはり地元の雪山では動きのキレが違うな。
エイティだけでも山の低いところのモンスターには対応できる。
この調子でさらに上にあるはずの洞窟を探そう。
「……今回はあっさり見つかったな」
しばらくして、俺は雪山2つ目の洞窟を見つけた。
真っ白い雪山の中で真っ黒い口を開けている洞窟は非常に目立つが、前回は発見するのにもっと苦戦したような記憶がある。
まあ、あの時はネクスの戦闘訓練も兼ねていたし、何より今回は現地のUMAがいるからな。
リアルでもゲームでも、険しい山を登る時は現地の案内人の力を借りるに限る。
洞窟の構造はやはり今までの物と変わらなかった。
違いといえば、壁が白く発光していることくらいで、壁画もこれまで通り雑魚モンスターからボスモンスターの流れで描かれている。
今回のボスは……巨大な拳を持つ毛むくじゃらのモンスターだな。
「さあ、どうなるか……!」
俺はこれから戦うボスのことより、ある悪魔的な発想で頭の中がいっぱいだった。
新たなる武器奥義【
ぜひ、ボス相手に試してみたい……!
俺は高まる欲望を抑えつつ、洞窟の最奥へと足を踏み入れた。
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