Data.211 弓おじさん、破魔の矢と札

悪滅あくめつ札祭ふだまつり……!」


 敵パーティの1人『ユーリ・ジャハナ』の手から無数のお札が放たれる!

 【ワープアロー】でワープした先にいたのが彼女で助かった……!

 相手パーティの中でプレイヤーとして一番未熟なのは彼女だ。

 俺がワープで急に現れたことに驚いていたし、そのせいで攻撃が遅れていた。


 おかげでこちらは対応するだけの時間を与えられたわけだが……。

 それはそれとして、投げるお札の量多すぎない?

 お札という武器はカテゴリー的に飛び道具に分類され、投げて運用するのが基本のようだが……それにしても投げる量が多すぎないか!?

 しかも、敵を追尾する『ホーミング効果』があるみたいだし、走り回って避けるのには限界がある!


退魔防壁たいまぼうへき!」


 回避できないなら受け止める!

 さらに……!


斬魔攻刃ざんまこうじん!」


 受け止められないかもしれないので相殺する!

 ほぼ同時に放たれた2本の矢の間に張られた刃がお札の群れを切り裂いていく。

 このまま連射すれば、何発かはユーリに届くかもしれない!


「連続射撃、斬魔攻刃!」


防災ぼうさいの札祭!」


 今度はお札を何枚も連結させて大きな盾を作り出す。

 光の刃はその盾に阻まれ、ユーリに届くことはない。

 ならば……!


浄魔滅光じょうまめっこう!」


 弓からピィィィィィっと細く青白い光のレーザーが発射される。

 このスキルの特徴は……持続時間の長さにある。

 少し当てる程度では大したダメージを与えられないが、長い持続時間を生かして同じ場所にレーザーを当て続ければ、その威力は奥義に匹敵する……かも!

 実際このスキルをそこまで長時間当てたことがないからよくわからない。

 そもそも矢を撃つのとレーザーを照射するのでは感覚がぜんぜん違うから、当て続けるのも結構難しいんだよなぁ……。


 とはいえ、今回はユーリの動きが止まっているから普通に当てられる。

 最初はレーザーを受け止めていたお札の盾も徐々に焼け焦げていき、ついには貫通!

 その後ろにいたユーリの身を焼いた……!


「うくっ……!」


 ユーリは盾を捨てて移動を開始する。


神通じんつうの札祭!」


 これは……地面を滑る無数の札の上に乗って移動するスキルか!


封魔縛陣ふうまばくじん!」


 矢の刺さった場所に正三角形の魔方陣を展開し、その中に入った敵を捕らえるこのスキルを進路上に展開すれば、勝手に入ってくれるだろう。

 移動速度が速くなればなるほど、急な方向転換は難しくなるからな。


「うわっ……! 後退、後退……!」


 驚くことに地面を滑る札たちは滑る向きを変えてバックを始めた。

 これを応用すれば敵の方を向きながら後ろに下がれるわけだから、なかなか有用なスキルだな……!


「やはり、私におじさんの相手は荷が重すぎます……。でも、諦める気はありません……! 雨乞あまごい大札祭だいふだまつり!」


 ばんざーいと天に向かって投げられた大量の札が集まって、雲のような巨大な塊になる!

 奥義の名前的に次に起こることは大方予想がつく……。

 相手が破魔の札を使う巫女さんということで、俺も影響されて破魔弓術のスキルばかり使っていたが、こればかりはいつもの奥義に頼るしかなさそうだな!


雷鳴天羽矢の大嵐サンダーアローテンペスト!」


 降り出した札の雨と雷の矢の嵐がぶつかる……!

 勝ったのは……俺の矢だ!

 ここで油断せずにさらなる追撃を加える!


巨大獄炎の矢ビッグインフェルノアロー!」


「うっ、あっ……! 防災の札祭! 五枚重ね!」


 お札で出来た盾を五枚重ねたところで、燃え盛る巨大な炎の矢を受け止めることは不可能だった。

 ユーリは矢に貫かれ、HPを大きく削られる……!

 まだキルされないのは、なんだかんだ重ねた盾がダメージを減衰させたのか、そもそも装備が硬いのか……。

 どちらにしろ、後は冷静にトドメをさすだけだった。

 数発スキルを撃ち込み、ユーリのHPをゼロにする。


「みんな、ごめんなさい……。おじさんからは逃げろって言われてたけど、私では逃げることすら難しかったです……!」


 なんか、危険人物みたいに言われてる……!

 俺はマココのことを化け物みたいなプレイヤーだと思ってるけど、他のパーティから見れば俺も似たようなものなのか……。

 いやいや、あそこまでゲームが上手くはない。うぬぼれだ。


 でも、マココに勝ちたいなら、そのうぬぼれを現実にしないといけないんじゃないか?

 もはや、謙遜など何の役にも立たない……!


「うぬぼれていくしかないな! 嘘も100回言えば真実になるみたいな感じで……!」


 ……それはちょっと違うか?

 まあいい! 要するに理想を現実に変えるってことだ!

 1人相手プレイヤーを倒したし、ネココの加勢に向かおう!


「そういえば、ガー坊は大丈夫だろうか……」


 クロッカスJr.を道連れに川に落ちて以降、動向がまったく掴めていない。

 ユニゾンはパーティに入れても入れなくても構わない自由枠なので、時間切れの際に残り人数で勝敗を決める場合でも人数には含まれないし、プレイヤーが全滅してユニゾンだけが残っていても負け扱いになる。


 しかし、その戦闘能力は高く、ユニゾンと一緒に戦えるかそうでないかで戦闘の勝敗が分かれても何もおかしくはない。

 プレイヤーと同じくキルされればアナウンスが流れるし、それがない以上ガー坊は無事なんだろうけど……心配だ。

 とはいえ、探したところで見つけられる確証はないし、俺がマココと戦っている間にふらっと合流してくれることを祈るしかない。

 それこそ、クロッカスJr.を倒した後に……な。

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