Data.146 弓おじさん、残骸のオロチ

「ドリルレターアロー!」


 開幕を告げる一矢は敵の情報を調べる【レターアロー】と機械属性に特効を持ち貫通力を上げてくれる【ドリルアロー】の融合奥義だ。

 本来攻撃判定を持たない【レターアロー】も攻撃スキルと融合することで簡単には相殺されなくなる!

 矢は目論見通りヤマタノオロチに命中し、その情報を俺に明かす。


 ◆機械偽神きかいぎしんヤマタノオロチ

 属性:機械/幽霊

 スキル:【八天光やてんこう】【八つ裂き】

 解説:

 怨念を宿した兵器の残骸の集合体。

 殺意の産物である兵器の怨念は通常より強く、その力は偽りであれど神に迫るほど。

 多彩な攻撃を回避するためにも、8つの頭に連携をとらせてはいけない。


 機械で造られた偽りの神か……!

 説明文だけ読むと勝てる気がしないが、属性は俺とガー坊が弱点を突きやすい『機械』と『幽霊』だ。

 それに加えて相手は巨体なので矢を回避することが出来ない。

 おそらく、こちらからダメージを与えること自体は苦労しない。


 問題は相手の攻撃をこちらがしのげるかという点だ。

 こっちは戦力が2人。

 単純計算で1人あたり頭を4つ相手にしなければならない。

 時間がかかればかかるほど追い詰められていくのは目に見えている。

 だから、戦闘序盤からあの奥義を使う!


「ガー坊! 黒子ガイル!」


「ガァー! ガァー!」


 ガー坊が5体の分身を生み出す。

 これで俺、ガー坊、分身で7対8だ!

 俺が2つの頭を相手にすれば数の上では問題ない!


「あ、そういえば俺も分身スキルを持ってるんだった」


 正確にはグロウカード〈鏡写しのミラアリス〉の効果で生み出すダミーだ。

 ガー坊の分身と違って攻撃はしてくれないし、敵の攻撃で簡単に消えてしまう。

 使いどころを見つけられずここまでほぼほぼ空気だったが、ちょっと使ってみるか……。


「ダミー!」


 うーん、本当に俺そっくりのダミーだ。

 攻撃力も耐久力もない代わりに、見た目だけは俺とまったく変わらない。

 対人戦でプレイヤーをあざむくために使うものなんだろうけど、俺はいつもそこまで頭が回らない。


 というか、ボスモンスター相手には効くんだろうか?

 ……お、ヤマタノオロチの頭の一部がチラチラダミーを見ている。

 ボスモンスターから見てもこのダミーはそっくりで見分けがつかないんだな。

 これは良い情報を得た。戦いの間は適当にダミーをばらまいておこう。


「よし……! ガー坊、最初から雷で畳みかけるぞ!」


「ガァー! ガァー!」


 ガー坊と分身たちが【電気の奔流エレキテル・リバー】をぶっ放す。

 そして、俺も同時に奥義を発動する。


雷の矢の嵐サンダーアローストーム!」


 電気、稲妻、雷、サンダー!

 フロア全体が痺れるような閃光で満たされる!

 流石にこの攻撃はオロチもこたえたようで、すべての頭がのたうち回る。


 がしかし、これで撃破とはいかない。

 オロチはすぐに立ち直り、全身から無数のミサイルを発射する……!

 ホーミング効果があるのか、糸のような煙をひいたミサイルはすべて俺たちの方に迫る!


「ガァー! ガァー!」


 ガー坊と分身たちは【赤い閃光】を発動。

 口から赤いレーザーを放ってミサイルを撃墜していく。

 ならば、俺もレーザーだ!


浄魔滅光じょうまめっこう!」


 グロウカード〈破魔弓術・四印〉の中でも最後に手に入ったスキル【浄魔滅光じょうまめっこう】。

 効果は単純にして明快、弓からレーザーのような青い光を照射する!

 通常の矢のように一発撃って終わりではなく、数秒間レーザーは発射され続ける。

 その間攻撃判定は出続けるし、当てたい敵に照準を合わせ続ける技術がいる。

 ちなみに発動キャンセルはいつでも出来るので、回避されても数秒間隙を晒し続けることはない。


 放たれるレーザーをぶんぶんと揺らし、とにかくミサイルを撃ち落としていく。

 むぅ……流石にすべては撃ち落とせないか……!


「退魔防壁!」


 ドーム状の結界を展開する。

 破魔弓術は幽霊系の敵以外にも効果を発揮する。

 ただ、性能は少し下がる……!

 ミサイルを何発か受けた【退魔防壁】にヒビが入る。

 ガー坊の分身も何体か消えたが、生き残った分身は再び【電気の奔流エレキテル・リバー】でオロチを攻めたてる。


「ガァー! ガァー!」


 そして、ガー坊本体はオロチの隙をついて【紅い死喰回転クリムゾンデスロール】を発動。

 8つある首の1本に噛みつき、ねじり切った!

 相変わらずとんでもない破壊力……!

 ガー坊が敵ではなく味方にいることを感謝するばかりだ。


 ガギャアァァァァァァーーーーーーッ!!


 オロチが鳴く。

 残っている7つの頭が大口を開き、エネルギーをチャージし始める。

 あの動きは……口からビームだ!

 それもかなりの大技……!

 いくら攻撃してもチャージが止まらない!


 【レターアロー】の情報にあった【八天光やてんこう】はこれのことかもしれない。

 あそこのスキル欄に表示されるものは、たいてい大技だからな。


「ならばこちらも大技だ! 南十字星型弩砲サザンクロスバリスタ!」


 チャージ中オロチは動かない。

 こちらも狙いたい放題だ。

 出来る限りすべての頭を巻き込まめるように狙いを定め、発射の瞬間を待つ!

 吐き出すビームを撃ち消し、そのまま頭を攻撃出来るように……!


 ガギャアァァァァァァーーーーーーッ!!


 7つの頭から極太のビームが放たれた!


「発射ァ!!」


 俺にしては良い反射だ。

 発射されたバリスタはビームと衝突し、激しい火花を散らす……!


 撃ち勝ったのは……当然バリスタだ!

 ガー坊のサポートがあったのも大きい。

 オロチの頭はさらに数を減らし、残り4本になった。


 もう敵の性能は半減している。

 ここまでくれば、後は油断せずに1本ずつ頭を削っていくだけだ。

 オロチの8本の頭の連携より、俺とガー坊の連携の方が何枚も上手だったな!

 大半は雷の力だった気がするが……それも含めて俺たちの力だ!

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