Data.63 弓おじさん、マネーハント
「風雲一陣! 舞風! 浮雲!」
風を受け、舞い上がり、雲に乗る。
これで狩場の真上に陣取ることに成功した。
あとはここから地上のモンスターを見つけ次第撃ち抜くだけだ。
出来る限り他のプレイヤーが先に戦っている獲物を横取りしたくない。
狙うのはフィールドに
俺の長射程ならどこに出現しようが見つけ次第攻撃することができる。
キリリリリ……シュッ! ザクッ!
ここは体の一部が金属のように光っていたり、宝石が埋め込まれているモンスターが多いな。
流石はマニマニヒルズ周辺、モンスターもお金持ちだ。
そもそもモンスターからドロップした素材を売って1万
俺はいらないアイテムをまとめて一括で売るけど、何十個も同時に売っても1万の大台にはなかなか乗らない。
ポン、ポン、シュポポンッ!
撃ち抜いて倒したモンスターのドロップアイテムが、俺の元に飛んできて勝手に回収されていく。
フィールドでの狩りはこのシステムがあるから楽だ。
陣取り合戦は回収が大変だったなぁ。
そして同時に、地上で暴れているガー坊が倒したモンスターからもアイテムが飛んでくる。
ガー坊は近くにいる敵を見境なく倒してしまうので、もしかしたら他のプレイヤーが戦っているところにお邪魔しているかもしれないが……お魚なので許してほしい……。
さて、ゲットしたアイテムを確認だ。
「うお、ドロップ品は宝石系か……。こりゃ1万に届くかより、超えないかを心配しないとな」
アイテムの値段を調べるのが確実なクリア方法だが、一回くらい直感だけで挑戦してみてもいいかもとか思いつつ、【浮雲】の制限である1時間3個を使い果たし、地上に降りる。
【浮雲】は1個5分で消滅するので実質狩りは15分間だったが、十分な数のアイテムを入手できた。
短い時間の分、集中できたので狙いを外すことも少なかった。
後はこのドロップアイテムの中から1万
「やっぱ1回くらいは直感で選んでドキドキ感を味わいたいなぁ」
ということで、俺は『
『おおっ! 必勝法をわかっていながら、あえて普通に挑戦とは感心だにょん! そしてそして、今回の挑戦でピタリ賞は……出ませんでしたぁ!』
早い……!
分身しても捌ききれないプレイヤーが後ろで待っているから仕方ないとはいえ、あまりにもタメがなさすぎる。
『でも、まだチャンスがあるにょん! 設定金額の500NS以内の誤差ならニアピン賞でメダルはプレゼントだにょん! 今回のキュージィさんのお値段は……1万! 8000! 1万8000NS! 大誤さーん!』
く、宝石はやっぱり高く売れるなぁ……。
その分、見誤るととんでもない誤差が出る。
俺の予想では『
でも、1万8000なら8000は当たっているかも?
もしかしたら、ルビーが5000くらいするのか?
手元にある『
ルビー、サファイア、エメラルドの順番で価値が高くなっていくと思っていたが、もしかして逆か?
なんだかこのままクリアしたくなってきた俺は『
『むっ!? むむっ!? これはこれは……ピタリ賞が……!?』
いけるか……!?
いや、まだだ。ピタリ賞のもったいぶり方には無限のバリエーションが……。
『出ましたぁーーーーーーっ!! ピタリ賞でーす! 1万
チャリンが大声を上げたので、周りがざわつく。
そういえば、待っている間彼女がこんな大声を上げたところは見たことがない。
必勝法があるのだから、ピタリ賞はたくさん出続けているはずなのに……。
『自分なりの予想で当てた人にだけ叫ぶようにしてるにょん! そうじゃないとずっと叫ばないといけないにょん!』
なるほど、そりゃそうだ。
それにしても、宝石狙いが当たったな。
宝石は売価が大きいからキリが良く、1の位や10の位の端額が出ないと思っていた。
『まずはてんびん座のメダルをプレゼント!』
天秤の造形もリアルでこだわりを感じる。
生き物モチーフが多い中、異質な『物』の星座だがメダルのデザインに手抜き感はない。
『そして、ご褒美は『裁きの両翼』だにょん!』
……なんだこれは?
一本の棒の一端に翼が生えている。
手触りは金属っぽいな……。色も金色だ。
これも売ったら高い系のアイテムか?
『使う』ことは出来ないようだ。
まあ、たまには使い道が想像できないアイテムが手に入ることもあるか。
ご褒美とメダルをしまい込み、次なる迷宮を目指す。
順番通りにいけば次はおとめ座だ。距離も結構近い。
そもそも、てんびん座の天秤はおとめ座の正義の乙女の持ち物だという話もある。
てんびん座のチャリンがあまりファンタジー感のないコスプレだったのは、てんびん座の神話をモチーフにするとおとめ座と被ってしまうからだろう。
それにしても、乙女の試練をおじさんにクリアできるだろうか……?
割と不安なんだよなぁ、そこが。
まあ、このゲームはバトル要素がメインだから、なんだかんだ戦闘になるとは思うけど。
「そうだ。俺とガー坊のレベルを確認しておくか。さっきの試練でまた上がっただろうし」
俺のレベルは……25か。
いよいよ第2職も終盤だな。
強化ポイントを全部射程に振って、素の射程は350メートルになった。
これに装備やスキルを加えれば、デメリットのある【不動狙撃の構え】を使わずとも、かなり遠くから攻撃出来るな。
ガー坊の方は……キリの良い40レベルだ。
ユニゾンはレベルアップで得た強化ポイントが勝手に各ステータスに振られる。
だから、こまめに確認しておかないといけない。
より詳しいステータスを調べようとステータスウィンドウを開いた時、ふいに体が浮遊感を覚えた。
「……うおっ!? うわあああああああああっ!!」
急な斜面を滑り落ち、下の地面でドスンと尻餅をつく。
落下ダメージが入った……。結構な距離落ちたな……。
歩きステータス確認、ダメ絶対だな。
それにしても、森の中を歩いていたはずだがここは一体……?
マップを開いて確認すると、とんでもないことがわかった。
「処女迷宮と違う方向に歩いてた……」
考え事をしているうちに歩く方向が狂ったな。
景色が変わらない森の中を歩くとまれにこうなる。
ゲームだからいいものの、リアルだと遭難して命の危機だ。
こまめなマップ確認、これ大事だな。
しかし、不思議な地形だ。
クレーターのような穴の底で、地面は焼け焦げている。
本当に巨大隕石でも落ちたのか?
『あーあ、見つけちゃったにょんねぇ』
「うわっ!?」
急にチャリンが現れる。
童話『赤ずきん』に登場する少女のような見た目だが、ところどころから獣の毛皮が見えている。
『ようこそ、隠し星座の迷宮に。ここはおおかみ座、野獣の試練だにょん!』
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