世界観光~南アメリカ~

「二週間ぶり、ノーライフ・キング」


「お久しぶりです。マスター」


 北アメリカを五日ほど観光した後、今度はノーライフ・キングが収める南アメリカの方に瞬間移動した。

 場所はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるノーライフ・キングの魔王城。


 もう魔王に任命したのも二週間も前の話だ。


 一流の魔法と悪魔とアンデッドの力を駆使すれば、前の魔王の居城の基礎もあって立派なものを築くにもギリギリ足りる時間ではあるだろう。

 この魔王城は、なんというか魔界樹の森よりも来い瘴気が立ちこめていた。


「最近どう?」


「そうですね……特にこれと言ったことはございませんが……ちょっと面白いものを見せられますよ。ほら、出てきなさい!」


 パンパン。ノーライフ・キングが拍子を打つと、王の間にも流れる十時の浅い水路からするするっと這い回るように一人の人魚の女が現れた。


「お手」


 ポン。


「おすわり」


 スタッ。


「三回回って」


 クルクルクル。


「ワン!」


「よく出来ました。ほらご褒美です」


「ぁ……ありがとうございます」


 ぺろぺろぺろぺろ。床に落とされた半液体状のよく解らない食べ物を舐める人魚は最早人としての尊厳というものがなかった。

 みすぼらしい格好もそれを助長している。

 しかし、その人魚の褐色肌に俺は見覚えがあった。


「どうでしょう、マスター。もう二度とマスターに無礼を働かないように、調教しておきました」


 ……深海の闇雲の迷宮主だった人魚だ。


 タキエルを攫ってめちゃくちゃしてくれたあの女である。


「そうだ。この無礼者にはもう一つ芸を仕込んでいたのでした。マスター。是非、このボタンを押してみてください」


「なにこれ?」


 言われるがままに押してみると「ひぎぃっ」……人魚の悲鳴が聞こえる。


「め、迷宮主様。ど、どうか許してひぎぃっ!」


 何となく、もう一回押してみるとやはり悲鳴を上げる。


「タキエルもやってみる?」


「ん~そうですね。じゃあ一回だけ」


 ぽちぽちぽち。


「ひぎゃぁっ!……ゆ、許してくださいタキエルさひぎゃっ!」


 一回だけと言いつつ、三連打を二回するタキエル。ドSである。鬼である。


「まぁ、これくらいで許してあげましょう。この人は、一応マスターさんと私の仲を深めてくれた一面もありますし」


 そう言いながらタキエルは人魚の頭を踏みつけ、もう一回スイッチを押した。

「ひぎぃっ!」

 ……な、なんかエロいな。

 機会があったら、タキエルに踏みつけられるのも良いかもしれない。


 俺がゲームに負けて、ノリノリで踏みつけられるのも屈辱的で――なんか最近、そういう感じのが嫌いじゃなくなりつつあるし、逆に俺がゲームに勝って恐る恐る恥ずかしそうに俺を踏みつけるタキエルも見てみたい。

 変態かな? 変態だね。変態だよ(三段活用)


「そう言えば、ノリノリでやった後にこれ聞くのもアレだけど、あのスイッチを押すとどうなるの?」


「約一万ボルトの電撃が局部に流れます」


 ……うわっ。あの人魚は嫌いだし、タキエルを人質に取った時点で同情の余地なんてないのだけれど、それでもちょっとだけかわいそうだと思わないでもなかった。


「まぁ。余興にしては中々だったよ。今後の健闘に期待する」


「お褒めにあずかり光栄でございます」


 ノーライフ・キングに挨拶を済ませた俺は、南米を観光していく。


 魔王城が聳え立つ、南米のパリことブエノスアイレスを始めとしてリオデジャネイロやサンパウロなどの有名な街を巡ったり、マチュピチュやチチェン・イッツァなどのメジャー処の遺跡を巡ったり、マゼラン一行が立ち寄ってペンギンを食べたことでも有名なフエゴ島に寄ったりした。

 ペンギンは食べなかった。


 ノーライフ・キングの統治する街は基本的に平和なのだが全体的に瘴気が濃かった。


 お陰で人間は少し具合悪そうにしているように感じたが、多分、毒の強さで言えば最盛期の北京や四日市とどっこいどっこいなのだろう。

 とは言え、瘴気はアンデッドにとってはむしろプラスになるものだし……。


 迷った末に、人間には瘴気にも適応出来るアイテムを配布するように言っておいた。


 しかしそこは転んでもただじゃ起きない男ノーライフ・キング。


 配ったアイテムには、ノーライフ・キングの意思でいつでも人間をアンデッド化できる効果が着いているらしい。

 南米は貧富の格差が大きく、瘴気を浄化するアイテムを買えない貧乏人も多い。

 万が一人間が裏切った時に、結構な数の人間がアンデッド化すれば、反乱は最早成立しなくなるだろう。


 流石ノーライフ・キング。俺は彼に対する評価を更に向上させた。



                 ◇



 次はラプラスの治めるオーストラリアに向かった。


 ラプラスは相変らずぼちぼちやっているようで、オーストラリアの街もまぁそれなり。グレートバリアリーフは色鮮やかだったし、ウルル・カタジュタ公園はまぁエアーズロックとか良い感じだったし巡ったパース、シドニー、メルボルンも、まぁ聞いていた通りの良い感じの街並みだった。


 瘴気も濃すぎず薄すぎず。産業もそれなりに回しているみたいで、あと、珍しい動物もいた。

 タスマニアデビルとか。


 オーストラリアは良いところだったけど、迷宮主や大魔王の立場としては特に語るようなこともない。平和な場所だった。


 余談だが、道行く巨乳のお姉さんのパイスラに目を奪われたその日の夜タキエルが頭を踏みつけてのプレイをやってくれた。

 地面に抑えられる屈辱感と、頭にのしかかる良い感じの重さが心地良く、ローアングルから見えるパンツとか中々に良い感じだった。


 その後騎乗位で散々搾り取られた後、心配そうに「さっきので嫌いになったりしませんよね」と聞いてきたのもかわいかった。

 結論、タキエルマジ女神。むしろ、ハーフエンジェル。

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