世界観光~アジア~

 ロード・オブ・オークは、めちゃめちゃ自己顕示欲の高い不遜な王である。


 残虐性、カリスマ性、王としての手腕と部下の忠誠の厚さ。それは暴君でありながら名君の素質を併せ持っている。

 故に、最難関のアジアを割り当てたのだが完全強化の影響もあってしっかりと支配してくれたようだ。


 そんなことを改めて思いながら、俺は支度を終えたタキエルと共に中国は洛陽にあるロード・オブ・オークの居城に瞬間移動した。


「うむ。来たか」


「二日ぶり」


「であるな」


 ロード・オブ・オークの威圧感。

 その残虐性もあって俺は、この王が苦手だったりする。苦手だが、しかし実力はある。俺よりもはるかに。

 それこそ、俺の代わりにこいつが迷宮を運営すれば良いと思うほどだ。


 だからこそ、各地に魔王を任命して回る時は最初にアジアに行った。


 ……まぁ、東京侵略の後にすぐに中国に送ったりしたしこういうところでバランスを取らないと行けないというのも大きいが。


「そう言えば、この二日で変わった事ってある?」


「順調であるな。……いや、そう言えばラオスの方で痴女みたいな格好をした女を見掛けたという情報が入ったな」


「マジで!? その話詳しく」


「マスターさん?」


 食い気味で訊ねようとしたら、ジト目のタキエルに釘を刺されてしまう。

 しかし、俺はその痴女みたいな格好をした女について詳しく聞きたかった。……どうやったら、堂々と聞けるか、頭をこれでもかと回転させて考える。


 ……そうだ!


「ねえ。その女ってもしかして勇者の可能性があるんじゃない?」


「……流石主殿。察しの通り、その団体は勇者であった可能性が高いと証言されている」


「可能性が高いって?」


 勇者パーティの顔写真は、要警戒人物として奈落の木阿弥のモンスターに配布しているはずだ。

 だから、勇者パーティなんて一目見れば解ると思うけど……。


「それが、見たすぐ後にはジャミングのようなもので認識を阻害されたと言われてな」


 なるほど。賢者の魔法か……。


「解った。それは多分――いや、間違いなく勇者パーティだと思う」


 しかし、懸念となるのはなぜ勇者がそんな痴女みたいな格好をしていたかと言うことだ。

 それはなにかの作戦なのか、そう言うプレイだったのか、それとも何者かの悪意、或いは故意によってそんな格好をさせられたのか。


 そんな意図を考察すると共に俺は思う。


 痴女みたいな格好の勇者、見たい。


 勇者が生き返っていることなんて察しが付いていたし、なんかどっかの機会で勇者の聖剣を見た気がする。

 見たとすれば、まぁアラビア半島でのあの一件だと思うけど。


 しかし、ラオスで目撃情報があったと聞いたけど勇者は今、一体どこにいるのだろうか?

 とにもかくにも、痴女みたいな格好の勇者が気になって仕方がなかった。


「じゃあ、まぁ。勇者の情報を手に入れたら連絡を入れてよ」


「うむ。了解した」


「マスターさん……それ浮気ですよね?」


「い、いや、浮気じゃないし。……勇者は奈落の木阿弥にとって最大の脅威だし。その情報をなるべく得ようとするのは迷宮主として当然のことだし」


「ふ~ん」


 目をキョロキョロさせて、早口でまくし立てる俺の姿には全くもって説得力というものが備わってなどいなかった。

 ……俺は、ロード・オブ・オークに軽く挨拶してから洛陽を出る。


「ご、ごめんって。その……男ならやっぱり、エロいものにはどうしても興味が沸いちゃうし」


「つ~ん」


 つ~んって、口に出して言うのかわいいな。リピートプリーズ。

 拗ねてるタキエルはスゴく可愛いけど、しかし折角の世界旅行、どうせならラブラブあまあまで送っていきたい。


「俺が好きになったのはタキエルだけだから!」


「ほ、ホントですか?」


「ホントホント。俺、見る分には女の子とか大好きだけど、実際に近づかれると大体胃がキュルキュルして具合が悪くなるから!」


 そしてタキエルと初対面の時も割と層だった気がする……。


「あ、それ解ります! ……私も、なんか怖い人と話す前とか緊張で吐きそうになるんですよね」


「そうそう! ……でも、これ以上この話を掘り下げると嫌な学生生活の思い出がフラッシュバックしそうだし」


「そうですね。特別にさっきのアレは忘れてあげます。……その代わり、その、もう一回だけ言ってください」


「……なにを?」


「その、俺が好きになったのはのところです」


「え”」


 正直恥ずかしかったけど、タキエルも喜んでくれるし、さっきの件に多少の負い目も感じていた俺はもう一度「俺が好きになったのはタキエルだけだから!」のセリフとちょっとたどたどし目に言った。


 その後、俺たちは中国を回る。


 とりあえず上海と北京と香港と――瞬間移動があるので、阿呆みたいに広い中国も位置関係バラバラに行きたい順番に観光できるのは便利だった。

 上海は海外の企業の他、冒険者ギルドなどが立ち並び初心者向けの難易度のダンジョンが近くにあるためかなり国際的な街として発展していた。

 が、オークが首輪に繋がれた全裸の男を連れ回して我が物顔で闊歩していたのが目に付いた。


 逆に北京は魔王かロード・オブ・オークかは知らないが、首都と言うこともあって重点的に責められたのだろう。

 街にはオークと、奴隷のように扱われる人ばかりいた。


 香港は……まぁ、ここは魔王軍云々の前にそもそも内乱の舞台になったためにぐちゃぐちゃで、観光処ではなかった。


 そんな感じで中国を回った後に、ホテルでタキエルとエッチをしたのだが、その時もやはり「俺が好きになったのはタキエルだけだから!」を何度も言わされて、搾り取られるという謎の羞恥プレイを満喫した。

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