それぞれの勉強と今後の予定

「それじゃあそろそろお昼休憩も終わりね。午後からはしっかり勉強しないとね」

 最後のカナエ草のお茶を飲んだニーカの言葉に、皆が揃って頷く。

「そうだね。まだまだ日々勉強だもんね」

 笑いながらも真剣なレイの言葉に、マークやキムだけでなくクラウディアも真剣な顔で何度も頷いていたのだった。



「それじゃあまたね。次は何処で会えるかしらね」

 食堂を出て、教室前の廊下で顔を見合ってジャスミンの言葉に笑顔で頷き合う。

「私達は、本部にエイベル様の像のお掃除に行った時に会えるかしらね」

「俺達は、また警備の応援と講習会の準備が待ってるから、しばらく無理かなあ」

 残念そうなマークとキムの言葉に、少女達が頑張ってねと声をかける。

「そうだね頑張ってねって。ああ! 忘れてた!」

 突然大きな声を出したレイに、隣にいたクラウディアとニーカが飛び上がる。少し遅れてジャスミンも飛び上がった。

「なんだなんだ? 一体何を忘れたんだ? ここか、それとも自習室か?」

 てっきり忘れ物か何かだと思ったマークが、慌てたように周りをキョロキョロと見回している。

「違うよ、忘れ物じゃなくてね。あのねあのね、一の郭の瑠璃の館のお披露目会の予定が決まったんだ。それでもうすぐ招待状が届くと思うからさ。ぜひ来てください!」

 招待状そのものは本部に専任の者がいて書いてくれるので、レイはサインをするだけでいい。

 しかし、指の怪我の回復が思わしくなくて少々不自由なため、いつもよりもサインを書くのに時間がかかっているのだ。

「そうなのね。楽しみにしているわ」

 笑顔のジャスミンの言葉に、クラウディアとニーカも目を輝かせている。

 マークとキムは、噂の書斎にあるのだと言う大量の本を思って、こちらも期待に目を輝かせていた。



「それでは、僕は事務所へ戻りますね。皆さんはお勉強を頑張ってください」

 ロベリオ達が待っているので、ティミーは迎えに来てくれた案内担当のアルマさんと一緒に笑顔で手を振って事務所へ戻って行った。

 彼はこの後、ロベリオとユージンと一緒に、ケレス学院長も加わって今後の指導方針についての詳しい説明や、今後ここで使う教科書や参考書などをもらって、授業に関して簡単な説明を受けたりするのだ。

 恐らくだが、ティミーは当分の間は毎日ここに通う事になるだろう。

 まずは精霊魔法の基礎を覚えてもらい、ある程度の知識が備わったところで実技に入る事になるだろう。

 自分が初めて精霊魔法をタキス達に教えてもらい、必死になって実践した時の事を思い出して笑顔になるレイだった。



「ねえ、そういえばさっきから気になっていたんだけどさ。その右手の親指の怪我、どうしたの? 大丈夫?」

 遠慮がちなニーカの言葉に、聞かれたレイは苦笑いしながら右手の親指を立てて見せた。

「うん、ちょっと竪琴の弦が切れて、その時に弦に当たって切っちゃったんだ。血はたくさん出たんだけど、傷口自体は小さいんだ。だけど以前と同じ箇所を怪我しているから治りが少し遅いみたいなんだ。でももうほとんど傷は塞がってるよ。これは傷口が開かないように念の為に巻いているだけです」

 ややきつめに巻かれた包帯を見て密かに心配していたクラウディアも、レイの言葉に密かに安堵のため息を吐いた。

「そうなのね。でも利き腕の怪我は気をつけないといけないわ。どうか大事にしてね。それじゃあ」

 笑ってそっと包帯を巻いた指先に触れたニーカは、祝福の印を切ってから照れたようにそう言って、足早に自分の教室に駆け込んでいった。

「ありがとうね、ニーカ」

 その言葉に顔を見合わせたジャスミンとクラウディアも、そっと彼の指に触れてそのまま駆け足でそれぞれの教室に駆け込んで行った。

 彼女達もそれぞれ祝福の印を切ってくれたのだ。

「ありがとうね。ディーディー、ジャスミンも」

 笑ったレイの言葉の直後に扉から少女達の手が見えてすぐに引っ込んでしまう。

「それじゃあ俺達も行くよ。お大事に」

 笑ったマークが右手を彼の手の上にかざしてくれる。

「ごめんよ、俺は癒しの術は全然駄目なんだ」

 キムが最後に申し訳なさそうにそう言い、彼の指の上で小さく祝福の印を切ってくれ、マークが入って行った教室に彼も駆け込んで行った。

 マークとキムは、今日も教授達に見てもらって講習内容の確認作業があるのだ。

「うん、祝福をありがとう。それじゃあ」

 手を振った彼が教室の扉を閉めるのを見てから、レイも自分の教室へ駆け込んでいったのだった。

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