第八九話:終わっていないんだ。俺にとっては
とにかく、俺は千葉に向き直った。
エメラルドグリーンの髪をしたエルフの千葉。
その長い耳をぴくぴくとさせ、こっちを見つめる。
神秘的な美しさを持つが、中身は男子高校生だ。
「それは、天変地異だな」
「いや、あれは……」
「天変地異だよな! 千葉……」
「お、おう、そうだなアイン」
俺は後ろで、叫んでいたエルフの千葉の同意を得た。
俺は正しい。俺は悪くない。
あれは、天変地異なのである。このパンゲア大陸に起きた、どうしようもない天変地異だ。
「あ、ああ…… 天変地異の影響だ」
エルフの千葉がカクカクと頷いた。
エメラルドグリーンの髪はハラハラと揺れる。
さすが、心の友であり、今は俺の許嫁だ。理解が早い。
「ふぁぁ~、あひゅぅぅん、らめぇ、らめなのぉぉ。すんごく濃いアインの魔力が私の大切な魔力回路の中で、ビクンビクンしてるのよぉぉ、ふぁぁぁ、にゃはぁぁああ~ らめ、これ以上は、これ以上はらめなのぉぉ、漏れちゃうのぉォ、なにか、すごいのがぁぁぁ、これ以上魔力でパンパンされると、我慢できなくて、漏れちゃううのよぉォ~!! にゃぁぁぁ~!!」
エロリィの禁呪詠唱の声が響いた。
金色に輝くフォトンを振りまく、2本のツインテールが揺れる。
その、フラットで流麗な胸のラインをのけ反らせ、ビクンビクンと痙攣している。
まるで、何かをおねだりするかのように、掌を前に突きだすポーズを決めた。
「エロリィちゃんの禁呪―― アヘ顔&Wピースでは無ないとは!!」
エルフの千葉が叫ぶ。
「禁呪の刃が漏れちゃうのよぉぉぉ!!」
バシャぁぁ―という音がして、彼女の広げた両手から水しぶきが上がった。
それは、噴水のように吹き上がった水。
それが、ガチホモに向かって一直線に走っていく。
『人間の分際で、魔力で水を高圧噴射するとか、生意気だわ。このビッチ』
精霊のサラームが声を上げた。
それは、その通り、凄まじい水圧のかかった刃だ。
ガチホモの腕がカッターで斬りおとしたように、すっぱりと落ちていた。
あまりの切れ味に、ガチホモ王がしばらく腕が斬りおとされたのに気付かなかったくらいだ。
無くなった右腕を見て、初めてそれに気付いた。
「ながぁぁぁ!!! 俺の右手と、ガチホモ四天王、アナギワ・テイソウタイがぁぁ!!」
元々、俺の100億ボルトの電撃魔法が直撃したので、四天王の肉体自体はボロボロだった。
そもそも、ガチホモ王に貫かれ、生きているのかどうかも分からなかったのだ。
「むおぉぉぉ!!! 白濁男汁で回復じゃぁぁ!!」
槍の先端からまたしても、白濁した液体を噴出させる。
全身でそれを浴びるガチホモ王。
『魔素の一種ね―― なにかそれを加工して、回復に特化させているんだわ』
サラームが言った。槍の先端から吹きだす回復液。原材料はやはり魔素なのだろう。
あの嫌な臭いがまだ立ち込めてくる。
めまいがする。
だが、今奴の槍は天辺を向いている。
チャンスだ!!
「おりゃぁぁ!!」
俺は叫ぶ。そして覇王神剣ドラゴンザバッシュにありったけの魔力を込めた。
大剣が重い唸りを上げて、空を貫いていく。
まるで、純粋な魔力の結晶体のような、圧倒的なパワーを凝縮したような存在に感じた。
俺は剣など習ったことなどない。
しかし、この覇王神剣ドラゴンザバッシュは自在に使える気がした。
「死ねゃぁぁぁ!!!」
絶叫の尾を引いて、緋色の殺戮兵器が飛び出す。
その手にはいつの間にか、釘バットを握っていた。
ライサは、ただでは蹴り飛ばされなかった。
ガチホモ王の頭に食い込んでいた釘バットを手にしていたのだ。
彼女も同時に突っ込んでいった。
「ひゃははははは!!! 死ぬのよぉぉ!! もうね!! これで死ぬのよぉ!!」
甲高く空間をつんざく叫び。エロリィの叫びが上がる。
図上に黄金のハンマーのような物を造り上げていた。
禁呪の鉄槌だった。
俺のドラゴンザバッシュが、時空をまとめて貫き、量子レベルのあらゆる可能性全てを叩き斬る。
ライサの血まみれの釘バットが、横殴りに吹っ飛んでいく。必殺のトルネードに巻き込む。
エロリィの禁呪の鉄槌が、空間を歪めるような質量の全てを叩きこみ破壊の淵へ追い込む。
頭のてっぺんから覇王神剣ドラゴンザバッシュを叩き込んだ。
一気に、ガチホモ王が真っ二つになった。
巨大なやりも二つに裂けた。
横殴りのライサの釘バットが、胴体をグズグズにしながら、引きちぎっていく。
黄金の禁呪の鉄槌。エロリィの一撃が、ガチホモ王を吹っ飛ばした。
バラバラになって、壁に激突。
石壁を木端微塵に砕き、そのまま、落下していくガチホモ王。
もはや、断末魔の声すら上げることができない。
「やったか!!」
「あはッ! 死んだね! 死んだ。バーカ、ざまぁ!!」
「キャハハハハハ!! この天才の禁呪のプリンセス様に逆らう者は死ぬのよぉぉぉ!」
俺たちはブチ壊れた壁から落下していくガチホモ王を見た。
いや、正確には、ガチホモ王だったものだ。
それは血まみれに肉塊になって、地面に落ち、赤い花のような模様を作った。
また、グラグラと塔が揺れた。
「ワン、ワン、ワン、ワン、ワン!!」
エロリィの奴隷となっているガチホモが四つん這いで吠えた。
「ヤバいぞ! アイン。もう、持たないぞ、早く――」
エルフの千葉が天井を見上げた。ボロボロと崩れてきているのが分かる。
「そうか、エロリィ! 転移禁呪発動だ!」
「もうね、戦いで、疲れたのぉ、もう一回、魔力を入れて欲しいのよ!」
「なんだよ! こっちだって、疲れてんだぞ!」
エロリィとライサが叫んで、俺にしがみ付く。
仕方がないので、俺はダブルベロチュウをするのだ。
2人の許嫁の美少女ベロが争うように俺のベロに絡んでくる。
甘い、エロリィの甘い口の中を味わいながら、俺は魔力を流し込む。
熱い体温を感じさせるライサの口を堪能し、俺は魔力を流し込む。
7つの魔力回路がフル回転の俺に不可能はないのだった。
チュポンと、エロリィとライサが唇を離した。
「行くのよ!!」
その声で、転移魔法陣が自動起動。一気に俺たちは転移した。
◇◇◇◇◇◇
「きゃははははは!! もうね、天才でプリンセスの私の禁呪の転移は完ぺきなのよぉォ!」
エロリィの声が響いた。
「ここは――」
「ほう…… パンゲア城の中庭にございますな。さすが、エロリィ様、正確な転移。この、セバスチャン、感銘いたしました――」
まったく感銘した感じをみせない。平坦なセリフ。
俺の爺さんであるパンゲア王、ガルタフ3世の侍従だ。
今までどこにいたのか?
そして、いつの間に、そこに存在していたのか、全く分からん。
エロリィは俺の魔力をパンパンになるまで、吸収したので禁呪発動後もアヘ顔を回避している。
「ああん、アインの魔力が濃すぎて、こんなになっちゃったのぉぉ……」
エロリィはそういうと、自分のお腹をさすった。
なんか、下腹の方がポッコリしてる感じがした。
「あはッ! 私も、なんか胸も張ってきちゃったみたい」
確かにライサにも流し込んだが……
いつもの完ぺきともいえるスタイルではなく、下っ腹はぽっこりしちゃっている。
胸、いや「おっぱい」と正確にいうべきか。それも一回りは大きくなっていた。
魔力や魔素を注ぎ込み過ぎると、体の形まで変わってしまうのだ。
以前、俺は、魔素を注ぎ込まれすぎて、パンパンの風船人間みたいになってしまったこともある。
注意しないとな。
エロリィとライサを魔力でそういう風にはしたくない。
別の方法なら、大歓迎だったが。
「よう、終わったか」
聞きなれた声だ。
オヤジだった。
その後ろに、母親のルサーナもいた。
いつもなら、「かわいくて、天才のアインちゃん!!」と叫んでスリスリ攻撃をかますところだ。
ただ、今は静かだった。謎だ。
俺は、オヤジの顔を見つめた。
雷鳴の勇者、その名に恥じない男の顔だ。
「いや、終わってないよ…… オヤジ」
「ああ、そうか」
オヤジがふと、空を見上げた。
「シャラート……」
俺の大事な、腹違いの姉で許嫁で、小さいときにずっと一緒だった存在――
その名を口の中でつぶやくように親父は言った。
そうだ。
オヤジも分かっていた。
だって、親父にとっては実の娘なんだから。
「崩れていきますな」
セバスチャンが視線をガチホモ城の方に向け言った。
ここからでも、ガチホモ城の高い塔が見えた。
それが、ガラガラと崩れ落ちていくのが見えた。
しかし――
「終わっていないんだ。俺にとっては」
長い黒い髪――
メガネの奥の切れ長の綺麗な黒い瞳――
そして……
俺専用の大きく柔らかいおっぱい――
「シャラートを救う。俺が助ける」
俺は、その言葉を口にしていた。
覇王神剣ドラゴンザバッシュを強く握りしめながら。
乾いたか風が吹き抜けた。
それが、俺の黒と銀の髪を揺らしていた。
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