第八六話:俺の魔力は天を衝く!!

 俺の7つの魔力回路が重低音の唸り分けていく。

 ビリビリと俺の芯から頭の先までしびれるようだ。


「うおおぉぉぉ!! ガチホモ王ぉぉぉ!! ぶち殺してやる! 今ここで殺す! この精霊マスターで神にも等しいこの俺がッツ!」


 上がるテンション。爽快だぁぁ!殺してやる。この13次元世界を総べる多層次元の大宇宙の神に成り代わる俺が殺す。

 あああああ、なんか気持ちよくなってくるぅぅ。


「おおお! 死ぬほど激しいプレイか! 殺してくれぇ! 俺に『死んじゃう』言わせてくれ! いや、言わせてやってもいいのだぁぁ!」


 股間の槍をメトロノームのようにブンブンさせ叫ぶホモの王。

 その醜悪な姿。最悪だ。

 尖がった頭からは白濁液の残りがタラタラと流れている。

 四肢にはガチホモ四天王が合体したまま。


「この、最終形態のまま、ドロドロに二人で溶け合って、ベッドの上で殺し合いもありだ。どうだ? ううん~ 変形6Pともいえる」


 ここに至って狂った提案をしてくるガチホモ王。


『うーん…… 一考の余地があるわ』

『ねーよ!! ここに至って、全くねーよ!! その選択肢はない! この腐れ精霊』

 

 サラームの腐臭をはなつ言葉をぶった切る俺。


「そうだ、『らめぇぇ、死んじゃうぅぅ』と言った方が、孕むことにしよう。俺に言わせ、俺がオマエの子を孕んでもいいのだぞぉぉ」


 ベローンと長い舌をだし、クネクネと動かすガチホモ王。

 自分のお腹をさすり出す。そして尻を突きだす。


 眼球と鼓膜が同時に腐りそうになる。

 俺の魔力回路の回転数がガクンと落ちた。一気に冷静になる俺。


『魔力回路の回転が落ちてるわ! アイン』

『オマエも原因の一つだよ! 黙って、俺いうとおり攻撃を喰らわせるんだ!』

『ん~ ガチホモぶち殺すのも、面白そうだからいいけど。魔力バンバン使うわよ』

『使いたい放題だ―― やれ、サラーム』


 俺は笑みを浮かべていた。

 また、魔力が溢れだしてきそうになる。

 いいねぇ。


「んん~ 嬉しいかアインよぉぉ」


 ガチホモ王が俺の笑顔に気付いた。

 違うよ、オマエを殺せるのが嬉しいんだよ。

 オマエをサッサと殺して、シャラートを助けに行く。


「そうだ! 二人同時に孕むのもありだぁ! そしてダブル出産。夢だ…… 夢の様だろ、精霊マスターアインよ」


 悪夢だ。

 コイツの言葉はそれだけで呪詛のように魔力回路に影響を与える。

 このクソが!!

 会話しているだけで頭がおかしくなってきそうな気がする。


「もうね、アインが孕ませたいのは私だけなのよ! ワタシもアインの赤ちゃん欲しいのよ。あんた殺すわよ! もうね、私の禁呪でぶち殺しなのよッ!」


 その姿と同じ、可愛らしい声が割って入る。

 エロリィだ。

 幼女の国の禁呪使い――

 俺の許嫁で美の結晶体ともいえる、まさしく北欧の妖精のような姿。

 

 碧い瞳が強い殺意を伴った光を放つ。

 スッと目を細めると金色のまつ毛が影を作り、その光を鋭く尖らせる。

 黄金の繊維で作られたようなキラキラした髪。長いツインテール――

 魔力光の圧力に煽られ、宙を揺蕩(たゆた)う。


「エロリィ、転移の準備はできてるのか?」


 戦闘態勢を維持したまま俺は、エロリィに訊いた。


「もうね、この人数なら私の禁呪ですぐに転移できるのよ」


 エロリィがその口にニィィっと笑みを浮かべた。

 可愛い八重歯がちょこんと見える。


 空力特性では、最新鋭戦闘機を凌ぐ流麗なフラットなボディ。

 エルフの千葉が最上級の評価を与える胸をそらしている。

 その上体がちょっと沈む。


 スッとエロリィが構え、そのままピンク色の口を開けた。

 すでにその足や腕には積層魔法陣が出来上がっている。

 まるで光の腕輪(ブレスレット)や足環(アンクレット)をしているようだ。


「あああああ~ らめなのぉ、らめっていってるのにぃぃ、そんなに一気に入らないのぉォ~、あああ。らめ、らめ、らめ、れも、やめちゃヤダぁぁ~ 

 魔力回路の奥が開いちゃうのぉ! そんな、ガンガン突いたら、出来ちゃうぅ、大事な魔力のお部屋にドピュドピュ魔素が流れ込んでくるのぉぉ~

 もっと私の魔力回路の大事なお部屋を魔素でいっぱいにしてほしいの。グルグルかきまわして欲しいのぉぉ。これじゃ全然足らないのよぉぉ。

 ああん、らめぇ、もっとぉ、魔素の味を覚えちゃうくらい中に欲しいの。私の魔力回路の中で魔力がいっぱいできちゃうぐらい。パンパンになるぐらい欲しいの。

 あー開いちゃう、そんな魔力回路の大事なとこまでぇぇ。魔素をぴゅっぴゅされちゃうのぉぉ。出来ちゃう、魔力が出来ちゃうのよぉ~」


 甘ったるくもあり、荘厳な調べが響く。

 エロリィの禁呪詠唱だ。


 禁呪詠唱が終わり、エロリィがぐったりとする。

 余波で、体内に取り込んだ魔素が溢れていた。

 そのピンクの口の周りに白濁液がまとわりつく。

 密度を増した魔素が白濁液となり口から溢れ出ていたのだ。


 虚ろな碧い眼で、ダブルピースを決めるエロリィ。

 禁呪完成だ。


 このフロアに巨大な魔法陣が出来あがっていた。

 おそらく、転移魔法陣だ。


「あああああ~ エロリィちゃんの美しさ。それは神が地上で起こしたもうた奇跡―― 美の女神の降臨。ああ―― 美しい。

 ああ俺は今「美しい」とそれ以上の言葉が出ない。神よ、ああ、美の女神よ。言霊の神よ――

 なぜ、人類にエロリィちゃんを表現すべき言葉を与えなかったのか――

 ああ、これはバベル塔による人の原罪の報いなのだろうかぁぁぁ――――!! がぁぁ!! エロリィちゃーん!」


 血の出るような長く難しいセリフ。

 エルフの千葉君。もう、キミは人類じゃないから。エルフだから。

 でも、オマエは俺の親友であり今では―― 許嫁だ。


「千葉、とにかく安全なところにいろよ!」


 エルフの千葉は戦闘力はゼロ。

 とにかく、安全圏にいてくれ。

 これから、俺はフルパワーを出すかもしれん。


 目の前の醜悪なガチホモ王を見やる。

 オヤジと闘っていた場所から、一歩、一歩ぜんしんしてくる。

 間合いが詰まってくる。それだけで凄まじい圧力を感じる。

 真正のド変態だが、戦闘力は超弩級だ。


「もうね…… これで、いつでも…… 一瞬で転移できるのよぉぉ、アアア、アイン、チュウして、ベロチュウ。アインのベロチュウが欲しいのよぉ」


 よろよろとした足取りで、俺に歩み寄るエロリィ。

 禁呪を唱えたことで大量の魔力を消耗してる。

 俺から補給させなければまずい。戦闘不能になる。


 俺は、敵を視界に入れつつエロリィに駆け寄る。

 俺の胸までしかない小柄な体を抱きかかえる。

 小さく可愛らしく繊細な体。

 桜色の唇に、俺の唇を重ねる。

 エロリィのベロが伸びてきた。

 高い体温を持ったベロが俺のベロに絡みつきウネウネ動く。

 魔力をおねだりしているのが分かった。


 ベロチュウで一気にだ。

 魔素ではなく俺の濃厚な魔力を一気に、エロリィの小さな体に流し込む。

 ビクンビクンと俺の手の中で痙攣するように震えるエロリィ。

 口をふさがれ声にならない声が漏れる。


 チュポンと唇を離す、涙目の碧い瞳。ピンクの唇からは、名残惜しそうに舌が伸びている。

 さっきまで俺の舌と絡んでいた、可愛いエロリィの舌だ。


「あああん、もうね、こんなにいっぱい魔力流し込まれたらパンパンになって、アインの魔力の味が好きになっちゃうのよぉ」


「エロリィ、戦えるか」


 俺の真剣な言葉に一瞬で、戦闘モードに切り替わる禁呪のプリンセス。


「もうね、パンパンで禁呪連発で、ぶち殺しなのよぉ! きゃははははは!」


 鋭いターンで身を翻し、敵を見つめるエロリィ。


「一応、礼は言っておくのよ。ライサ――」


「あはッ! 珍しいね、エロリィ」


 ライサだった。

 ルビー色の瞳が殺意の色で炎を上げている。緋色の長い髪が舞い上がる。まるで1本1本が意思を持っているかのように舞う。

 その髪がバチバチと空中で放電してるかのように見える。


 俺とエロリィがベロチュウで魔力補給している間、完全に戦闘態勢に入り殺意ガチホモ牽制していたのだ。

 奴が一気にかかってこれなかったのはライサのおかげだ。


「ライサ、ありがとう」


「あはッ、お礼は、戦いすんだらもらうから。いっぱいね! 夜に――」


 ニィィッと笑う緋色の髪の美少女。

 いや、超絶美少女だ。

 すらりと伸びた肢体。完ぺきなラインを描く体。細い腰。

 嫋(たおやか)やかとすら言っていいすらりと伸びた四肢。

 

 その右手に釘バットを持ってその両腕にはメリケンサックがはめられている。

 美少女の形をした殺戮殲滅兵器それが俺の許嫁のライサだ。

 その美しい外見からは想像できないパワーを発揮する。


 その根源も魔力だ。

 彼女の全身に魔力が流れ込んでいるのが俺にはわかった。

 パンゲア王国の同盟国であるナグール王国。

 王国秘伝の戦闘法だ。


 全身に魔力を流し込み、筋力の強化と全身の耐久力を劇的に上げる。

 俺も似たようなことをやってみたがパワーアップが精々だ。

 骨格などの耐久力がついてこない。


 ライサは鍛えてるだろう。格闘術も俺なんか足元にも及ばない。

 もともと体の耐久力が桁違いに強いのだろう。

 だいたい、魔力の総量は俺やエロリィに比べれば大したことはないのだ。

 その少ない魔力量で超絶的な戦闘力を発揮している。


 エロリィも禁呪だけでなく「スカンジナビア拳法」を使う。

 格闘術でも高水準。

 しかし、近接戦闘で彼女と互角に戦えたのは……

 そうだ。

 シャラートくらいなものだった。


 俺はメガネで黒髪の俺専用の大きなおっぱいを持った許嫁で腹違いの姉で―― サイコで痴女で―― 生粋の暗殺者――

 俺の大切なシャラートのことを思った。

 クソ錬金術師に連れて行かれた。

 くそ! 絶対助ける!


 俺の許嫁は強い。

 だがな、俺はもっと強い。

 このすごい許嫁全員が俺にガチ惚れだぜ。

 それくらい、俺は強い最強だ。


 いいぞ。

 7つの魔力回路がぐんぐんと回転する。

 連結された魔力回路が累乗のエネルギーを生み出す。

 膨大な魔力を俺の体内に魔力を流し込む。体がパンパンになる感じだ。


『サラーム、魔力は使い放題だ――』

『いいわねアイン』


 ずっと俺中にいる精霊サラームは、もはや俺と一心同体に近い。

 俺がイメージするだけで、精霊を使役した魔法攻撃が可能だ。

 その速度と強力さは「魔法使い」というレベルじゃない。

 俺は精霊を自在に使う「精霊マスター」だ。


『アインの魔力がすごいが強くなってるわ。いくらでもバンバン攻撃できるわ』


 千葉の話じゃもうこの塔は長く持たない。

 だから、目一杯やってぶち壊してしまっても構わない。

 転移の準備はできている。

 上の階のオヤジは自在に転移魔法を使える勇者だ。


 行くぞ。サラーム。


「超轟雷!!」


 俺の魔力回路から一気に膨大な魔力がサラームに流れ込んだ。

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