第八五話:俺の子どもを生んでもらうのはエロリィとライサ! それから、シャラートだけ

「もうね、アインが心配だったのよ!」


 キラキラとした金色の可愛らしい存在が視界に入る。

 エロリィだ。長い黄金色のツインテールの美少女が俺の首に飛びついてきた。

 プニプニとしたほっぺたが、俺のほっぺにくっついた。やわらかくてひんやりした気持ちいい感触だった。

 この年齢の女の子だけが持つ甘い匂いが鼻に流れ込んできた。 


「あはッ、アイン大丈夫!」


 そして、緋色の長い髪をした超絶美少女が俺の頭を押さえた。

 ルビー色の潤んだ瞳が俺を見つめる。あまりに距離が近くて、その瞳に映った俺が見えた。

 その俺の姿が長いまつ毛で影になる。

 キュンっと手に力がこもった。で、一気にベロチュウだった。

 ライサだ。高い熱を持ったベロが俺のベロに絡みつく。


「ああ! もうね、私もなんだからね!」


 エロリィはそう言うと、俺とライサのベロチュウに割り込んでくる。

 Wベロチュウだ。

 2本の美少女のベロに弄(もてあそ)ばれる俺のベロ。


「なんだ! 汚らわしい! ぐうぁああああああ!!」


 この世で最も汚らわしい存在が叫んで固まった。

 ガチホモ王だ。


 俺は、エロリィとライサとのダブル・ベロチュウを見せつける。


 金髪ツインテール。北欧の雪のような真っ白い肌の美の極致ともいえる幼女。エロリィ・ロリコーン。

 緋色の非対称な長髪。小麦色の魅力的な肌をしたスタイル抜群の超絶美少女。ライサ・ナグール。

 2人とも俺の許嫁だ。


 どうやらガチホモ四天王との戦いで受けた傷は回復したようだった。

 いや、エロリィが受けた傷はシャラートがやってるのだが……

 

 そうだシャラートだ。

 本来であればダブル・ベロチュウではなく、トリプル・ベロチュウであるべきだ。

 そして、俺専用の抜群の弾力とモミ心地を持ったおっぱい。


 くそ。

 俺は2人の美少女に抱きつかれながらもメガネの黒髪の許嫁のことを考えていた。

 シャラート。

 俺の許嫁で、幼なじみで、腹違いの姉。

 くそ錬金術師に連れて行かれた。

 連れ戻す。絶対にだ。

 とにかく、このガチホモ王をぶっ倒して俺はシャラート助けに行かなければいけない。


 俺の気配を察したのか、唇を貪っていた二人がスッと離れた。

 紅と碧の瞳が俺を見つめる。


 ライサが鋭い動きで体をターンさせた。


「あはっ! あれがガチホモ王? 殺す? 一緒に殺そうアイン! 脳天カチ割って、ぼろ屑のミンチにしよう!」

 

 どこからともなく取り出した赤黒い釘バットを握りしめる。

 無数の敵の血を吸いまくり元の色は分からない。

 どす赤いと表現するような色になっている。

 超絶美少女の形をした殲滅兵器の主武器だ。


 エロリィが手を離しピョンと俺の身体から離れた。

 両腕にはすでに積層魔法陣が展開されている。

 精霊を介さず、自分の魔力で魔法を行使できる「禁呪使い」だ。

 全身からは青白い魔力光が立ち上がってきている。


「もうね、あの変なのがガチホモ王なのね! 私の特上禁呪でぶち殺してやるのよぉぉ~」


 2人の美少女許嫁が戦闘態勢に入った。

 殺意と戦闘能力は折り紙つきの俺の許嫁。


 俺は体の中の魔力回路を再び回転させる。体の奥底から重低音の響きが聞こえてくる気がした。

 大気中の魔素を取り込み、それを魔力に変換するシステムだ。

 俺の体の中には七つの魔力回路が存在する。

 一つだけでもそこらの魔法使いが束になっても構わないだけの魔力を発揮できる。

 七つの魔力回路をフル稼働するとマジで星すら消しかねない。


 おまけに俺は精霊を見ることができる。

 赤ん坊の頃に初めてサラームと会ってからだ。

 コイツとのつき合いは長い。今は俺の体の中にひきこもった引きこもりのヲタ精霊とかしてるが。

 ただ、こいつも半端ない力を持ってる。おかげで俺は呪文詠唱しないどころか、考えただけで魔法を発動できるというレベルにまでなっている。


 俺は巨大なエネルギー発生装置を持ったパワーユニットそのものだ。

 ただ、七つの魔力回路をフル回転させると精神的に非常にハイになる。

 大体結果がろくなことにならない。

 おまけにこのような狭い場所では全力を出して戦うことが難しい。俺の攻撃は味方まで巻き込みかねない。


 どうも、大きすぎる力というのは使い勝手があまりよくない。


 呆然と俺たちのベロチュウを見ていたガチホモ王が我に返った。

 頭の天辺から吹きだした白濁液が残滓となって体のあっちこっちにこびりついている。

 そのガチホモ王が一歩一歩こっちに近づいてきた。


「うおおおお!! パンゲアのメス豚どもめ。アインから離れろ! アインは俺のお嫁さんにするのだぁぁ!!」


 泣き叫ぶようにガチホモ王が吼えた。もはや慟哭と言っていいレベル。

 こいつは俺を孕ませ自分の子どもを産ませようとする変態だ。

 変態、サイコは身近にたくさんいたし、敵もそんなのばかりだった。

 しかし、コイツはとび切りだ。

 とんでもない変態ガチホモ野郎だ。

 おまけに俺の父親であるシュバインまで孕ませるターゲットにしている。


 そのシュバインが俺とガチホモ王をの間に立った。馬鹿でかい鉄塊のような大剣の切っ先をガチホモ王に向けた。


「お前、そろそろ死ねよ――」


 鋼の温度の言葉だ。そう言い放つと、俺の親父はノーモーションでガチホモ王に斬りかかった。

 鉄槌のような大剣が唸りを上げてガチホモ王の脳天めがけて打ち降ろされる。


 それを真っ黒のぶっとい槍で辛うじて横に流すガチホモ王。

 股間から生えた槍だ。


「あああひぃぃ! 勇者ぁぁ、オマエの剣の一撃ィぃぃぃ~! もっと、もっと強くていいからぁぁ!!」

 

 槍の先っちょから強酸性の我慢汁を垂れ流し絶叫。

 槍がプルプルと震える。

 剣を受けられるだけで、精神が削られそうになる。大丈夫かオヤジ……

 ぐんにゃりした顔で、ガチホモ王の前に立つオヤジ。気もちは分かる。


「んん~ 責めか? 俺の責めの番かぁぁ!!」


 ガチホモ王は左手を振り上げた。

 突き刺さっているガチホモ四天王を思い切り叩き付けに来たのだ。

 オヤジのシュバインは残像が置いてきぼりになる様な動きでかわす。

 その一撃は、ただむなしく床を砕き瓦れきと粉じんを上げるだけだった。


「メス豚を使って繁殖する。旧人類どもめ、進化を極めた。われらの力を見せてやるのだぁぁ! ガチホモ魔法――」


 そういうとガチホモ王は両腕を前に突き出した。

 右腕には、ガチホモ四天王のリーダーであるアナギワ・テイソウタイが突き刺さっている。

 左腕には、同じく四天王のホモ・リンゴがつき刺さっているのだ。

 ホモ・リンゴのケツは相変わらずプリプリしていた。気持ちが悪い。

 まあ気持ちが悪いと言えば、この存在全体が気持ち悪いのであるが。


「ムタムダムオーバーこれしきで収納アーシングマシンの目一杯この欲しい七尾つき破って突き破って特上粘膜がビンビンきちゃいます直腸ガーンあああーがまが真っ白になっちゃうよんお尻はもうあなたのものですは禁止。落ち着きつつ的不安な R & R アナルはならない或いはなるアナルはなる。あのに入れるととても気持ちがいいのですけども、それはインドで言うのはとっても気持ちがいいです。今前立仙がビクビクしちゃうので魔力がとってもシンビンビューンと飛んでくると、いうことはできませんが、それはとってもいい気持ちなので、これからあなたたちを全部ほぼそうと思いますと言いですかやってください。いいですね愛精霊さんこれからお仕事ですとボンボンボンボンビュー切っ先」


「これは呪文か!」


『このガチホモ、仲間の魔力回路を全部連結させたわ』


俺の脳内に声が響く。サラームだ。


『つまり魔力回路が5個か』

『1個1個はアインとかアインの親父より小さいけど連結されたら手強いわ』


 意味不明な呪文詠唱を続けるガチホモ王の周囲に精霊たちが集まってくる。


『おい、サラーム』

『なに、アイン?』

『このあたりの精霊にガチホモ王からの魔力を受けとるなと命令しろ』

『了解やってみるわ』

『頼むぞ、精霊王候補』


 精霊と話せる俺に禁呪以外の魔法など無意味なのだ。


 ガチホモ王は呪文を唱えて魔法を放つ。しかし何も起きない。

 当然だ。

 精霊がガチホモの言うことを聞いてないからだ。


「なんだ何が起きてるんだ?」

 

 不可解な顔のまま固まるガチホモ王。


 ざまぁだ。

 このあたりの精霊はサラームの命令に従い、ガチホモ王の魔法を発動させなかったのだ。


「ぬうううう!! こうなれば仕方がない。やはり肉体で勝負か!」


 ガチホモ王は5個の魔力回路で生み出した魔力を全身に流し込んでいた。

 筋肉がパンパンに膨れ上がり、更に数段階パワーアップしたのがわかった。


 再び、俺のオヤジとの接近戦が再開される。

 オヤジのシュバインはガチホモ王の一撃を大剣で受け止め反撃を繰り返す。


 それを見て俺の母親のルサーナも戦いに加わろうとする。


「来るな! ルサーナ!」


 叫ぶシュバイン。

 いつ間にか、槍を手にしていたルサーナが動きを止めた。


 ガチホモの拳がシュバインの頬をかすめた。

 巨体に関わらず、凄まじい動きだった。

 2人だけが、別の時間軸で動いているようだった。


 ルサーナだけじゃない。

 俺もライサもエロリィも固まっていた。


 戦いに割って入る隙が微塵もない――


 異世界最強だと俺が思っていた母親のルサーナをもってしても、この戦いに割り込むのは無理だった。

 俺も先程から魔法打ち込む機会を狙っているが、そんな隙が一切ない。


 魔力回路をフル回転させ連結しガチホモ王とはそういった化け物だった。

 その化け物と互角に戦っている。俺のオヤジもまた化け物だった。


 上には上がいるということを思い知らされた気がした。


「なあ、アイン」


 殺伐とした空間に清らかな声が響く。

 エルフの千葉だった。


 破壊された外壁の穴からは異世界の陽光が差し込んでいた。

 その陽光の中で、まるで新緑のような色を見せるエルフの長い髪が揺れていた。

 中身は男子高校生の千葉君だけど。出席番号18番。


「なんだ千葉?」


「いや、この塔はもう長く持たないんじゃないのか……」


「確かに、塔の上の方はかなりダメージを受けてるような気がするが…・・・ 土台までいってるか?」


 上の階でのバトルで塔は大きく破壊されていた。

 そして、ガチホモ王をと俺の親父のバトルでこの階もボコボコに破壊が進んでる最中だ。

 外側から見ると淫猥としか言いようがないデザインのガチホモ城の塔だ。


 その先っちょがぽっきり行きそうな感じがするというなら理解できるが……


「この揺れ方、どうも土台からいかれてるような気がする」


 エルフの千葉の言葉と同時に、塔が大きく揺れた。

 緑の長い髪も揺れた。


「言われてみると、確かに危険な揺れのような感じもするな」


 俺はエルフの千葉に向かって言った。

 2人の戦いのためだけでなく、塔全体がぐらぐらと土台から揺れてるような気がした。


「やばいんじゃね? アイン」


 エメラルドグリーンの瞳が俺を見つめる。

 見た目は抜群のエルフの美少女だ。


「ああ、やばいな。千葉」


 俺は母親のルサーナを見た。

 視線に気づき、ルサーナもこちらを見る。

 銀色の長い髪。年齢不詳の俺の母親だ。


「この塔がもう持たないかもしれない」


 俺は母親のルサーナに千葉に言われたことを話した。


「アイン、上の階には、王族が囚われていましたか?」


「いたかもしれない。よく分からない。うーん。なんと説明したらいいのかがちょっと困る……」


 あの「男色孕ませ牧場」についてどう説明すればいいのか。俺は本気で悩んだ。

 母親にあんなもんの実態を詳しく説明するのやだよ。

 罰ゲームだよ。

 それでも俺は、ルサーナに説明する。


 あの触手に絡まれた男たちの中には王族はいたのかもしれない。しかし俺にはさっぱりわからない。

 しかも、あの状態から助けて、そもそも助かるのかどうかよくわからない。

 全員、ガチホモ王に種付けされてるはずだ。

 でもって、触手には何匹ものガチホモ王が孕ませて産ませたクリチャーたちが巣食っているのだ。


 地獄だよ。


 俺の話を聞くルサーナ。

 途中からルサーナがすごく険しい顔になった。絶対オレにはむけることのない顔だった。


「すぐに助けに行かなければいけません。アイン!」

 

 ルサーナは意を決したように言った。

 脇でその話を聞いていたエルフの千葉が口を開けた。


「しかし、この塔自体がそう長くは持たない可能性があります。時間はかけられません。お義母様」


 ルサーナはその言葉を聞くとシュバインを見やった。


「あなた、上の階で囚われている。王族を助けにきます。あなたと私で助けるのが一番早いです」


「しかし、こいつは」


「大丈夫です。この天才で超かわいいモテモテのアインちゃんがそんなガチホモ王は瞬殺してくれます」


 ビシッとルサーナは言った。


「それに、あなたの魔力回路が元に戻ったということは、転移魔法が可能になったということです。この塔は長く持ちません」


「ちいっ。そうかわかった」


 シュバインも塔の不自然な揺れを感じていたようだ。


「アインそういうことです。私たちは、上の階でとらわれと王族を助けます。あなたは、許嫁と一緒にこのガチホモ王ブチ殺しなさい」


 ルサーナが力強く言った。望むところだった。

 こうなれば俺もリミッター解除だ。


 シュバインとルサーナは上の階へ跳んだ。


「勇者よぉぉ! まだ、まだ途中なのにぃぃぃ!!! ひぎぃぃぃ! プレイか? これもプレイなのかぁぁ、焦らしよって! へぎぃぃぃぃ!!」


 ガチホモ王のバリトンボイスが響く。


「お前の相手はこちらだ」


 俺は言った。父と母から譲り受けた黒と銀の髪が揺れる。


「もうね、そうなのよ。100倍にして返してやるのよ」

「あはッ! アハハあは、殺してやる。今ここでぶち殺してやる」

 

 ライサとエロリィが言い放つ。完全戦闘態勢だ。


「分醜いメス豚め、俺の花嫁候補のアインにまとわりついて。まずはお前らからプチ殺してやる。アインに男同士良さを――」


「黙れ変態野郎。誰がお前の花嫁候補なんだ! ぶち殺してやる」


 いいぞ、俺の魔力回路が回転数を跳ね上げる。

 メーターが振りきれそうだ。


「いいか!俺の遺伝子で俺の子どもを生んでもらうのはエロリィとライサ! それから、シャラートだけなんだよ」


 千葉が俺はどうするのっていう顔でこっちを見ていたけど、とりあえず無視する。

 先生がいつの間にかいなくなっているのはラッキーだった。

 

 エロリィとライサが真っ赤な顔でこっちを見た。

 なんだよ?

 お前ら、自分で言うのは平気で俺に言われるのは照れるのかよ。くそ!可愛いじゃねェか!


 俺は7つの魔力回路を連携させ、回転させていく。

 重低音の響きだ。俺の身体の奥底から凄まじい魔力が湧きあがってこようとしていた。

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