第七九話:男色孕ませ牧場から放たれる乳

 俺はエルフとなった千葉から受け取った自分の手を傷の断面に合せる。

 神経がつながって指先まで動く感覚が戻って来きた。

 グーパーしながら、手の感触を確認する。


「千葉、俺は上に行くよ」


「しかし……」


 エルフの美少女がエメラルドグリーンの瞳で俺を見つめた。

 その憂いを見せる瞳の中に、俺の安否を気遣う思いがあるのが分かる。

 

 俺は瞳と同じような色をした髪の毛に手を伸ばした。

 

「千葉、ここを頼む――」


 一応、に向かう通路は俺が吹き飛ばして塞いだ。潰走した敵は下にはいないはずだ。万が一、いたとしても、下からここには入れない。

 それにだ。ここには――


「アイン、行きなさい。天才で、可愛いアインちゃんの大好きな許嫁を奪うなど、ママも怒りでプンプンです。思う存分、やってきなさい。ここは私に任せるのです」


「母さん――」


 そうだ。異世界最強の俺の母親・ルサーナがいる。


「ああ、天才で、可愛くて、無敵ななだけでなく、雄々しくなっていきます。息子はやがてわが手を離れ、旅立っていくのですね」


 ルサーナがママではなく「母さん」という呼び方を受け入れた。

 しかも、スリスリが炸裂しなかった。

 ただ、その淡い色をした碧い瞳が俺をジッと見つめている。

 本当に、絶対に、この人は俺を愛しているのだろうと確信できる。

 転生して、この世界に生まれて、この人が母親でなんというか、すごく良かった気がした。

 とにかく、なにがあってもルサーナは俺を信じて、俺を受け入れてくれた。


「彼女たちが回復したら、後を追ってきて欲しい。まあ、その前に叩き潰してこっちに戻ってくるかもしれんが」

 

 俺は本気だった。ガチホモ王を叩き潰し、口を割らせてやる。

 あのオウレンツという外道錬金術師について知っていることを全部吐かせてやる。


「オウレンツは変わってしまいました――」


 ふっとルサーナが口を開けた。

 そういえば、俺の母親と同じでオウレンツも救国の英雄の一人だったはずだ。


「母さん、何か分かっていることは? アイツのことで」


 ルサーナはゆっくりと首を左右に振った。

 

「もう、今の彼は以前の彼ではありません。おそらくは【シ】に魅入られたのか…… 私には彼がなにを目的にしているのか、推測もできません。【シ】覚醒は、全ての生命の終焉を意味します。ああなった、オウレンツとて、例外ではないはずです。【シ】を受け入れたのか、操られているのか…… それも分かりません」

 

 【シ】という存在。この世界。生きとし生ける者、生命の存在全てを滅ぼす存在。そのような物に味方をしてなんの意味があるのか。

 操られているのか?

 だからどうした?

 関係ない。俺は、とにかく俺の許嫁のシャラート奪い返すだけだ。

 腕は元に戻った。もういつでも、俺は俺専用のあのおっぱいを好きなだけ揉める。

 とにかく、絶対に俺は彼女を取り戻す。


「うごぉぉぉぉ…… 王の…… ガチホモ王の……」


 ライサに顔面を踏み抜かれ、顔がひしゃげた形になったガチホモ四天王の1人が声を上げた。

 アナギワ・テイソウタイだった。まだ、生きてたのか……


 そういえば、全員、止めはさしてないはずだ。


 ホモ・リンゴは、自分の魔剣をケツに突き立てられ、ガクガクと震えて、涙とよだれと鼻水を垂れ流している。

 アナル・ドゥーンは息だけはしていた。九九%は死んでいるが、シャラートの残虐な拷問が中断されたので死んではいない。

 

「ああ、戦いは空しいのです―― 人が争いそこに何が残るというのか? 愛? それは世界の真理なのでしょうか。それを「是」とするのですか――」

 

 体育座りで、賢者状態となっている木冬木風は、戦意は失っているが、体はノーダメージだ。

 

「アイン」


 ガチホモ四天王を見つめていた俺に、千葉が声をかけてきた。

 細く美しい肢体に長い耳。

 外見は完全にエルフの美少女だ。

 俺の心友にて、許嫁の千葉だ。


「なんだ?」


「こいつら、生きているな。取引の材料に使えないか?」


 千葉が長く細い人差し指を顎に当てながら言った。


「取引?」


「さっきのオウレンツとか言う、錬金術師だな。あれの情報を聞きだせるかもしれん」


「そうだな、どのみち、全員ぶち殺す予定だが、使える物は使った方がいいだろう」


 俺は笑みを浮かべた。それはいい案だと思ったからだ。千葉ナイスだ。


「おい、アイン――」


 千葉がゆっくりと後ずさっていた。

 緑の髪が揺れている。


「なんだよ? 千葉、いい案だと思うぞ」


 俺は笑みを浮かべて千葉に言った。

 

「なあ、オマエ…… アインだよな?」


 千葉は震える声でそう言った。


        ◇◇◇◇◇◇


 俺はガチホモ四天王全員を持って、階段を上がっていく。

 全員合わせて、六〇〇~八〇〇キロくらいか?

 魔力回路を回転させ、筋肉組織に流し込めば、これくらいは簡単だった。

 全く全力を出す必要もない。


 俺は体育座りしていた木冬木風を左手で引きずり、ケツに自分の魔剣をぶち込まれたホモ・リンゴは右手でひぎずっている。

 ガンガンと階段にぶつかってるが、この二人は死にはしないだろう。


「あ、ああ、あ、あ、あ 刺激ぁっぁあああ、階段の刺激ぁぁぁ~」


 ホモ。リンゴがプリプリしたケツを震わせ悶えている。

 

「一歩一歩、登る。我が身が登る―― アウフヘーベン」


 意味の分からんことを言っている木冬木風。


 死にかけているアナル・ドゥーンとアナギワ・テイソウタイは肩の上に乗せた。

 ガチホモの血が不愉快だが、シャラートの居場所を聞き出すためだ。


「ごろぜぇぇ…… ごのような姿…… ガチホモ王に見せるわげには……」


「うるせぇ、黙れガチホモ」


 肩の上でブツブツいっているアナギワ・テイソウタイを黙らせる。

 くそ、口にデンマでも突っ込んでやるか。持って来ればよかったか。


 階段を上ると、まだ扉だ。芸が無い構造だ。

 俺は思い切り蹴破ってやった。

 木端微塵に吹っ飛ぶ扉。


 そして、俺は部屋に入った。

 まだ粉塵が舞っている中、ガチホモ四天王たちを床に放った。

 これぐらいじゃ、まだ死なないだろう。

 しかし、薄暗い部屋だ。


「おい、ガチホモ王! 出てこい! 出てこないと、オメェの大事な四天王を全員殺す。出てこい!」


 薄暗い部屋に俺の絶叫が響く。


『アイン、明るくする?』

  

 サラームが俺の中から声をかけてくる。


『おう、火でもなんでもつけてやれ』


 サラームの下僕である炎の精霊が集まる。

 そして、空中に火球ができた。

 火球の生み出した明かりが周囲を照らしだした。


 俺は息を飲んだ……


「な…… なんだ…… これ……」


 黒々とした触手が俺の作りだした火球の明かりに照らされ、ヌメヌメと光っている。

 触手で出来た巨大な植物。

 そんな印象だった。

 そして、その触手に絡め取られているのは、全員男だ。

 50人、いや100人以上の男たちが触手プレイをしているという状況だ。

 見た感じは、比較的若い男が多い。


「誰得なんだ……」


『私だわ』


 俺の呟きに俺の中にいる腐った精霊が答えた。サラームだ。

 しかし、サラームを喜ばせるために、こんなことをするわけがない。


「一体ここは何なんだ――」


 もし、地獄という物があるとすれば、これは一つのその形じゃないかと思えるような場所だ。


 全裸の男が触手でグルグル巻きになって、あちらこちらにぶら下がっているのである。


「あががががが……」


 触手に捕えられている男の1人が声を上げた。

 そのどんよりした目から涙が流れる。

 全身、触手まみれだ。ヌルヌルとした触手の粘液で肌がテラテラと光っていた。


 その男の口の中に、触手がねじ込まれている。

 そして俺は築いた。その男の口と繋がっている下の方の穴にも触手がブッ刺さっていることを。

 ウネウネと動きながら、触手が男の肌の上を這っている。


「ガチホモ王! いるのか! ここにいるのか!」


 以前の俺だったら「あばばばば~、吐く、吐くよ俺、気持ち悪いんだけどぉぉ」といって口を押えていただろう。

 もう、俺の精神はこんなもんじゃ壊れない。


 お前らガチホモの醜悪さが俺の精神を鍛え、そして俺の大事なシャラートを奪った。

 いいか「あばばば」と言ってる場合じゃねーんだ。

 

「ふん、この光景を見ても、動じぬかよ―― さすがは精霊マスターということか」


 バリトンの声が響いた。無駄にいい声だ。ガチホモ野郎のくせに。


 俺は声の方向を見た。薄らとした闇の中から、徐々に巨体が露わになってきた。

 圧倒的な肉の圧力。実際の身長体重以上の存在感を見せつける男だった。

 全裸にマント。そして革バンドだけを付けた男だ。

 完ぺきに変態の格好、それ以外何者でもない。

 ハゲ頭で、妙に尖がった頭をしてやがる。


 ズンと重みのある歩みで俺に一歩近づく。


「お前がガチホモ王か!?」


「いかにも! 俺がアーヴェ・ガチホモ―― このガチ※ホモ王国の王である――」


 湿った空気の中、バリトンの声が響く。


「シャラートはどこへ行った?」


「シャラート? なんだそれは?」


「テメェのところの、オウレンツとかいうクソ錬金術師が連れて行きやがたんだよ!」


「ほう――」


 変態の極致ともいえるガチホモ王がまた一歩、俺に接近してきた。変態のオーラに対抗すべく俺の魔力回路が徐々に出力を上げていく。


「封印の鍵―― 揃う日も近いか……」


「封印?」


「封印されし、古の神の復活、そのときこそ、男女で繁殖する旧人類どもは滅ぶ。男による男だけの繁殖。穢れた女などいない。素晴らしき世界を――」


 目に狂気の光を帯び、狂ったことを言う。ガチホモ王だった。

 

「クソが! てめぇ! そのオウレンツがどこに行ったのか! 教えろ!」


「おそらくは、パンゲア大陸、南の果て、そこより海を隔てた、捨てられし禁忌の島『イオォール』であろうな」

 

 やけにあっさり言いやがった。

 なんだ?

 本当なのか?

 しかし、確かめる術が無い。


『サラーム知っているか?』


『イオォール…… ちょっと待って、聞いたことあるかもしれない…… うーん……』


 脳容量の小さいサラームが考え込む。


 まあ、いい。どっちにせよ、俺は行くしかない。

 

「おう、あっさり教えるんだな?」


「ウソを言ってもしたなかろうさ―― お前はここで――」


「ここで?」


「俺の花嫁になって、俺の子を産むのだ! バンバン生むのだぁっぁ!! お前は可愛いからいっぱい可愛がってやるぞ! その強気な目が、俺に屈して、俺の肉体と遺伝子を欲しがるようになるまで、バンバンやってやるのだぁぁ!!」


 ぐわっぁっと目を見開き絶叫するガチホモ王。

 その狂った、欲望をあからさまにしやがった。

 俺を花嫁にするだと? この変態野郎が、ぶち殺してやる!!


「男が男を孕ませる―― その力が俺にはある!! 俺に身をまかせ、俺の赤ちゃんを孕むのだぁぁ!」


 またズンっと俺に近づく。ガチホモ。

 くそ、この変態野郎、変態のくせになんて圧力だ。

 俺の魔力回路も回っているが、この圧力は半端ない。

 だが、俺の魔力回路、7個の魔力回路が連結すれば、物の数じゃないんだ。

 俺は徐々に、魔力回路の回転数を上げていく。

 体の中に重低音のパワーユニットの響きが伝わってくる。


「ほう―― さすが、我が子を孕む、花嫁よ…… 中々の力だ。しかし――」


「なんだと、殺してやる。ガチホモ。男が男を孕ませるとか、狂ったことは地獄で言ってろ!」


 俺は逆に一歩前に進む。間合いが詰まる。

 まずは、ぶん殴ってやる。

 俺は拳をギュッと固めた。


「ふ、我が力、我が王国の研究の成果を見るか――」


 ガチホモの王はくるっと反転し、男たちを絡めてとっている触手たちの方を見た。


「これこそが、我が王国の作りだした、『男色孕ませ牧場』よ――」


 この気色悪い、触手とそれに絡め取られた男たちがそうなのか……

 くそ、発想がキ〇ガイ野郎だ。


「ここでは、触手により、男による妊娠シミュレートを行ったのだ。そして、その男たちの出すものにより、俺のパワーは更に強くなるのだ!」


「なに言ってやがる」


「父乳(ふにゅう)! 父乳噴出!!」


 ガチホモ王が叫ぶと、触手が反応した。

 絡め取った、男たちの胸の周囲を触手がはい回る。

 そして胸をキュッと絞り込んでいく。

 100人を超えると思われる男たちの乳が同時に絞り込まれていった。


 触手による強制搾乳――

 しかも、全員男――


 ピューーーーー!!

 ピューーーーー!!

 ピューーーーー!!

 ピューーーーー!! 

 ピューーーーー!!

 ピューーーーー!!


 触手に絡め取られた男達が、虚ろのな目のまま、その乳首から乳を出していた。

 男が乳を出していたのだ。

 それもかなりの勢いだった。


 その白い放物線が一か所に集まっていく。

 両手を広げたガチホモ王の身体に男たちの放出した乳がぶっかけられていく。

 ガチホモの王の褐色に近い肌の上を白い川のようにミルクが流れていく。

 全部の男の乳首から出された乳だ。ようするに父乳(ふにゅう)だった。


「ふははははは!! 感じる! アムリタだぁ! まさに天のアムリタ。甘露よぉぉ!! もはや俺は不死身だ! この乳を浴び、俺は不死身となるのだ!」


「てめぇ!!」


「アイン! 精霊マスターよ! 俺の花嫁になり、この世界のアダムとイブになるのだぁぁ!! ひひひひひはやはははああああああぁぁぁッ!!!!」


 狂ったガチホモが哄笑する。

 体に流れたミルク。男の出したミルク。


 それが、ガチホモの筋肉の上、まるで、滝のように流れ落ちていた。

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