第六七話:俺は無敵! 俺は最強! 俺は不敗!

「おげぇぇ―― えげげげぇぇ」


 思い切り吐いた。すげぇ気持ち悪い。

 俺は転生前のニート時代、ネットのグロ画像を踏みまくっている。

 グロい物に対する耐性には自信があった。

 その俺が、吐いた。

 あまりに、気持ち悪くて吐いた。

 

 ガチホモ大車輪――


 この世のものとは思えぬおぞましさだ。


『アイン――』


『なんだ? おげぇぇ』


 心配そうにサラームが訊いてきた。

 この精霊に人の心配をする心があるのが意外だった。


『ゲロがキラキラしてないわね。体が悪いんじゃないの?』


『ゲロがキラキラしているのは、出崎統演出キャラ限定だ。矢○ジョーとか』


『ふーん。奥が深いわ。すごいね人体だわ』


 クソヲタ精霊が感心する。

 人のゲロ見て感心するんじゃねーよ。


「ああ! アインちゃん。大丈夫なの。ママは心配なの。ああ、ママは、一体どうしたらいいの」


 異世界最強戦力ルサーナは、俺がうずくまってゲロ吐いてるのを見て、オロオロしている。

 こういうときこそ、背中をスリスリしてくださいよ。手で。


「もう、天成君たら、そんなにドロドロした物をいっぱい出しちゃって、うふ(ああん、そんなにドロドロしたものをいっぱい吐き出しちゃって、そんなに溜まっていたの? ああどうしたらいいの? 大人の女として、私はどうしたらいいのかしら)」


 ゲロを垂れ流す俺を見て、内面描写を垂れ流す女教師。

 池内真央、28歳。金髪で角が生えている人外の教師だ。


 揃って役に立たない。俺の母親と担任教師。


「天成、大丈夫か?」

 

 すっと背中に、柔らかくしっとりと浸み込むような温度を感じた。

 優しく俺の背中をさする手があった。


 俺は振り返った。

 エメラルドグリーンの瞳が俺を心配そうに見つめていた。

 エルフの千葉だ。俺の親友にして、婚約者。エルフの美少女にTSしてしまった男子高校生。

 その優しさが、俺の背中から浸み込んでくる。


 ただ、その全身は白濁液にまみれ、かなり匂っている。

 ガチホモ四天王の発射した白濁液にエロリィをかばって突っ込んでいったのだ。

 見ると、エロリィも立ち上がっていはいた。

 まだ、虚ろな目でフラフラしていた。その周囲を心配そうに犬となったガチホモがクルクル回っていた。


「ああ、少し楽になったみたいだ」


 俺はゆっくりと立ち上がる。そして、千葉に言葉をかけた。

 その視界にまたヤバい物が目に入ってくる。


 ガチホモ大車輪。


「ふはははははは!! パンゲアの切り札もこのざまか!」


 誰が叫んでいるのか知らんが、つながったガチホモが叫ぶ。

 甲高い音を立てて、その場で、回転を始めるガチホモ大車輪。

 ゴールドリングを股間にハメこんだガチホモたちだ。

 そのリングを槍に変形させ、お互いのヤオイゲートとやらに差し込んで連結。

 10人のガチホモが巨大な車輪となり、その場で高速回転している。


「ほう…… まるでガチホモで作ったパンジャドラムだな」


 エルフの千葉が、ガチホモ大車輪に視線を送った。

 神秘の色を帯びたエメラルドグリーンの視線。


「パンジャドラム?」


「第二次世界大戦を代表するトンデモ兵器だ。それはロケット噴射により、自走する巨大な車輪であり――」


「いい。長くなりそうだからいい」


 エルフの千葉の解説を止める俺。聞いてもしょうがない無駄な軍ヲタ知識だ。


「てめぇ! 殺してやる! ぶち殺すぅぅぅ!! ド畜生がぁぁッ!」


 ビリビリと空気を震わせる美少女の獅子吼。

 緋色の美少女決戦兵器が叫んでいた。


 俺の婚約者の中で唯一戦闘力を維持しているライサだ。

 彼女がガチホモ大車輪の前に立ちはだかっていた。


 右手に握った釘バットをブンブン振り回している。

 その風圧で緋色の髪が怒りをまとって宙を舞う。

 その巻き起こる風だけで、ビキビキとガチホモ城の壁がえぐれていく。

 粉じんが巻き上がり、空気にオゾンの匂いが混じってくる。

 

「死ね! ぶち殺してやる! ぐおらぁぁぁぁッ!!」


 弾丸のように一直線にガチホモ大車輪に突っ込むライサ。

 凄まじい金属音が響く。

 暴力的な音が俺の全身を痺れさせる。


 釘バットとガチホモ大車輪がぶつかったのだ。


「あはッ! 面白いなぁぁ、殺しがいがあるじゃないかぁぁ~ ぶち殺してやる」


 信じられない速度で、釘バットをぶち込んだライサがそのままふわりと後方に降り立った。

 牙のような八重歯をみせ、赤い瞳をガチホモ大車輪に向ける。


 ガチホモ大車輪の回転が止まっていた。

 すね毛の生えた男の足がうねうねと動く。

 でもって、槍がヤオイゲートに差し込まれ完全に結合。

 その結合部も丸見えなんだよ。


 その脚の何本かがへし折れていた。

 開放性骨折で大腿骨が突き出てて、血がピューピューと吹き出ている。

 ライサの釘バットの一撃が一応ダメージを与えていたようだ。


 俺はようやく、この醜悪なガチホモ大車輪の造形に慣れてきた。

 ちなみに、血とか肉が吹っ飛ぶのは、意外に平気。

 ニート時代から、そういった動画を見ながら、焼き肉弁当を食えたメンタルだ。


 まあ、気持ち悪いことは気持ち悪いけど。

 今は吐き気よりも怒りの方が強い。こんな醜悪なものを作り出したガチホモに対する怒りだ。


「ヒュン――」と風を切る音がして、巨大な金色の槍がライサに向け突き出された。

 

 ヤオイゲートではない、もう一つの穴から突き出てきたのだ。

 腸液でヌルヌルになった黄金の槍が空間を切り裂く。

 飛沫が飛ぶ。気持ち悪い。


「ちぃッ!」


 釘バットでゴールドの槍をはじく。

 さすがに、ゴールドリングが変形した槍なんだろうか。

 ライサの釘バットで弾かれはしたが、破壊はされなかった。

「しゅん」と音をたて、槍は素早く直腸内に戻っていった。

 

「ほう、ヤオイゲートから挿入された黄金の槍が、空間を湾曲させ直腸から射出されていますな。さすが、ゴールドリングの魔力ですな」


 淡々としたセバスチャンの解説。いつかこいつも殺してやる。

 そもそも、ヤオイゲートってなによ?

 いや、解説はいらんけど。


「あ~ん」


 そんな激闘から場違いな艶っぽい声が聞こえる。


「アイン~、あ~ 早く、早くこっちに…… 続きです。さあ、もっといっぱい揉んで、アインの遺伝子が欲しいです」


 発情しきったお姉さまの声が聞こえた。

 黒髪、メガネで巨乳のお姉さま、シャラートだ。


 ゴザに寝転がったシャラート。その妖艶な眼差しが俺を誘っていた。

 ゴザには俺が添い寝するスペースを空けていた。

 そのスペースをパンパン叩く。

 大きなおっぱいは、その動作でプルプルと震え、俺を誘う。

 そのメガネの奥の黒い瞳は、妖しく潤んでジッと俺を見つめている。


「シャ…… シャラート……」


 ごくりと息をのむ俺。

 ふらふらと、敷いてあるゴザの方に向かって歩く俺。


 完全に痴女モード。今のシャラートは戦闘力ゼロだ。

 ガチホモたちは、俺を無傷で拉致しようとしている。

 とりあえず、俺に攻撃が向かない限り、暗殺者スイッチが入らない。


 ここは、最後まできちんとやって、満足させるべきなのか?

 うん、そうだな。 

 俺がなすべきこと。それは、シャラートのおっぱいを揉んで満足させてやることだ!

 俺は決意を固める。


「てめぇぇ!! クソ乳メガネ! 人が戦っている最中になにしてやがるッ!!」


 ライサが叫んだ。紅い瞳の視線だけをこちらに送る。


 彼女は、ガチホモ大車輪に対峙している。

 そのため、シャラートにムカついても、今はシャラートに矛先を向けられなかった。


「てめぇぇ!! このガチホモ殺したら、てめぇを殺すぞ! メガネ乳! 絶対にだぁぁ!」


 ライサの叫びがビリビリと反響する。

 その間も、ガチホモの黄金の槍がヒュンヒュンと伸びて、ライサを攻撃している。

 伸びる槍を釘バットと拳で迎撃するライサ。

 10人のガチホモの、黄金の槍が腸液を滑らせ、吹っ飛んできている。


 シャラートはそんなライサをガン無視。パンパンとゴザを叩いて俺を誘うだけ。


 俺は心の中でライサに声援を送る。

 よし、終わったら、ライサにも色々やってあげようと決心する。


 しかし、その前にシャラートだ。

 シャラートを満足させないと、彼女は戦うことが出来ない。

 まずは、おっぱいをもんで、特に先っちょを入念にコネコネしてあげるべきだろう。


 俺の脳内でシャラートのおっぱいをどのようにするかのプラン検討が開始された。

 俺専用の柔らかく、弾力のある至上のおっぱいだ。

 

「アイン、待つのだ!」


 清らかな響きを持ったエルフの声。

 俺はその声の方を振り向いた。千葉だった。エルフの千葉だ。


「なんだ? 千葉」


「エロリィちゃんが危ない」


 俺は千葉が指さす方を見た。エロリィがフラフラとこっちに歩いてきている。


「アインのチュウなのよぉぉ~ 早く、チュウして欲しいのよぉぉ。もうね、いっぱいチュウして欲しいのよぉ」


「エロリィ! チュウか? チュウして欲しいのか!」


「そうなのよぉ、もうね、魔素が欲しいのよぉ。魔力を直接でもいいのよぉ。アインのをいっぱい、私の中に注ぎ込んで欲しいのよぉ、ドピュドピュ、パンパンなのよぉ~」


 エロリィがフラフラしながら、俺におねだりしてきた。

 大きな禁呪を使ったダメージで体の中の魔素、魔力が欠乏しているのだ。

 俺が注ぎ込めば、エロリィの戦力は回復できる。しかし、シャラートも……


「よし! 2人いっぺんだ!」


 俺はエロリィの細い身体を抱きかかえた。

 その小さく、細い身体。腰に手を回しギュッと抱いた。

 柔らかい体。そして、白濁液まみれでも、汚されることのない芳香が鼻腔に流れ込む。

 エロリィの高い体温が俺の腕に感じられた。

 さらに、腰に回した腕にギュッと力を込める。

 彼女をも持ち上げる。顔が俺の顔の高さにくる。

 エロリィの両腕が俺の首に巻きついてきた。


「あああ、もうね、チュウぅぅ、チュウなのぉ」

 

 言葉と吐息が俺に欠けられた。

 金色のツインテール。それと同じ色をした長いまつ毛が碧い瞳に隠すように沈んだ。

 その神秘の色を湛えた瞳が俺を見つめる。至近距離。

  

 サクランボのような色をした唇が開き、俺を誘う。

 俺は、エロリィの唇に自分の唇を合わせた。

 エロリィの舌が俺の口の中に侵入してくる。まるで、それが意思を持った生き物のように俺の口の中で動き、舌に絡みつく。

 そして、思い切り吸われた。

 頭の芯が痺れてくる――


『アイン! 魔力回路回さないと、こっちの魔力がなくなるわ!』


『よー分からんが、分かった』


 サラームが脳内で叫ぶ、俺は魔力回路を回す。感覚的なものだ。

 俺の尾てい骨の奥底で、魔力回路が回転を開始。

 更に、他の魔力回路も連動して回転を始める。


 俺の体の中にある7個の魔力回路が、体の奥底に響く重低音を上げながら回転を開始した。

 上級魔法使いの1兆倍の魔力を造り上げる。超絶的なパワーユニットだ。


『おうぉぉぉぉ!! いいぞぉぉぉ!! 最高だぁぁ!! 来てる! ひひおひひひひ!! 最高ぉぉぉ!』


 凄まじく気分が良くなる。

 認識力が上がって、まるで大気の分子まで認識できるような気になってくる。


『あははは!! いいわ! アイン、魔力パンパンよ』


『よっしゃ!! この調子で! シャラートのおっぱいも揉むんだ! あはははは!!! ひひひひ!!』


『やるわね! アイン!』


 俺はエロリィとチュウしたまま、ゴザをパンパン叩いているシャラートに突撃する。

 そのまま、俺専用のおっぱいを揉んであげる。丁寧に、そして愛を込めてだ。 


「ああああん、そんなぁ、先っちょを、そんなに責めないでぇ、私の弱点をぉぉ、あ、あ、あ、あ、あ~」


 ビクンビクンと体を震わせるシャラート。


「あ~、キスです。私もアインとキスをしたいです。いっぱいしたいです――」


 俺の口に吸いつくエロリィをちょっとだけ横にずらす。

 その空間にシャーラートが唇をいれ、俺の口の中に舌を侵入させる。 

 甘い味のするシャラートの舌。それが俺の舌に絡みつく。

 エロリィも舌もやってきて、3人の舌が溶けてしまうくらいに絡み合った。


「てめぇぇえ!!! なにやってやがるぅぅ!! 殺すぞ! クソビッチどもがぁぁぁ!!」


 ライサが血の叫びを上げた。確かに、ライサを放置するのは、良くない!

 俺の許嫁なのだ。全員を平等に扱う。ああ、素晴らしい。ひひひおぉぉぉ!


 魔力回路をフル回転させた俺は、エロリィとシャラートを抱きかかえ、ライサのところまで行く。

 ああ、2人を抱きかかえているのになんて軽いんだ。

 もしかして、俺は無敵なんじゃないか?

 チュポンと俺は2人から、口を外した。


「あああん、アインもっとぉ、もっとチュウして、魔力を流して欲しいのよぉ。アインの赤ちゃんも欲しいのよぉぉ」


「はぁ、あ、ああ、あ~、痺れてしまいます。アインに愛されて、このままアインの遺伝子を私に流し込んで欲しいのです」


 トロトロの顔で俺を見つめる2人婚約者。

 ああ、いいぜ。いつでも可愛がってやる。俺の遺伝子で、その身体をパンパンにしてやる!

 だが、その前に!


「ライサ! 俺はオマエが好きだぁぁ。愛しているぞぉぉ」

 

「あはッ! アイン」


 俺は首からエロリィをぶら下げ。右手にシャラートを抱える。

 そして、左手で、ライサを抱きかかえた。

 細い腰。つま先から連なる芸術的なラインを描き、すっと細くなる腰に手を回した。

 超絶的なパワーを生み出すからだとは思えぬほど、細く、嫋やかな腰だ。

 

 ライサは首を回して俺の唇に吸い付く。熱をもった舌が俺の唇を割って侵入してくる。

 さらに、一度、唇を離していた、シャラート、エロリィも俺の口に吸いついて来た。


「むぅ! この男の子は傷つけるなという命令。これでは攻撃ができぬ!」


 醜悪なガチホモが声を上げた。


 俺は右手でシャラートのおっぱいを揉む。

 ああ、どこまでもやわらかく、そして、至高の弾力を持つ俺専用の、最高のおっぱいだ。

 指が沈み込み、それを甘美な弾力で押し返してくる。


 俺は左手で、ライサの腰をまさぐる。

 そのラインが、素晴らしい。キュッとしまった細い腰。ああ、最高だぁぁ。

 いいねぇ。


 真正面から抱き着き、密着したエロリィの高い体温が俺に染み込んでくる。

 金色のツインテールが揺れる。


 ああ、俺は無敵だ――

 ああ、俺は最強だ――

 ああ、俺は不敗だ――

 

『あははははは!! すごいわ。アイン、魔力回路がバカみたいに回ってる!』

 

 脳内で羽虫の声が響いた。些細なことだ。

 もはや、俺は、この宇宙を支配して、大宇宙超絶皇帝になるのも可能ではないか?

 誰にも負けない。

 俺の前に立つ、愚かな、超絶バカ野郎様は全部、血祭りに上げる。

 ああ、それが俺の覇道なのだぁぁあ!!!

 

 ああ、気持ちいいよおぉぉぉ!!


 フル回転する魔力回路が、俺のテンションを最高潮に持ってくる。


 1個で上級魔法使いの100倍の魔力を生み出す俺の魔力回路。

 それが、一気に100の6乗まで加速する。

 7つの魔力回路が連動して、累乗倍のエネルギーを生み出すのだ。

 

 くっつき合った俺たちが、眩い魔力光に包まれているのが分かった。


 すっと、3人許嫁が唇を離した。

 そして、俺は名残惜しいが、ゆっくりと手を離した。


 右で、すっとシャラートが凄まじい笑みを浮かべ、視線をガチホモ大車輪に向けた。 

 美しく凍てつくような視線で見つめる。

 その両手には、いつの間にか、チャクラムが握られている。


 左の方では、ふわりと緋色の長い髪を揺らし、シャラートが構える。

 ルビー色の瞳が、紅蓮の炎を放ち、全てを焼き尽くす決意を見せている。

 握りこんだメリケンサックが鈍い光を放っている。


 すとんと、しがみ付いていた俺から離れたエロリィ。

 長い金色のツインテールが魔力光の奔流の中を揺れる。

 碧い瞳は射抜くようにガチホモを見つめ、全身から魔力光を放っていた。


「殺してやるぅ! ぶち殺す! 死ね! 皆殺しだぁ!」


「きゃははは!! もうね、殺すのよ! 全員丸焼きにしてやるのよぉ!」

 

 ライサとエロリィは吼える。

 すっとシャラートが前に出た。黒く長い髪が揺れる。


「さあ、皆殺しの時間です――」


 静かにシャラートは言った。

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