第五九話:強敵! ガチホモ四天王は見ている!

「ワンワン! ワンワン!(ここです! ここにガチホモ精鋭1万人がいるのです)」


 エロリィの奴隷から犬格下げになったガチホモが吼える。

 そこは巨大な扉があった。


「ワンワン、ワンワン(ご褒美! ご褒美!)」


 パタパタと尻尾を振ってガチホモが吼える。

 もはや二足歩行すら許されない。

「はぁはぁ」と息を切らしながら、四つん這いでエロリィの周囲をクルクル回っている。

 動くたびに、乳首を挟んでいる巨大洗濯場ばさみが揺れるのだ。


 ある種の悪夢のような絵ズラだった。


「もうね、そんなにご褒美とか、欲しければやるのよ!」

 

 エロリィは獰猛な笑みを浮かべると、ノーモーションで蹴りをぶち込む。

 ヒュン―― と風を切る音が聞こえた。


 脇腹に命中。

「めきゃ」とか「べきッ」という音が聞こえた。


「きゃーん!(あああ、至福! 至福です! ご主人様)」


 ガチホモ犬は、よだれを垂らして、眼球の瞳孔を完全に開いていた。

 精神が完全に別次元に飛んでしまっている。もやは、どうにもならない。


「アイン…… 俺は耐える…… 俺は、オマエの許嫁として、この羨ましさに耐えてみせる…… この怒りをガチホモにぶつけてやる。ああ、生れ落ちて17年…… この、我が身がこれほど、燃えたぎったことがあろうか? いやない! ないのだぁぁ!」


 エルフの千葉が血を吐くような絶叫。プルプルと震えながら拳を握りこんでいる。

 もう、オマエも大概だからな。なにが、うらやましいんだよ?


「えー、ではこの扉の向こうに、ガチホモ1万人が待ち受けているわけです。では、アイン様の許嫁の皆様、ご健闘をお祈りいたします」


 セバスチャンがなんの感情もこもらぬ声で言った。読み上げソフト以下。


「では、今一度、確認です。ガチホモ1万人殲滅競争。一番、ガチホモを葬ったものが、アイン様を一夜独占する権利をえます。遺伝子絞り放題でございます。よろしでしょうか? ルサーナ様」


 いっさいの感情のない表情で俺の母親であるルサーナを見た。


「セバスチャン。上出来です」


 ルサーナは、ゆっくりと頷いた。

 ここまで、俺の意思の介在全くなし。


「では、私がこの扉を開けます。それが開始の合図です」


 ルサーナが巨大な穂先を持つ槍を構えた。伝説武具らしいが、こんなつまらんことにいいのですか? お母様。


「ああ、殺します。ガチホモを殺せばいい。それがアインとの愛の証明…… アインの遺伝子で私の体を満たすのです。愛を生むのです……」


 殺意と発情がごちゃ混ぜになった瞳を輝かせ、シャラートがつぶやく。なんと病的で重い言葉なのか。


「あはッ! いいねぇ、ぶち殺してやる。全員だッ! すぐに全員皆殺しだぁぁ! そして、アインの遺伝子は一滴残らず、私のものにする!」


 歓喜と殺意と情欲をあからさまにした美少女が吼える。 ライサは、その拳を握りしめていた。釘バット&メリケンサック装備済だ。


「禁呪の刃で殺すのよ! ガチホモを全員、貫くのよ! キャハハハハ――!! もうね、アインの遺伝子で私はパンパンになるのよぉ!」


 狂気を孕んだ哄笑と、エロビッチのようなセリフをのたまう北欧の妖精様。エロリィは通常営業だ。安定している。


「ああん、天成君と私が…… いいの? 教師と教え子なのよ。真央―― あなたは、それでいいの?(ああん、天成君たら、そんな目で年上の女を見て…… うふ、興味深々なのね。いいわ、一晩かけて、私が大人の女を教えてあげるの。ううん、これも教師としての務めなの、うふ)」


 狂気のパラメータがカンストしている人外女教師「池内真央」がクネクネと動く。ボンテージ姿の巨乳の女教師。金髪で角が生えている。

 どーすんの? この先生、投入していいの? なんか、ヤバいことになりそうなんだけど。


「ああああ! 行くぞぉぉ! 俺は行く! ああ、このとき、俺はこのために、生きてきたのだ! わが手を血に染め、異世界に生きてく覚悟を決める。ああ、それはなんと甘美で、蠱惑的な思いなのかぁぁ! 戦の神よ! 八百万の神よ! 我に七難八苦を与えたまえ――!! ひゃがががあああ!!」


 旭日に「大和魂」と書かれた鉢巻を締めたエルフが叫ぶ。異様にテンションが上がりっぱなしの千葉君。


『ワクワクしてくるわね。私の予想では、メガネ乳が本命、対抗は金髪ビッチね。阿婆擦(あばず)れの赤毛は3番手ね。で、穴が淫売の人外売女ね! 淫売すぎて「穴」にふさわしいわ! つーか、アインの婚約者、ロクなのいないの笑えるわ』


 俺の体内に引きこもり中の精霊様が他人事のような気楽なことを言った。まあ、他人事ではあるが。


『サラーム、予想はいいからさぁ』


『なーに?』


『一応、千葉のアホウだけは守ろう。魔法で援護だ』


『なんで? アイン、やっぱ、コイツが一番いいのね! いいわ! いいわねー!』


『アホウか! 千葉は、外見エルフで中身は高校生。戦闘力は問題外だ。援護しなきゃ死ぬぞ。PCが見れなくなる』


『うーん、ログインパスワード分からないんじゃ仕方ないわね……』


 今、千葉に死なれると、PCのパスワード分からんので困るのだ。

 それに、中身に色々問題があっても俺の親友であることには変わりはない。

 俺の転生前を含む50年近い人生で、初めてできた親友かもしれんのだ。


『それからな! 羽虫!』


『なによ、アイン! 羽虫じゃないわ』


『俺の許嫁をデスるんじゃない――』


 本当のことだし、俺も思っていることなのだが、他人いわれるとムッとするのだ。


「では、行きます――」


 ルサーナがすっと腰を沈め、槍の穂先を扉に向けた。


「かぁッ!!」

 

 裂ぱくの気合いとともに、王家の伝説の武器「竜槍・ドラゴラン・ファング」が唸りを上げる。

 空間を切り裂き、一気に巨大な扉を微塵きりにしてしまう。

 バラバラと崩れ落ちる扉だったもの。

 そこには巨大な空間だけが残った。


 その先には――


 いたよ! なにこの広い空間。

 まるで、お盆と年末のどこかのイベント会場のような広い場所に、びっしりとガチホモが詰まってた。

 その数1万だ。異様な光景だ。全員ふんどし。それを横ズラしして、そこから槍を突き立てている。

 

 ある種の悪夢の具現化だった。

 こんな空間で同じ空気を呼吸したくないくらいの悪夢。


 しかし――


「アヒャハハハハハハハ!! 殺すのよぉぉ! もうね、殺してやるのよ!」


 全身から青い魔力光を発し、両手に長いビームサーベルのような物を生やした幼女の突撃だった。


「ワンワン! ワンワン! ワオォォオオオオオ!!」


 荒縄で縛られた、ふんどし一丁のガチホモ犬も突撃する。今までの仲間に対し牙をむくガチホモ。

 魔道具による拘束はかなり強力だ。


 エロリィの魔力光で作られたサーベルで切り刻まれるガチホモ。意外に身体能力が高い。

 さらに、敵の喉笛に噛みつき、食い破る「ガチホモ犬」。

 なんか、コンビネーションが見事なんだけど……


「おい! いいのかよ! 奴隷を使っていいのか?」


「これは、これは、ライサ様らしくない。ルール無用が戦場のルールにございますれば――」


 セバスチャンが言った。いつからお前は審判になった?


「くそがぁぁあああ!! 殺す! 全員、ぶち殺してやる! クソロリ姫も殺してやる! 全員殺す。ぶっ殺す! 死ねぇぇぇぇぇぇえええええええ!!」


 セバスチャンの一言で、一瞬で吹っ飛ぶように飛んでいくライサ。手当たり次第に釘バットでガチホモを粉砕していく。

 まるで、ガチホモ最終処分ラッセル車のようなものだった。

 釘バットの唸りが、音速を超え、亜光速になって、空間圧縮を開始しているような気がした。マイクロブラックホールが生まれそうだ。



「ああ、人の血…… 人の命を奪うのは、とても、とても、悲しいことです。でも、それは、とても、とても楽しいことでもあるのです。さあ、殺します。私とアインのために、皆殺しです……」


 チャクラムで次々とガチホモの頸動脈を寸断していくお姉様。おおきく柔らかい、おっぱいもプルンプルンと揺れる。俺専用のおっぱいがガチホモの血で染まっていく。ちょっと嫌。

 躊躇なく、スパンスパンと首を切っていく。その目には愉悦以外のなにも浮かんでない。完全に暗殺モードになっている。

 

「ぐおぉぉぉ!! こいつらぁ! こいつら、なんなんだぁぁ!! 悪魔か! パンゲアの悪魔だぁぁぁ!」


 1万人のガチホモが総崩れになりそうになっていた。3人の俺の許嫁の突撃で。


「あらあら、若い娘ってとっても、元気なのね、うふ(ああん、どうしたらいいのかしら、真央、いいの? 若い娘たちに天成君をとられていいの、ああん―― でも、大人には、大人の女の良さがあるのよ、あんなガツガツしたくはないの…… 大人の女の魅力で、うふふ)」


 緩いウェーブのかかった金髪から伸びる2本の角。背中の小さな翼がパタパタと羽ばたく。

 完全に人外となった超絶巨乳の女教師が、その淫靡な肢体をクネクネしている。

 闘う気配は見せていない。


「くそがぁぁ!! なめるな!」


 一人のガチホモが、先生に突っ込んできた。

 股間のふんどしをズラし、槍を突き立てる。シルバーの槍だった。

 鋭い切っ先が人外の英語教師を襲撃。

 

「あらあら、危ないわ、うふ(ああん、私を突いていいのは、天成君だけ…… いいえ、本当? 真央、それは本気なの? 今、ドキドキしているんじゃないの? ああん、なんて私は罪な、いやらしい女なのかしら……)」


 ひょいっと、右手でパーリング。

 一瞬で、ガチホモが塩になって崩れ落ちる。

 サラサラと、風に乗って消えて行く。


「あやははあああああああ!! いいぞ! いいねぇ! これが、戦争だ! 戦争の風だぞぉぉ! 今俺は、実戦を体感しているのだ。ビリビリと感じる、このクソと血と土の匂いが実戦の洗礼なのだぁぁ! あああ、しばし待たれよ! ワルキューレの娘たちよ。我が魂は、戦いを欲し、敵を撃滅せんとす!」


 千葉は、隅っこでしゃがみこんで絶叫していた。

 まあ、これはこれで、安全そうなので、よかった。

 緑の髪のエルフなので、下手に動けば目立って仕方ない。助けるこっちも面倒くさい。


「なんか、強いな…… 俺の許嫁……」


 俺はその光景を見て思わずつぶやく。

 もははそこで、繰り広げられているのは、戦いではなく、一方的な惨殺だった。

 殲滅戦であり虐殺だった。


 エロリィの禁呪のサーベルで貫かれるガチホモ。

 ライサにぶん殴られ、釘バットで粉砕されるガチホモ。

 次々に首を吹っ飛ふっとばすサラームの凶悪なチャクラム。

 ときどき、先生に飛びかかっていったガチホモが塩になって飛散していく。


 5分くらいで、ほとんどガチホモはいなくなっていた。


「んッ?」


 一瞬、俺の背に嫌な寒気が走る。

 なんというか、湿気のこもった舐めるような視線を感じたのだ。


『どーしたのよ? アイン』


『なんか、見られているような気がするんだけど』


『えー、気のせいじゃないの?』


『あー、そうかもな……』


 俺は首をひねった。

 まあ、こんな異常な場所にいるのだ。悪寒くらいは、感じでもおかしくはないだろう。


        ◇◇◇◇◇◇


「ほほう、あれがパンゲアの最強戦力か…… 可愛いものよ」


 パンパンに筋肉で膨れ上がった男が言った。

 その男は、魔力の遠隔映像通信で、ガチホモ1万人のバトルを見ていたのだった。

 筋肉で包んだ肉体に、青く輝く金属製のふんどしをハメたガチホモであった。


 右手に魔道具「デンマー」を握りこんでいる。恐るべき振動を相手に叩きこむ魔道具だった。

 左手には、あらゆるものを吸引する魔道具「ジャクリーン」を持つ。

 両手を完全武装したガチホモだった。


「たぎっているのか? アナギワ・テイソウタイ?」

 

 アナギワ・テイソウタイと呼ばれた男は、口角を釣り上げ笑みを上げた。

 見る者に寒気を起こさせる邪悪な笑みだった。


「ふふん、ホモ・リンゴよ。俺も貴様も出るまでもなかろう。あの程度ならばな……」


「しかし、この男…… 結構、可愛いではないか? どうだ?」


 ホモ・リンゴと呼ばれた男は揺らりと前に出た。

 食いつくように、魔法で写し出されたアインの顔を凝視する。

 ベローンと舌を出して、空間投影された顔を舐めようとするホモ・リンゴ。


「フッ、相変わらず見境なく、発情するかよ――」


 ホモ・リンゴといわれた男は、空間にベロをブルンブルンと振り回す。

 魔法で投影されたアインの顔を舐めているつもりなのだ。


「ひぎぎぎぎぎぎぃぃぃ、いいいねぇ、いいぞぉぉ、この銀髪と黒髪の男の子は、俺が調教して肉奴隷にしてやるぅぅ。ひひひひ!」


 ホモ・リンゴの横にずらしたふんどしから、剣の柄のような物が突き出ていた。まさしく異形であった。


「俺もだぁぁ! 俺も、あの男の子欲しいののだぁぁ! 欲しくてたまらんのだぁ! 精進したいのだぁ!」


 背後からの叫び声で、アナギワ・テイソウタイとホモ・リンゴが振り向いた。

 見るからに凶悪な顔をしたガチホモがいた。

 身長3メートルを超える巨体。全身に傷。

 ダラダラとよだれをたらし、瞳孔は開きっぱなしの狂気を帯びたガチホモだった。

 ふんどしの脇からもダラダラと白い体液をもらしていた。それは絶えることなく垂れ流し状態だった。


「俺の、俺のぉぉぉ、ガチホモの凄さを、教えてぇぇぇ、ガチホモの天国にいかせるのだぁぁ! それは精進なのだ!」


「ふふん、木冬木風よ、相変わらずのガチホモっぷりよ。敵にはしたくない物だ」


「ああ、まったくだな」


 狂ったガチホモが体液を垂れ流し、発情していた。

 その周辺の空気まで白濁してしまうのではないかというくらいだ。


「そういえば、四天王の1人、アナール・ドゥーンはどうしたのだ?」


 アナギワが言った。

 青いふんどしに見えた物は金属製の貞操帯であった。鍵がついている。

 そのカギは、ガチホモ王が所有しているのだ。


「もしや、奴め、先走りおったか?」


 ホモ・リンゴが言った。プルプルと形が良く艶のある尻を震わせる。

 

「まあ、いいだろうなのだ! 精進なのだからな!」


 体液を垂れ流しながら、木冬木風が言い放つ。


 ガチ※ホモ王国、最強の戦士――

 

 ガチホモ四天王が動き出そうとしていた。

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