第五七話:魔道具で緊縛! ガチホモ奴隷の誕生
シルバーのふんどしを締めたガチホモが話し始めた。まだ、丸太に縛り付けられたままだが、まぶたに刺さった棒手裏剣は一応抜いた。
「洗いざらい言う! パンゲアの王族は最上階だ! 男色孕ませ牧場に監禁されている!」
聴覚神経から、脳髄に直撃。吐き気した。
なんだよ「男色孕ませ牧場」って、もう名前聞いただけで、吐き気してくるんだけど?
絶対に、そんな名前の場所になんて行きたくないんだけど。
俺は、拳を握りしめ固く心に誓う。
「男色孕ませ牧場ですか……」
シャラートが、こ汚い言葉を口の中で転がす。
お姉様、そんな言葉を口にしないでください。
「ああそうだ! しかしなぁ! お前らは、そこまでたどり着かない! 絶対にだ!」
「あら…… なんでですか?」
心臓を貫くようなアイスピックのような眼差しでシャラートが見つめる。
どこから取り出したのか、チャクラムを喉元に付きつける。
「いいかぁ! ガチホモ城の一階には約1万人のガチホモ戦士がいる!
修羅だ――
修羅の群れだぁぁ。
ブロンズ、シルバーリングの屈強な修羅の群れだぁ」
いや、その修羅の一部はたった今、俺の許嫁たちに瞬殺されたんだけど。
1万人かぁ。10分くらいかかるか?
『いいわね、1万のガチホモね! すごいわ。なんか、ワクワクしてきたわ』
腐った精霊が俺の中でウキウキしている。
無視だ。
「更に階を上がれば、『ゴールドリング』保持者、そして『ガチホモ四天王』様がいるのだ!」
首の筋を目いっぱい伸ばし、唾を飛ばしながら絶叫するガチホモ。
「四天王ですか?」
「ひひひひぃぃ! バカが、最後だ! 恐るべきガチホモ・四天王様に勝てる者などないのだぁ!
いや、前のゴールドリング保持者にすら勝てるかな?」
「そうですか」
興味無さそうにシャラートがつぶやく。
「あはッ! んじゃ全員、ぶっ殺しに行くか。全員、ブチ殺す。脳天叩き割ってやるから」
右手に握った釘バットを軽く振るライサ。スイングが速すぎて釘バットが消える。
なんか、空気から焦げ臭い匂いがしてきた。確実に音速を超えている。
「じゃあ、話しも聞いたことですし、行きましょう」
サラサラの黒髪を揺らし、シャラートが振り向いた。視線の先にはママ。俺の母親のルサーナがいた。
彼女はゆっくりと頷いた。
「まて! いいのか? それで! ガチ※ホモ王の居場所とか、四天王の能力とか、まだ話すこと色々あるんだけどぉぉ!」
「いえ、いいです。飽きました」
おっぱいを揺らしながら、クイッとメガネを押さえるシャラート。
興味無さそうに言った。
俺のお姉様にとっては、拷問することが目的であって、その結果得られる情報などに興味が無いということが分かった。
まあ、予想していたけど。
「さて、殺しますか」
シャラートは、冷え冷えとする光を放つチャクラムをスッと構えた。
「莫迦か! ガチ※ホモ城は広いぞ! 迷宮並みだ! 下手なダンジョンより複雑なのだぁ!」
嫌な気分になる俺。俺にとってダンジョンはトラウマだった。
5歳でダンジョンに放置され、変な奴に出会って以来、大嫌いだ。
つい最近までクラス全員でダンジョン内をウロウロしていたし。
こんな、淫猥で、ガチホモがウヨウヨいる場所を、迷いながらウロウロ歩くのは勘弁して欲しかった。
「ちょっと待ってくれ、シャラート」
「はい? なんですか。アイン?」
「いや、ガチホモ王の場所くらいは訊いておいた方がいいんじゃね?」
「どうせ、最上階です。いなくても、部下を全員殺せば出てきます。隠れているのを追い詰めて殺すのも、良いものです――」
うっとりとした顔でチャクラムに頬ずりするシャラート。
俺の姉で婚約者で暗殺者で痴女でサイコパス。
でも、おっぱいは大きくて俺専用なのだった。
「すぐ攻略本を見てしまっては、興がそがれるというものだな、アイン」
肩に槍を担いでエルフの千葉が言った。
まだ槍の先には、ガチホモの生首が刺さってんだけど?
オマエ、それは早く捨てろよ。
「もうね! 私は嫌なのよ。こんなところをウロウロと歩き回るのは、嫌なのよ! 私は天才のプリンセスの禁呪使いなのよ!」
エロリィが言った。キッと強い眼差しで、シャラートを見つめる。
全身から金色のキラキラした光がこぼれ落ちてきそうなほどの美形。
北欧の神秘の芸術品。
そう表現するしかない美しい顔が怒りの色を見せていた。
「歩くのが嫌なら、ここでお留守番です。ロリ姫――」
シャラートが「ふふん」という感じで言った。
「いやなのよ! アインと行くのよ!」
パンパンと足を踏み鳴らし、エロリィが叫ぶ。
「あはッ! いいんじゃね? あのボケじぃさんの護衛と一緒に留守番してればいいんだよ」
ライサが言った。
ガチホモ城に特攻する、俺たち以外の兵は、城に残って、パンゲア王である、俺の爺さんの護衛をすることになっている。
まあ、敵地のど真ん中なので、真っ当な話だ。
「待って下さい! お姉様方!」
荘厳なエルフの声が響いた。エルフとなった千葉だった。
「エロリィちゃん! 歩くのが嫌なら、この不肖・千葉が馬となりて、お運び申し上げます!」
エメラルドグリーンの髪の毛をふわりとなびかせ、四つん這いになるエルフ。
四つんばいになったエルフが出現した。
「さあ、この不肖・千葉の背にお乗りください!」
不退転の覚悟を決めた千葉の声が響いた。
四つん這いになって、美しい幼女を乗せるエルフ――
これは、どうなんだ? ある意味、幻想的なのか。
「うーん、悪くないけど、アンタ、脆そうなのよ! 細いし~」
エロリィが眉根をよせて言った。
確かにエルフとなった千葉の四肢は繊細といっていいほど細いのだ。
見る分には美しいが、馬として乗っかるのはどうかという感じだ。
「いいです! エロリィ様! もし、不肖・千葉が動かなくなれば、むち打ちでも、蹴りでもなんでも叩きこんでください!」
そのまま土下座するようにして、馬にしてくれと懇願する千葉君。
男子高校生のくせに、なんというか、その性癖はどうかと思うよ。
俺ですら、ドンビキだよ。
「それに、やっぱ、道案内は必要なのよ」
ふわりと長いツインテールを揺らし、エロリィは、ガチホモを見つめる。
「やっぱ、そうだよね。エロリィ」
珍しく、エロリィがまともなことを言った。俺は完全同意だった。
「この、ガチホモに道案内させればいいのよ!」
ビッシっと小さく可愛らしい指で、ガチホモを指さした。
「いや、エロリィ、それは…… 道案内って一緒に行くのか? これと?」
露骨に嫌そうな顔をして俺は言った。
シルバーリングのガチホモは、ぱぁっと顔を明るくさせる。
意外に、覚悟は決まっていなかったようだ。
「そうなのよ。こいつを連れて歩いて、罠とか危なそうなとこは先行させればいいのよ!」
「なるほど―― エロリィちゃんの言うことに、一理ありますな」
エルフの千葉は立ち上がって、言った。この切り替えの早さと適応力。さすが千葉だった。
「しかし、どうやって? 縛って連れてあるくにしても、めんどくさいです」
「あはッ! 私はどっちもでいいよ」
「魔道具で枷(かせ)をハメるのよ。もうね、完全に屈服させ、奴隷化するのよぉぉ!」
エロリィが言った。
なるほど「奴隷」か、異世界では定番の概念だな……
しかしだ。普通は「奴隷」とは「美少女」にカテゴライズされるものがなるものだ。
『いいわね! ガチホモ奴隷! 斬新だわ! このビッチやるわね! ガチホモ奴隷ハーレムフラグだわ』
『叩き折るわ! そんなフラグは一瞬でへし折る!』
ガチホモの奴隷など需要が無い。少なくとも俺はいらない。
ましてや、ガチホモの奴隷を集めるなど言語道断だ。
コイツ一人くらい、道案内が終わるまで奴隷化するなら分かるが。
うーん……
どうするか。
「なあ、エロリィ」
「なによ、アイン?」
「奴隷にするって、そんな簡単に言うこときくようになるのか? その魔道具で?」
「きゃははは!! もうね、天才でプリンセスの禁呪使いの私なら簡単なのよ! 私の国では、古代魔法文明の研究が進んでいるのよ!」
「ああ、確か言ってたね」
エロリィの故郷である神聖ロリコーン王国では、古代魔法文明の遺物から色々な魔道具を研究している。
魔力にブーストをかける魔法の衣装とか、研究中だと以前言っていたのを覚えている。
「こんな、ガチホモ一人を奴隷化するなんて、簡単なのよ。魔道具で一発なのよぉ!」
「ふーん。で、その道具はどこにあるの?」
エロリィはツルンとしたボディラインの分かる服を着ているが、荷物を持っているようには見えない。
そんな魔道具はどこにあるんだ?
「へぇ、アイテムボックスでもってきたんだ? ロリ姫のアイテムボックスに入るのか?」
ライサがルビーの瞳で、エロリィを見つめて言った。
「もうね! アンタたちのような阿婆擦(あばず)れとは違うのよ。そんな、ガバガバアイテムボックスと一緒にしないでほしいのよ! 私のアイテムボックスは小さくて、可愛くてそんなに入らないのよ! 来てないし、生えてないのよ!」
「てめぇ、なにがガバガバだッ! 殺すぞ! ぶち殺すぞ!」
顔を真っ赤にして、ライサが吼えた。
「ほう―― 私の、アイテムボックスをガバガバとそう言ったのですね…… もう、取り消せませんよ」
ブワッと全身から凍えるようなオーラを吹き出し、シャラートが言った。
「釘バットとか、チャクラムが入る、アイテムボックスなんて、あり得ないのよぉぉ! ガバガバなのよ! アインもそんなアイテムボックス嫌なのよぉ!」
なんだそれ?
アイテムボックスとか、そんな便利なものが、この異世界にもあったのか?
確かに、ライサの釘バットとか、シャラートのチャクラムとか、いきなり出現するし……
そうか、アイテムボックスがあったんだ。
「あはは! エロリィ姫、それは言いすぎだよ。このルサーナは槍が入るんだぞ? でも、俺はそれでも……」
ドゴォォーン――
一瞬で、地面に頭から叩きつけられた俺のオヤジ。
シュバインだ。「雷鳴の勇者」の異名をとる、救国の英雄だった勇者。
いまや、嫁にボコられるだけの存在になっている。
「アナタは、余計なことを言わないでいいのです――」
ルサーナが静かに言った。
しかし、シュバインは返事が出来る状態にない。上半身が完全に地面にめり込んでいたから。
「エロリィ―― アイテムボックスがガバガバだと、ダメですか?」
俺に対しては絶対に向けることの無い視線でエロリィを見つめるルサーナ。
「もう…… いいえ! ないのよ! もうね、大きいアイテムボックスは便利なのよぉ! 素晴らしいのよ!」
「よろしい――」
なんなんなんだ?
アイテムボックス?
「なあ、エロリィ、アイテムボックスがあるのか? この世界には」
ルサーナに怒られそうになり、怯えているエロリィに、俺は話しかけた。
「あああぁぁぁ、アイン…… あるのよ。もうね、女の子は全員、もっているのよ!」
「え? 女だけなの?」
「そうなのよ! 男にはないのよ! 当たり前なのよ!」
ふーん…… そうなのか。
「ふあははは!! 男でもあるぞ! 研鑽だ! 精進だ! 拡張だ! 拡張すればいいのだ! 我等は、女に独占されたアイテムボックスを所有するのだぁぁ!」
ガチホモが叫ぶ。
なんだ? 男でもあるのか?
意味が分からなくなってくる。
腕を組んで頭をひねる俺。異世界はやはり、謎が多い。
「もうね、いいのよ! アイテムボックスではなく、禁呪で取り寄せするのよ! 天才のプリンセスの禁呪使いの私はできるのよ!」
エロリィが話を打ち切る様に叫ぶ。
胸の中に疑問は残るものの、まあ考えても仕方ない。
こんど、シャラートにアイテムボックスを見せてもらおう。
それで分かるだろう。
「とにかく、コイツを奴隷化して、案内をさせるのよ!」
エロリィはそう言うと、すっと両手を合わせ、拝むようなポーズを作る。
全身から青い魔力光が立ち上がり、光の粒子が空間の中をキラキラと舞う。
「ほうらぁ、もうこんなに欲しいって言ってるのぉ~ 入口が開いちゃうのぉぉ、もっと大きく開いてみたいの? もうね、どうしたらいいのよぉぉ?
こんな小さな、入り口を開いてどうするの? ああ! なによ! そんなの入れるのぉぉ、出してよぉぉ! キツイのぉぉ~ そんなのはいらないから、無理、裂けちゃう、裂けちゃうのよぉぉぉ~」
エロリィの禁呪の調べが空間にゆるゆると流れ出す。
いつみても、荘厳な光景だった。
「美しい…… 禁呪を唱えるエロリィちゃんは、至上の美。死ねる。俺はエロリィちゃんのためなら、死ねる……」
青い魔力光がエルフの幻想的で美しい顔を照らす。人の婚約者に対し、言っていることは大概だったけど。
「くぱぁ――」
エロリィの禁呪詠唱がそこで終わった。
次の瞬間、「くぱぁ」と空間が割れた。
エロリィはその中に手を突っ込む。
「ううん、これじゃないのよ。あ! あったのよ!」
グルグルとかき回すように手を動かすと、なにやら取り出していた。
「なにそれ?」
「ふふん! これで、このガチホモを奴隷化するのよ! 絶対服従なのよぉぉ!」
エロリィは手に持った魔道具を握りしめ、絶叫した。
◇◇◇◇◇◇
俺たちは、ガチホモ城までテコテコ歩く。まあ、目と鼻の先だ。
先頭には奴隷と化したガチホモがいる。
「ふんがぉあ、あんぐ、あがががが(エロリィ様、では行きましょう。案内します)」
ガチホモが言った。
口には、丸く黒い口枷がハメ込まれている。
「ポールギャグ」に良く似た、つーか、「まんま」そっくりな魔道具だった。
そして、全身は魔法のロープで、呪術的な縛り方をされている。
命令に逆らうと、体に食いこんでいくのだ。
一見すると、亀甲縛りに似た感じだ。
そして、乳首にはそれぞれ、銀色の洗濯ばさみが食いこんでいる。
かなりデカイ。
これも、逆らうと乳首を強烈に締め付ける。そして、命令に従っていると、気持ちよくなってくるという「アメと鞭」という恐るべき魔道具だった。
「きゃははは!! この魔道具で拘束された、者は絶対服従なのよぉぉ! もうね、逆らえないのよぉ!」
「あばばばあぁぁぁ。あがばああ(はい! 天才のプリンセス・エロリィ様!)」
ガクガクと全身を震わせながら、ガチホモ奴隷が進む。
そして、俺たちはそれに続く。
ガチホモたちとの決戦が始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます