第五〇話:さあ帰ろう! 俺たちの故郷へ
「アイン、アイン、アイン、あああ、アインちゃんは、凄く天才で、可愛いので、無敵なので、女の子にモテモテなの。ああ、どうしましょう! でも、婚約者をこれ以上増やすのは…… 結論は、ガチ※ホモ王国を滅ぼしてからにしたいの…… ああ、容赦なく厳しいママを許して! でも好きなの、ママはアインちゃんのことが大好きなの! スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ――」
「ああん、やっぱり私が年上すぎるからしら、でも止められないの。お母様に反対されても、私は諦めらないの、ああ、私ったらどうしたのかしら? ああん、天成君…… だから、いいのよ、天成君だって、年上の大人の女の良さを忘れられないはず…… だから、私も天成君のお嫁さんになってしまいそう、うふふ―― ああ、真央ったら何を言っているのかしら。28歳にもなって。教え子に本気になるなんて」
『やっぱり、魂の双子なんじゃないの? アインの母親とこの淫売は』
『うん―― 俺もなんか、否定できない――』
サラームの言葉に反論する元気もない。
延々と続く、ルサーナのスリスリに俺の精神が削られていく。
エロい気持ちになるどころか、長時間のスリスリは精神的に厳しい。
先生はそんな俺を見て、クネクネと肢体を動かしているし。
千葉がルサーナに「母上! ここは、アインの婚約者として先生を推挙させてていただきます!」と意見具申したが、却下された。
それは先生が年上だとか、人外だとが、見た目がアレだとか、頭がおかしいとか、まあそれが理由ではなかった。
そんな問題を上げていたら、俺の婚約者全員アウトだ。
要するに「アインのお嫁さんになるからには、それ相応の力がなくてはなりません」ということだ。つーか、そうすると千葉はなんだ? やっぱ口車か?
結局、先生との婚約の件は、ガチ※ホモ王国を滅ぼした後で検討することになった。
「きゃはははは! ザマァァァァ!!! このパンパンの商売女がもし、婚約者になっても、序列は最下層のドべなのよぉぉ! もうね、アインは私のものなのよぉ! 邪魔したら、殺せばいいのよぉ!」
ルサーナにスリスリされている俺の背中にしがみ付きながらエロリィが絶叫している。
背中にポチッとしたイジェクトボタンの先っちょが当っている。
「あはッ! アインはやっぱモテモテだからな、クソみたいなスベタの淫売がよってくることもあるよね! アインは強い上にやさしいからな! 私が最強の遺伝子残してあげるから! ま、いざとなればスベタは殺せばいいしね!」
ライサも目の光が元に戻っている。どんよりとした鬱色の赤から、輝くルビーの瞳に戻っていた。
「アインは天才で、無敵なので、その遺伝子は私が残さねばなりません。姉の義務です。その行為を私と毎日やるのです。邪魔したら殺します―― すぐに殺して欲しいと懇願する方法で、殺します――」
「はぁはぁ」と荒い呼吸の中で、ずっしりと病んだセリフをのたまうお姉様。なにを想像して興奮しているのか分からないが、まあいつも通りになったようだ。血涙は止まっているし。
先生が婚約者という枠組みに組み入れらる可能性がでたことで、なぜか全員、情緒的には安定してきている。
予想通りだった。
いざとなれば、殺すというのが全員一致の結論。俺の婚約者たちが、平常運転に戻った。
婚約者以外のよそ者に俺を取られる可能性を恐れているのか?
で、婚約者同士の場合、最悪でも俺を共有できるという安全弁があると考えているからだろうか?
ライバルでもあるが、仲間でもあるという意識があるのだろうか?
このあたり心の機微はあくまでも推測だ。後で千葉の分析でも聞いてみるか――
右ほほ300回、左ほほ300回のスリスリが終了した。
首がちょっと痛い。
首を回しながら、俺はゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ、戻るか」
俺は大宇宙に青く輝く星を見つめて言った。
北半球の大きな大陸の端の方が、俺たちのいたパンゲア王国だと思う。そこだけ赤黒くなっているからよく分かる。俺のせいではないが。
『サラーム、そろそろ行くか』
『いいわよ! ねえ、アイン、星を動かして城にぶつけるというのはどうかしら? チャレンジしたいわ! 「星を動かすもの」だわ!』
『宇宙怪獣がでてきたら、やってくれ。いないから却下だ』
『やるわね! アイン!』
冷酷非道のヲタ精霊であるサラームのネタをきちんと返してあげた俺であった。
『じゃあ、魔力回路動かすかぁ』
俺は体内の魔力回路を意識する。魔素が流れ込み、体の中でなにかが高速回転する感覚があった。
尾てい骨の奥底から重低音の響きが全身に伝わってくるようだった。
『あれ、なんだこれ?』
尾てい骨から生まれたエネルギーの奔流が、体の中を上昇しながら、新たな回転を生み出していた。
今までにない感覚だった。体の中に、眩しい光が生じたような気がした。
目に映る認識力が、滅茶苦茶上がっている。集中すると、物の分子構造まで見えそうな気がした。
そして、時間の流れまでゆっくりになってくる。
俺の認識する時間と外部に流れる時間軸がずれてきているのが分かった。
なんというか、俺の思考までも凄まじい高速回転をしている。
外に流れる時間が止まっているような感じだ。
この感覚は悪くない。
『なあ、サラーム、なんだろうなこの感覚。いつもと違うんだが』
『すごいわ! 魔力がパンパンに溢れ出してる! 魔力回路が増えるとこうなるんだ……』
今、俺の体の中には、魔力回路が7個ある。
池内先生の閉鎖空間に閉じ込められて、魔素を吸引したときに、先生の魔力回路まで吸い込んでしまったのだ。
魔力回路は魔力を生み出すパワーユニットのようなものだ。
生み出された魔力が、次の魔力回路を高速回転させ、更にそこで生み出された魔力が次の魔力回路に流れ込み…… という連鎖が生じているようだった。
『アイン…… すごいわ』
『なんだ?』
『7倍じゃないんだ…… 魔力回路が7つあるけど、魔力量が累乗で増えてるわ』
『累乗?』
『今までのアインの魔力量が100とするわね。これ多分、上級魔法使いの100倍くらいだったわ』
ちなみに、上級魔法使いというのは、魔法の才能がある人間がいたとする。
そいつが、一切をすべて捨て、20年間その全ての時間を魔法の研鑽に注ぎ込む。
でもって、その中の100人に1人出るかどうかというレベルだ。
今の俺は、その100倍の魔力を持っているということになる。
『やっぱ、俺は天才だな』
魔素の薄い地球で無理やり魔力回路を稼働させていたからだろう。12年間、高地トレーニングをやっていたようなものだ。
『で、今のアインだけど、アナタ、100の6乗の魔力を生み出しているわよ』
『そうなの?』
『そうね。これ、凄いわよ―― 上級魔法使いの1兆倍ね。ゼロが12個つくわ。どうすんのこれ? 使っていいの?』
つまりだ――
地球の総人口(70億人)と同じ数だけの上級魔法使いがいたとする。
その何倍?
ああ、頭の回転まで速くなっている。出たぞ! 142.8571倍か!
すゲェな、俺。
あああああ、なんかすげぇ気分がいい。頭がすっきりしてくる。
ヘブンだ!
これがヘブンというやつか?
俺は無敵なり。俺に敵は無い! 無敗! 最強!
この俺の前に立ちふさがる全てのドアホウ様は粉砕し、宇宙のゴミにする。俺こそが大宇宙帝王になるために生まれてきた存在……
あひゃぁぁぁぁ!!
いいいいい! 気持ちいいい!!!
俺は天才である――
俺は最強である――
俺は無敵である――
俺は不敗である――
ニートから転生し、通算48年の歴史に敗北の二文字はない!
『あの淫売の魔力回路…… なんか、出力が高いわよ……』
『あ~あ?? 俺が無敵ってことだよなぁぁぁ!! いいんじゃね? やろうぜぇぇぇ!』
『じゃあ、思い切り行くわよ!』
『いいぜ、いつでもいい。なんなら、俺が小便をしているときにやったっていいんだぜ』
『あ、アイン、頼もしいわ! んじゃ重力歪めて、あの星に突撃ね! ひゃははははははは! ね、光速50%くらいでいいかしら?』
『バカ言うな! 光速の100パーセントだ! 俺の能力なら可能だ! シュバルツシュルトの半径すら打ち砕く、超絶突撃で行くのだ!』
『ノリノリね! アイン、さすがわ!』
俺の体内で唸りを上げる魔力回路。7つのパワーユニットが有機的連携システムを構築し、凶悪なパワーの奔流で俺を包み込んでいる。
いいぜ――
いいんだ。
この魔力。
人の身でどこまで、魔力を解放し、奇跡を起こせるか。
それを見せてやるんだ。
シャラートよ。
俺の可愛いい姉にして暗殺者の痴女な婚約者――
お前の良人の超絶的な力をその黒き瞳に焼き付けるのだぁぁ!!
ライサよ。
ナグール王国の姫にして美少女殺戮兵器な婚約者――
お前の男の、その真の力をその真紅の瞳にやきつけるのだぁぁ!!
エロリィよ。
神聖ロリコーン王国の姫にして禁呪使いのビッチな婚約者――
お前を孕ませる男の、パンパンの魔力を碧い瞳に刻むのだぁぁ!!
池内真央先生よ。
年上の女―― ふふん、上等だぜ。
いいぜ、いつでもいい。俺はいつでもOKだ。その乳に刻め!!
千葉はどうでもいい。
「ウォォォォ!!!! 行くぜ! 魔力解放だ!!」
空間が曲がった。巨大なパンゲア城が加速する。
1G、2G、3G――
おいおい、なんでみんな、伏せているんだい?
シャラート、顔色が青いぜ…… そんな表情に君には、合わないぜ。
物理結界に包まれたパンゲア城は俺(サラーム)の生み出した空間の歪みで加速。
一気に地表に向け突き進んでいた。
『ねえアイン、言っていい――』
『なにをだ? まあ、いいぜ。言ってみな』
『ジョー、君はどこに落ちたい?』
サラームの渾身のネタが炸裂した。
俺たちを乗せたパンゲア城は流星となり、故郷の星に一直線だった。
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