66話目 神殿復活計画。

 今日も光魔法使いのクレアと虹色魔法使いのシルバニアは神殿職員の魔法実技試験を行った。


 昨日は何とか光魔法使いが1人居た。レベルや魔力が低いものの、神殿職員候補としての資格はクリアした。何人か候補が集まってから、面談へ進めたい。


 面談にはアルフも参加予定。



「今日も1人でも多く、条件満たした人が来てくれると良いですよね。」



 クレアは近衛兵隊寮の応接室の机を磨きながら、ため息を吐いた。


 神殿職員の申込受付は近衛兵隊寮の大きな応接室で、試験は近衛兵隊訓練広場で行われていた。


 午前中は近衛兵隊の訓練に使われているので、試験は午後から行われていた。実際は魔力があるものの、火を付ける程度の魔法ばかりだった。中々、有能な人材見つけるのは難しい。約人口150万人の王都といえど、中々魔力が高い者は少ない。しかも光系魔法となると更に難しい。近衛兵、騎士団、騎兵隊、魔導士隊と比較的魔力の高い者達の中でも希少な魔力であった。



 聖なる光や光魔法が使える職員が必要なのは東地区の作成中の神殿がかつて、聖なる光の神が祀られていた場所だからだ。


 なので、クレアやミハイルみたいな光魔法使いは、ここの管轄責任者になる予定。ミハイルは別の部署の人間だからそんなに来れないだろうけどね。


 そしてシールス魔導士隊から、聖なる光の魔法使いであるセレスさんをスカウト中である。上手くいけばクレアは近衛兵隊に戻せる。セレスさんも忙しそうなんだけどこちらも手伝ってもらいたい。治療院や救護員も週何回か行かなくてはいけないらしいし、有能な人は責務が重なって大変よね。


 将来的には治療は光の神殿でも出来るようにする予定。


 王立図書館で神殿の跡地を調べてみたら、元々王都には其々の神様を祀っている神殿や跡地がある事が分かった。西区にある貧民街の中に救護院がある。其処は元々水の神の神殿を再利用した建物。鐘は残っているものの、かなり錆びているし欠けて痛んでいる為、手を入れる必要がある。


 そして王都の神殿跡地は婚姻の儀で使われたホールが愛と豊穣の神の跡地上に建っている。実際に婚姻の儀や祭事で使われているし、鐘もある。神殿としての条件は満たしているので、神殿長や神官を雇えばそのままで良い。王都は以上の三つだが、ブーケッティア王国にはまだ沢山の神殿跡地がある。でも王都だけなら、取り敢えず魔法陣で盾を作れる。


 国全体の魔法陣となると各地の神殿を回らないといけない。

 しかも地方の田舎にも跡地に神殿作ったり、人を雇わないといけない。


 王都から遥か東、ジャンセン辺境伯の領土区域で、鉱山村より更に奥には雷の神の神殿跡があった。

 そう、彼方から初めてスィーテニアに転送して降り立った場所だ。


 う〜ん。ダサーンって精霊なのよね?でも話を聞くと星の誕生にも関わったような事を言っていたし、普通の精霊とは違うとか言ってたけど、実はまさか雷の神様だったとかじゃないよねえ?


(…そうですな。そこは違うとも、そうだとも言えませんな。今の私めは神の一部と言えば、分かりやすいでしょうか?一部を切り取って神とは別の自覚を持たせた為、持っている情報も感情も別です。)



 ほうほう。

 へ〜。別の人格ね。神の一部を取って作られたのなら、つまり神の子供みたいなものね。


 でも、まぁ、その辺りはあまり深く考えないようにした。だってそこまでこの世界の神の仕組みに深く関わってしまうのも怖い気がする。ただでさえ、色々あり過ぎて消化不良を起こしているのに、これ以上は無理。神様関係はヤバイ。


 うん。関わりを拒否します。

 せっかくシルバニアにアルフのご先祖様を丸投げ出来たんだから。


 魔族の対策についてとか、あたしの先祖関係とか、精霊関係レベルで解ればそれ以上の神様関係情報は無理して得る事は不要ない気がする。


 何となくだけどダサーンの話だと、神様達が襲撃を観戦してたって話だし、次に何やらされるか判らない。冗談じゃない。あたしが望んでいるのは刺激のある毎日じゃない。平和な日常を望んでいるの。神様達の暇つぶしにされたら、たまったもんじゃない!


 ギリシャ神話に出てくる神の子のヘラクレスみたいに無理難題ふっかけてくる神様みたいに、色々やらされたくない。あたしの先祖はあくまで人間と神との橋渡し、情報を伝える係だったはず。

 それ以上望まれても困るし、お断りします。毒にも薬にもなるらしいからね。


 祝福を与えてくれるのなら、あたしの望みを叶えて平静に暮らさせて欲しい。


 ほら、触らぬ神に祟りなしって言うじゃない?



 東南にはダンビラスさんの領土があって、その港に近い場所に火の神様を祀っていた神殿跡地かあるらしい。ここは今は跡地がそのまま晒された状態。手入れもしていないから、一から作るしかない。


 でも、この領土は港町があり他国との貿易も盛んで、其処でもお魚が獲れるらしい。虹色鱗の〝バラドォン〟っていうリュウグウノツカイみたいな大きな魚が時々獲れるんだけど、彼方の世界の本鮪みたいに脂がのっていて、すごく美味しいらしい。ちょっと唆られる。王都にシールド張って魔族問題終わった後か、国自体にシールド張らなくちゃ駄目なら、行かなくちゃいけないかもしれない。うん。行かないとね。王都だけ守ろれば良いわけじゃいもんね。うんうん。けっして食べ物に釣られたわけじゃいんだからね。


 その他の情報はよく分らなくて、スィーテニア全土の神殿跡地を探すなら、各領土の領主から話を聞かなくちゃいけない。それに王国とはいっても王都と違って、勝手に行ってちゃっちゃと作って良いわけではないので。各領主の了解を取らないと余計な反感を買うしその領土によって、法律も違っているらしいので。彼方世界で言えば、アメリカの州法律みたいなものよね。


 場所が確定した後は其々の法律に照らし合わせて建てる必要があるらしい。高さに制限がある領土や、材質にも制限のかかる領土があるので、細かい事を聞かなくちゃいけない。


 領主も知らない神殿跡地もあるので、最初はクロに頼んで神様に場所を聞こうかと思ったけど、クロは立場が下なので口を挟めないという。


 寧ろ、呆れられた。神様に対しては便利に使うものじゃない。本来、精霊に対しての扱いもおかしいと言われた。



 え〜!!今更?



 国全土の問題となると、王族、領主、貴族院長、魔導士会長、宰相等による一般貴族には参加出来ない、領主会議が必要らしい。



 とにかく、まずは王都からだね。あたしは王宮に戻ると、明日の作業に向けて計画書を作成した。

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