第36話 討伐任務終了……だよね?
キャンピング・カーで野営地に戻ると、まだ皆は戻ってなかった。髪が長過ぎたので、ポニーテールにした。あたしはアルフを手伝って、バレンハーブのサラダと卵焼きを作った。炭水化物が欲しかったので、レッドホーンの骨で出汁をとり、鬼玉ねぎとクルネの卵を入れたスープに小麦ですいとんを作った。寒いから、温かい食べ物欲しいもんね。
アルフはすっかり、ご機嫌になって、食事をじゃんじゃか作っているよ。春音のお祝いだからね、だって。(何の?)ミートパイにチョコレートケーキ。ってか、結局、キッチンセット出すんかい。クルネの唐揚げ、味見させてくれた。美味しい〜。久しぶりの食べ物!!いつの間に唐揚げマスターしてたの?あたしが前に作った、カレー味もある。大人数だから、直ぐなくなりそう。
バイクで戻ったミトレスがあたしに抱きついた。泣かせちゃった。ごめん。皆を心配させたね。
コラコラ、ミトレス!オッパイ触るんじゃない!!アミダラさんが自分のと、見比べている。身長がミトレスと同じくらいになって、嬉しい。
ギークも大量に手に入ったので、夕食はギークで何か作ろう。
マグノリア隊長が
「お帰りお嬢ちゃん。殿下に早速、愛されちゃったみたいだねぇ〜。」と、揶揄われた。やっぱり鋭い。
シルバニア、ジョージ、オーレン、グレン、高坂達が帰ってきて、髪の毛触られたり、ナイスバディ!スゲ〜と褒められたり、最後はアルフがあたしを引っ張って、触るんじゃないと
皆でワイワイ食べたご飯は温かくて、とても美味しかった。
アミダラさんの部隊のリリーアンが髪を三つ編みやら、クルリンパやらして、可愛くまとめてくれた。本当は将来、髪を触る仕事がしたいらしい。女の子がいつまでも、近衛兵隊にはいられないもん。結婚して、子供もいっぱい欲しいし。アミダラ隊長の所みたいな感じじゃなくて、優男が好みなの。性格がよかったら、第3隊のミシェルとか良いよね。フフフッ。と笑った。
野営地の片付けを手伝っている時に、アミダラさんの第2隊女子メンバーが来て、もっとお話ししたかった。と言われたので、お茶会に誘ってみた。
「あたし達、ニーナ以外は貴族では無いんですが、いいんですか?」アナスタシアさんに聞かれた。
「あたしも男爵家令嬢として育てられた訳じゃないので、全然大丈夫ですよ。むしろ大歓迎です。」
わぁい。女子会楽しみ♩
今回の討伐。怖い事もあり、楽しい事もあったけど……。
……なんていうか。
男だらけだったので、こう、ムサイ。オーレンなんか食事中、暑いとか言って、上半身脱いだりするし。こんな寒い季節に!
半袖半ズボンの小学生か!
他にも、男同士の結束とか、あるじゃない?入っていけない時って、そんな時はミトレスが居て良かったなと思った。
やっぱり高校もお嬢様学校だったせいか、話合わなくて、心から打ち解けるような友達はいなかったし、女子同士の会話にも飢えてた。だから、楽しみが増えて、嬉しいな。
そんなすっかり討伐を終えて、学祭イベント後の気分のあたしはアレ?そういえばと思い出した。
「アルフ!忘れていたけど、サチェはどうなったの?見かけないけど。」
あんなに自分の子供のように、可愛いがってたのに。親が迎えにでも来た?
するとアルフはヤサグレた顔になって、応えた。
「…知ってた?実はアイツ俺たちよりずっと上、37歳なんだって。森の精霊に聞いたんだ。エルフ族は若く見えるとはいえ、サチェの種族は特に成長が遅いらしい。でも、生きてきた経験があるから、あんな子供っぽい話し方する奴はいないらしい。つまり、あらは演技!」
なぬ?オッサーン!?
「まぁ、森の精霊がサチェの村まで連れて行ったよ。人間には探せないような、里の出身らしくて。僕達では無理だろうって。」
ため息ついて、なんか寂しそうだよ。あんなに可愛いのに詐欺だって。そして、あたしをジッとみた。ん?何?
…まだ見ている。
やだ、顔が赤くなって、落ち着かなくなってきた。
「…何?なんか付いてる?」
……真面目な顔だ。
「忘れているかもしれないから、敢えて言うけど、王宮に戻ったらすぐに式を挙げるからね。」
おうっと、そうでした。
「……でも、大丈夫かな?点数とか、優勝は無理かもしれないし、そんなに大物討伐してないし、ごめんね。あたし途中参加出来なくなって、最後になんかドラゴンみたいなの倒せたら、良かったんだけど。」そう言うと、アルフは頭を抱えてまた、ため息をついた。
「…あのねぇ。山ナマズってかなりレアなんだよ?そして、ゴブリンの集団の群、レアな赤帽子付。デアウルフの群も点数加算されるし、水の魔族にレッドホーンの群にギークの群、イエローエルク、そして一番レアなのは鉄枷ジャックの討伐!それと森の精霊を救い、魔族の仕掛けを解き、今後起こるべく災いを未然に防いだ事。点数的には、何の問題ないよね。ドラゴンて、一体春音は何処を目指しているんだろうね。」
慌てて、シルバニアがあたしに追加説明した。
「討伐ルールから、ポイントを確認してください。例えば、ゴブリンから取れた魔石は小で42個なので、126点。群なのでプラス10点。中が5個なので30点。赤帽子ゴブリンが特殊魔石なので50点、山ナマズがレア魔石で100点はいくだろうね。イエローエルクが中魔石で6点、ギークが小魔石34個で102点、群でプラス10点。
デアウルフが37匹で中魔石で222点、群で10点プラス。レッドホーンが中魔石で33匹で198点。群で10点水の魔族がレア魔石で100点、足枷ジャックが特レア魔石で150点はいくかもしれない。後は森の精霊を助けた事、森の正常化は近隣の町や村の為になるから、点数付くと思われます。我が第1隊だけで、合計したら1000点は超えていくでしょうね。」
安心したあたしは、やり残した事をやった。
王都に戻る前に第1隊だけで、ケルピーの森に行き、あたしはシルバニアと一緒に聖なる光魔法で、森の浄化をした。
墨のような植物は枯れ、木々の緑が本来の色に変わった。
そして、エアブーメランで数十本の木を切り、下にも太陽の光が入るようにした。ケルピーの森は全体的に光が入り、これなら動物も植物も昆虫も戻るだろう。アルフと話し合い、これからは定期的に木を伐採して、バニシルビアの途中まで管理する機関を作る事にした。
そして、丸太はある程度の長さに均等に切り、空間倉庫に入れた。
そろそろ王都に帰ろう。
アルフがあたしの手を引いて、ちょい豪華な馬車に乗せた。幌馬車じゃないんだ。オーレン、ジョージは馬に乗り、馬車の前後に守るように配置。マグノリア隊長とシルバニアとアルフ、あたしで馬車に乗り、ミトレスと高坂が御者のように、馬を操る。
王都ブーケッティアに入ると、門番が敬礼をした。
そして、他の門番がトランペットのような楽器を鳴らした。
町の人々が一斉にワァッと歓声が上がり、走る馬車に向かい手を振ったり、手を叩いたりしている。
すぐに王立騎士隊が迎えに来て、王宮まで先導された。王宮の騎士広場には、王都ギルドやシャンタナギルドの隊員達や先に戻った第2隊の人達が居て、賑わっていた。思い思いの顔を見ると、そこには達成感や高揚感で、皆明るい顔が見えた。
あたし達もその輪に混ざり、お互いの労を労いあった。
いや〜〜!!本当に今回、大変だったよね。
シャンタナギルドの隊員達は南のピクシーの森でアン・シーリー・コート(黒エルフ)に誑かされ、何度も出たり入ったりして、時間を取られて大変だったと言っていた。最後には王都ギルドのエルフや獣人族と協力し合って、討伐が成功したらしい。
モフモフな猫人が居て、気になった。さ、触りたいっっ。でも、彼は年上なので、我慢した。鉄枷ジャックの話をしたら、驚いて根掘り葉掘り聞かれた。
そんな賑わいの中、ダンビラス軍部大臣の大きな声が響き渡る。
「王立討伐隊、王都ギルド、シャンタナギルド他、今回の王都周辺の魔物討伐の協力をしてくれた者たちよ!!よくぞ、無事に戻って来てくれた。そして、其々多くの成果を上げた事であろう。また経験より、多くの事を学んだであろう。結果を早く知りたいであろうが、明日、昼の刻より此度の討伐における各討伐隊の点数発表、並びに授賞式を執り行う。
本日はまずはゆっくり休み、英気を養ってくれ。」
そして、皆に対し敬礼をし、
「英雄達に精霊の幸あれ!!」
と叫んだ。
オオオーーッ!!!と歓声があがる。討伐隊万歳〜!!互いに抱き合ったり、肩を叩き合う。
ジョージが高坂の頭をパシンと叩いたり、オーレンに抱きつかれていた。あたしもマグノリアさんに頭くしゃくしゃにされたり、ミトレスと抱き合ったり、マチルダさんに盾にサインをしてくれと、強請られたりした。王立ギルドの冒険者達に握手を求められて、握手したら、他の人にも求められ列が出来てきた所で、アルフが救出に来た。
全く油断も隙もない。アルフがブツブツ言ってる。
所が、シルバニアが渋い顔でアルフに近付き、耳元で囁いた。
「殿下、大変です。第3隊が戻りません。連絡も無く、其々の親族に確認した所、そちらにも連絡がありません。」
「マズイな。何か起きたか?」
え、、。
第3隊って、貴族だらけの使えないって言ってた人達よね。
アルフは目を瞑り、腕輪から何か読み取ろうとしている。検索魔法をかけているらしい。
暫くすると、目を開け
「何故そんな方向に?」
と言ったと思ったら、地図を取り出した。どうやら、第3隊の隊長が居るらしいのはウラヌス渓谷の北。
「え?北東の方角?でも、東は今回の討伐対象外だよね。」
険しい顔のアルフ。
「……はぁ…。忌々しい。捨て起きたい。取り敢えず、ダンビラスと女王に相談しよう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます