第22話 悪意の匂いの舞踏会

「そう言えば。アルフが向こうの監視をしている時って、あたしの親に合わなかったの?」


 舞踏会用のドレスの為に、コルセットを付けてもらいながら、アルフに聞いた。あ、メガエラは今、ミトレスの所に派遣して、色々お肌やってあげてる。


「うん。会ったことは無いな。僕と接触してたのバレたら、大変でしょ。隠密おんみつ魔法使っていても、危険は犯させられないよ。


 それに、君の両親の組織は軍部大臣であるマグノリアの父、ダンビラス・シンバル・トロワが上司だからね。


彼は女王の直下の部隊。


 僕は女王からの命を受け監視に行って、その魔族の情報を女王へ報告した。そして女王からダンビラスへ情報が伝わり、ダンビラスから君の両親へ命令を下したって事だと思うよ。」



「今回の婚約のお披露目に出席しちゃってても大丈夫だったの?」



「ああ、認識阻害の魔道具を使っていたんだろうね。僕も君の両親の顔はうまく思い出せ無くなっているから。長年側にいた、春音以外には有効だと思うよ。」



 椅子に座らされ、ガーターベルトで白の網タイツを履かせられた。そして、化粧水をコットンに含ませて、パタパタつけられた。

美容液やクリームを塗った後、あたしをジッと見ている。



「なあに?」



 ん?肌の調子悪い?



「……いや、ヤバいよ。……春音のその姿。物凄くエロいね。」



 真赤な顔のアルフが、椅子に座っているあたしの腰を掴むと、グイッと自分の膝にまたがせた。そして下着の横から、いきなり、、。




「…え、、ちょっ、時間が、あ、あ〜ん。もう。」




 ……食われた。





「…ごめん。あまりに可愛くて、エロくて、今夜まで、待てなかったよ。」



膝を抱え、アルフはキュ〜ンと子犬のように、縮こまっている。



 あたしは再びシャワーして、下着も変えなくちゃいけなくなって。自分で着替える!と宣言し、アルフに反省させている所。



「…しかも、匂いが凄くて……精霊の祝福を受けてから、魔力が強くなっていないかい?」



 え?

 それはあるかも。。。


 それってヤバい?



「……危険だ!今日は僕以外と、絶対踊らせない!!こんな匂い嗅いじゃったら、野獣達にさらわれちゃうよ。」



野獣はアルフじゃん!



なので、番犬のように、今日のアルフは一時も側を離れなかった。


 トイレの中までついてこようとするし、そこはミトレスが付き合ってくれた。




「殿下ヤバイですね。春音様に声をかけようとする奴、嚙み殺しそうですよ?」



 ミトレスが可笑しいのを我慢して、涙目になっていた。鏡で、メイクを直している。



「もう、笑い事じゃないんだから、アルフって極端過ぎちゃって。」



「カイトも極端だしね。」



というミトレスに、そう言えばと思い、聞いてみた。



「……で?高坂と付き合っているの?良い感じ?」



化粧直ししながら、さりげなくね。


 途端に乙女の顔のミトレス。

…え、と、その。



「実は!殿下が春音様に婚約指輪を渡して、その夜飲みに誘って慰めているうちに………頂きました。」



いや、その、可愛くなっちゃって。。モゴモゴ。


 おおお!!あの日にそんな事が!

しかし、頂きましたって…。



「ミトレス、最近、凄く綺麗になったもんね。良かった。応援するよ。」



「それは春音様もです。殿下も幸せそうで……嬉しいです。」



 ウフフ。ガールズトーク楽しい。

 なんか良いな、こういうの。



 あたし達は手を洗い、外に出ようとすると、金の髪を複雑に結って、髪から、ドレスからダイヤを散りばめた、いかにも高級そうな姿の上級貴族女性が足を壁に上げて、貴族らしくなく、通せんぼした。



「……たかが、男爵風情の娘が身の程もわきまえず、いつまで殿下の側に居るつもりなのかしら?」



 はぁ!?

……なんかムカついた。



 女が見えてない風に、強引に通ろうとしたら、触れてもいないのに、ワザと女が倒れた。



「んまあ、乱暴ね!殿下今の見まして?この女!あたくしを今つき飛ばしましたのよ。」



 思わず



「うわぁ、臭い!!」



とつい言ってしまった。本当に臭くて!悪臭がした!これかアルフが言っていた、の匂い。



「…確かに演技も臭い。」



ミトレスが氷のように睨んだ。



 アルフが駆け寄ってあたしの腰を抱いて引き寄せた。そして、絡んだ女を睨み付けた。



「失せよ!」



と一言。


 背後から漂う、尋常じゃない臭さの匂いに。あたしもアルフもクラックラした。



「な!?凄いだろ?」



 やさぐれた顔のアルフは、あたしに冷たい飲み物を差し出した。


 ミトレスはその匂いがわからない。今解っている所だと、あたしとアルフと女王とダンビラスさんにウォレット殿下やジャンセン辺境伯、アルフの部下のシルバニアという者だけらしい。


魔力の有る無しだけでは無いらしい。


この日も女王はにこやか、朗らかだった。


そして、いよいよ。あたしとアルフのファーストステップ。


あたしはアルフしか見てない。

アルフしか見えなかった。海のような青い瞳が眩しそうに、微笑む。周りの女性達が息を呑むのが、わかった。こんなに美しい男性は見た事ない。アルフの匂いを嗅ぐと心が落ち着いた。



さぁ、最初はナチュラルスピンターンからリバースターンへ。う、いきなり頭にガツンと悪意の塊をぶつけられた。



でも、ドワーフのネックレスがフッと温かくなった。今跳ね返したのね。



「アルフ、今、誰かが、呪いをかけようとしているよ。」



何事もないという風に踊りながら、あたしとアルフはあたし達に睨みつける視線を感じた。



「あれはマリーヌ・マンドリン侯爵令嬢だ。」



さっきトイレの前で、嫌がらせした人ね。



「一緒にいるのが、兄のアンドロレス・マンドリン子爵。マンドリン家の次男。こちらは僕の亡くなった三番目の姉の元婚約者だ。僕の寝室に臭い娘をよこして、追放された叔父の爵位を継いで、子爵におさまったやつだ。」



アルフは眉間に皺をよせた。



「忌々しい一族だよ。」



と言った。



「アルフ!優雅に、ニッコリしないと!喝采浴びれないよ。」



女王とのあたし達が結婚する為の約束。アルフはホワッと笑って



「だって、昨日、認めるって言ってくれたから、大丈夫だよ。」



「それは女王とあたし達だけの事。あの条件は民衆を納得させろという、意味でもあると思うよ。仲良く優雅に踊れとね。」



はい、シャッセ。リバースターンからホイスクと。よし、なんとかなったかな?ここで、他の人達もダンスに加わる。


所が、なんと、今回は女王がダンビラスさんと踊った。優雅で美しく迫力があり、あたし達結構、頑張ったんだけど、美味しい所、ぜ〜〜〜んぶ持っていかれちゃったわ。

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