第21話 ええ?何故こんな場所に!

 確かに、ここは動物臭いようなかなり、キツイ場所だった。

 これではアルフが吐きそうなのも、わかりやした。


 晩餐会はあたしが何者か、ヒソヒソとした噂話と好奇な目と頭がクラクラするような、悪意の目に襲われた。

 お茶会や執事さん、王宮の方々に事前に教えてもらって、良かったよ。


 早速、呪いの魔法をかけてくる人が居て、ドワーフのアクセサリーがそれらを全て跳ね返した。

 ただ、やってきたなっていうのは分かった。


 突然、具合悪くなったどこぞのご息女や権力を持ちたがっていた貴族達が席を立った。



 人を呪わば穴二つ。



 彼方あちらの世界でも、そんな言葉があるからね。アルフも苦手な奴らだったみたいで、険しい顔をしていた。もう、仕掛けてきたのかと呆れてたよ。


 それでも勇者はいるよう。



「あなたってどこの生まれなのかしら?田舎の肥溜こえだめの匂いがするわ。」



 と言われた。この子はパメラ・グレーメン伯爵令嬢。


 お!お!キタキタ〜!!ってなって、早速、教わった方法、試してみる事した。



「田舎の肥溜めの匂いがいたしますの?」



 って、頭をグルリと周りに向け、隣りの大臣に聞いてみたら…。



 !!!



 マグノリアさんのお父様のダンビラス子爵でした…。び、びびったぁ!!だって、マグノリアさんより、大きくて顔中傷跡があって、でもとってもイケメン。何かホワァ〜と良い香りが漂ってくる。エレガンスで大人の魅力満載なマグノリアさんパパ♡



「いいえ!気高く、芳しい女神のような香りです。」



 と手の甲に口付けされちゃった!ヒャア〜♡


 あたしに嫌味を言ったご息女さえ、ダンビラスさんの大人の色香にやられてしまい、思わず二人で手に手を取って、イケメン談義に華を咲かせてしまったよ。


 勿論、アルフも最上級のイケメンだけど、大人の魅力っ半ぱないって、語り合ってしまった。メガエラと話合いそうな、、同士の予感。やはりあたしの勘は間違っていない。マグノリアパパと合いそうなのが、実はウォレットパパなんだそうな。体を壊される前は、歩くと草さえ残らないって、言われた程のモテっぷりだったそうな。


 調子にのって、アルフとウォレットという禁断のペアは?という所で、アルフに見つかり、ゲンコツでグリグリやられた。


 女王はというと、氷の表情は何処へいったのやらで、もう始終ニコニコで、余計怯える人多数ですわ。それって、何かやましい事あるんじゃないのう?


 今の内に謝っとけよ!!


 そして、いよいよ佳境って時に、マグノリアパパのダンビラス子爵によって、アルフとあたしの婚約発表が行われました。パチパチパチパチ!乾杯のシャンパンが美味しかったなぁとか、ホワホワと幸せな空気に包まれた。アルフに肩を抱かれ、おデコにチュッとされ、無事に今日のお仕事終わったなとかまどろんでいたら、女王に手を引かれ、あちらを見よと言われた。



 ………な、な、何と、見た事ある顔が二つ。見事なシルクのブルーのドレスに身を包むのはあたしの……ママン!!?



 あたしは走り出し、抱きついた。

 ああ、後ろにパパンも居たよ。



 何処へ行ってたの?何故連絡してくれなかったの?……っていうか、何でここにいるの?!



 ママンはあたしの頭を撫でて



「ごめんなさいね。春音。私達は仕事でこちらに戻っていたの。あなたも既に知ってしまったのね。そう、私達はこちらの世界の人間なのよ。」



 両親達は実は敵国を探る、隠密の部隊の者であった。敵の組織に近付いて仲間になったふりしたり、時には商人のフリ、時には工場に勤めるパートの奥さんのフリ等して、色々探っていたらしい。


 缶詰工場は実はこちらの世界の〝ラナージュ〟という隠密部隊組織のもので、魔法石を使った魔道具…彼方あちらの世界で言うスパイグッズ製作や部隊の仲間の隠れ家になっているのだとか。時々報告にこちらの世界に来るのは、責任者であるママンの役目。


 向こうの世界に沢山の魔族や、敵国の人間が渡って行った跡を見つけ、探っていたらしい。あたしの魔力が不安定なので、外に出ないよう、抑えつけていたらしいんだけど、かえって危険な事になっていたのを話した。あたしを狙ったのはやはり魔族で、かつてこの国を裏切った奴らと手を組んで、今もこの国を落とすのを虎視眈々と狙っているんだとか。


 ママンは精霊に愛された妖精の王族であるトーサ・デ・ダナンの子孫だけどあたし程の魔力は授からなかった。


 その為、どんなに危険な状況か解っていなかったらしい。パパンは彼方の世界と此方の世界の人間のハーフ。変身魔法や炎の魔法、隠密魔法が得意。一応、二人とも男爵家の人間。ちなみに藤島はパパンの父上の苗字らしい。


 こちらの世界ではちゃんとダナンを名乗っている。「デ」は王族の身分を表すので、秘密の名として、一般に判るようには入れていなかった。


 もうバレちゃったけど、ママ達の仕事柄このまま入れないでいるらしい。


 アルフの「ベル」が直系王族の意味のように、普段はトーサの子孫は伏せている。ただの精霊に縁ある妖精族の子孫てだけ。


 そして、あたしを助けたアルフを抱きしめ、何度も感謝の言葉を述べた。パパン。息子よ!とかいってペタペタしないで!!ママンなんて、赤い顔でアルフの胸に顔を埋めて、クンカクンカしているし、やめて!本当に恥ずかしい……。


 そして、あたしはママン達にこの世界で、アルフと一緒に生きて行くことを伝えた。


 こちらの世界に来た時はまた顔を見にくると約束してくれた。ただ、仕事柄、結婚式の出席は任務次第らしい。



 そして、ではまたねと言って、突然シュッと消えた。


 ………忍者か!!

 あ、でも、そんな存在だったのか。



 そんな、濃ゆい晩餐会はやっと終わった。

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