第64話一条家からの輿入れ
1537年5月『大隅国・清水国分城』種子島右近衛権少将時堯・9歳
父上様は、土佐一条家からの輿入れが遅れるように工作して下さった、だがそれは上手く行かなかった。一条本家・土佐一条家ともに、九条家に対抗しようと輿入れを急いだのだ。実質一条家から種子島家に送る人質だが、別に人質など不要な俺にしたら輿入れなど急ぐ必要も無いのだ。だが両一条家、は父上様の話に耳を傾ける事無く輿入れを急いできた。
土佐一条家には、種子島家が定期航路として土佐沖太平洋航路を活用している事で、莫大な湊使用料と交易の利益がある。土佐一条家としたら、土佐沖太平洋航路は増便して欲しい、大内家の瀬戸内海山陽行路が増便され、土佐沖太平洋航路が減便されることは絶対有ってはならないのだ。まして三好家と九条家が手を組み、瀬戸内海伊予讃岐航路が新設されるなど悪夢以外の何者でもないのだ。
そこで種子島家内で娘の於富姫が権力を維持できるように、土佐一条家1万6000貫の領地の内2000貫を化粧料とし、しかも於富姫付きの家老として化粧領地を治めていた加久見左衛門と大岐能登守政直を種子島家に送り込んで来た。
「加久見左衛門・大岐能登守、両名はこれより種子島家の家臣となるが、種子島家ではよほどのことがない限り国衆の直轄領を認めていない、その事は一条権大納言卿から聞いておるか?」
「「はい、お聞きしております」」
「それゆえ両名はもちろん陪臣の皆も、それぞれの武勇に応じて扶持を支給するがそれでよいか?」
「「それは覚悟しております」」
「「しかしながら、家臣一同元の領地以上の扶持が頂ける武勇があると自負しております」」
加久見左衛門は生真面目で忠誠心溢れる表情で答えて来た。確かに輿入れの際に家臣と共に見せた演武は素晴らしかった。あれが実戦でも行えるなら、総計3000貫文の扶持を与えても十分元が取れる。さっそく武術指南役の家臣に一条家から来た主従の実力を判定させよう。
俺は一条於富姫付きの家老と話を終えた後、富姫に会いに行った。姫には乳母や沢山の侍女がついてきていたが、彼女たちの動向には注意を払わなければならない。彼女達には、男の付家老や家臣以上にスパイとしての役割があるだろうし、毒などを飲まされてはかなわない、まあ毒などは簡単に中和することが出来るのだが。
「於富姫、愉しい遊び道具があるのだが、やってみられるか?」
「まあ! どのような遊び道具なのですか?」
俺は姫の輿入れが決まってからおもちゃの準備を始めた。女の子が喜びそうな物はもちろん、男の子が好きであろうおもちゃも作っていたが。首・腰・肩・肘・手首・膝・足首も動くこの時代では画期的な着せ替え人形を最初に渡してみた。
「このように人と同じように動く着せ替え人形だよ」
「まあ! すごいです! ありがとうございます!」
「まだまだあるよ、これはねお手玉だけど、こうすると面白いよ」
俺は小豆を詰めたお手玉12個をジャグリングのように扱って於富姫を愉しませてあげた。
一条於富(10歳)・一条房家殿の娘で一旦大内義隆の養女
種子島亜矢・種子島恵時養女で更に一条房通の養女
九条於藤・九条稙通妹
加久見左衛門・土佐国幡多郡加久見城主(三崎城)
大岐能登守政直・土佐国幡多郡大岐城主
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