第61話奴隷解放のための生産部門

1537年4月『多禰国・種子島城』種子島右近衛権少将時堯・9歳


「大隅掾工場長、生産量はどうだ?」


「士筒級火縄銃は月産200丁を維持しております」


「惜しみなく鉄砲を使う為に必要な火薬の生産はどうだ?」


「5000丁の士筒級鉄砲を100会戦使っても大丈夫な備蓄がございます」


「海軍や陸軍が大砲を使えばあっという間に在庫が足らなくなったりしないか?」


「そちらは別枠で100会戦分備蓄しております」


「流石だな!」


「まだまだ人数が必要でございます、若殿は何の心配もなされる必要は御座いません、理想を目指して多くの奴隷を買い取られてください。我々家臣一同が奴隷たちを有効に使いこなし、いずれは平民に解放して見せます!」


「大隅掾工場長! 頼んだぞ!」


 さて種子島家では比較的高値の相場で奴隷を買い集めていた。それは日本から多くの奴隷が南蛮人に売り払われていたのを防ぐ為だった。俺は武器や珍品を手に入れる為に、日本人が奴隷として異国に売り払われるのが許せなかった!


 一時的には種子島家の奴隷とするしかないが、必ず将来は解放して平民にする事を心の中で誓って買い集めていた。高値での奴隷購入は、琉球・明国・蝦夷地・東南アジア諸国などからも大量の奴隷が持ち込まれることになった。当初は労働力と技術者の確保から、積極的に外国からも奴隷購入を進めていたから、今更海外に売られる日本人奴隷だけを購入したいとは言い難い状況だった。だが買い集めた膨大な奴隷を有効活用しなければ、種子島家が倒れてしまって夢が崩れ去ってしまう。


 そこで老弱な男や女は、家内制手工業やベルトコンベヤー方式を導入した、種子島家の強さの源泉となる生産部門に配備し、技術を習得させる事にした。例えば鉄砲の製作を、最初から最後までを1人の人間がやるとすれば膨大な作業を覚えなければいけないが、バネ・銃身・トリガーなどに分けて人を配置した。


 習得が難しかったり生産に時間が掛かる部門には多目の人員を配置し、比較的簡単で短時間で生産が出来る部門には少なめ目に人員を配備した。黒鍬部隊(戦闘工兵)が使うシャベルやスコップに関しては、鍛冶師を大量に雇うと共に、木地師と呼ばれる木工職人も雇ったが、それぞれに大量の弟子を付けて学ばせた。


 日用鉄器鍛冶などの、比較技術練度の低い野鍛冶に大量の弟子を送り基礎を学ばせ、そこで必要人数以上の初級鍛冶師を育成してから、適正のある者を鉄砲鍛冶や刀鍛冶の見習い職人として送り込むと言う方法も取った。


 もちろん最初から、雑用係兼弟子として鉄砲鍛冶や刀鍛冶に付けている人間も多いが、余り多くの人間を弟子に付けてしまうと、教える為に時間をとられて生産量が減る事もあるし、技術習得の時間が長く掛かる事もありえるから。


 鉄砲工場・硝石生産工場・新式連発鉄砲組み立て工場・雷管式弾薬工場など各工場を見て回った俺は、次に海軍艦艇の建造所に向かう事にした。


定岡大隅掾守弘・種子島家生産部門家老・総工場長

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