第55話4度目の栄達
1537年3月『日向国・土々呂城』種子島左近衛将監時堯・9歳
「父上様ご無事のお帰りおめでとうございます。更に先触れの話ではご出世なされたとのこと、まことにおめでとうございます」
「うむ、ありがとう右近衛権少将、少将も吾の留守に筑後国・肥前国・壱岐国の国衆を降伏臣従させたのだな、まことに天晴である!」
「お褒めに預かり恐悦至極でございます、全ては父上様から受け継いだ血脈と教わった武芸の賜物でございます。ところで私の事を右近衛権少将と呼ばれるという事は、父上様だけではなく私も官職が上がったと言う事ですか?」
「うむうむ、さすが吾の嫡男だ! 吾の血脈を受け継いだそなたのことを誇りに思うぞ。それにそなたの申す通り、そなたは正五位下に叙せられた上で右近衛権少将に任じられた」
「有り難き事でございます、全ては父上様のお陰で御座います」
「馬鹿な事を言うな、全てそなたの力の賜物なのは分かっている」
去年と同じように父上様と互いを褒め合って、離れていた間のことを報告し合った。父上様は去年と同じ献金と、去年以上の献納をされたがさすがに官位が進む事はなかった。だが多禰国・大隅国・薩摩国の国司兼守護に加えて左近衛権少将に任じられた上に、日向国・肥後国の国司兼守護にも任じられた。その上に嫡男の俺にも配慮されたようで、多禰国・大隅国・薩摩国・日向国・肥後国の介兼守護代に任じられた上に、正五位下・右近衛権少将の官職を賜った。
「そんな事はありません! いつも申しておりますが、私には人と交わることが無性に嫌になる時がございます、そのような時に父上様の優しいお助けがなければとてもとてもやって行けません」
「わかっておるよ、確かに少将にはそのようなところはある、だが今回はそうとばかりも言っておれんぞ」
「禅定太閤殿下のことでございますね?」
「うむ、今は下総守が相手をしておるが、ぜひとも少将に会いたいと申されておられる」
「面倒でございますが、会わないわけには行きませんね」
「ああ、少将が空を飛ぶという噂は京にまで鳴り響いている。まあ一条卿の目の前で披露したのだから、伝わらないはずはないのだが、禅定太閤殿下は特に興味を持たれたようだ」
「禅定太閤殿下の情報は手に入っているのですか?」
「うむ、下総守を中心に少将が育て上げた忍びが集めてくれた、さっそく話を聞くか?」
「はい、禅定太閤殿下にお会いする前に全ての情報を知っておかなければ、思わぬ不覚と取ってしまうかもしれません」
「そうだな、公卿の方々は武力を持たない分、交渉術がしたたかだからな」
俺と父上様は、京に同行した忍びを呼び出来る限りの情報を聞いたが、特に有効だったのは河原者出身の忍びの情報だった。どうやら京や大和の寺社や公卿は、屋敷の中の下賤な仕事や不幸ごとは、自分たちに穢れが及ばないように河原者たちにさせていたようで、あらゆる秘密を河原者たちは知っているようだった。
「種子島左近衛権少将恵時」・正三位
多禰国・大隅国・薩摩国・日向国・肥後国司兼守護
「種子島右近衛権少将時堯」正五位下
多禰国・大隅国・薩摩国・日向国・肥後国の介兼守護代
「肥後下総守時典」
種子島家家老職
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