第81話ダム開発
「男爵閣下、絶好の候補地を見つけました!」
「そうかよくやってくれた、それで場所はどこになる?」
俺がドローンで撮影し繋ぎ合わせた、サートウ領及び未開の地の写真図に候補地を示すように合図すると、ビーバー族の獣人は3ヵ所の谷川を指示(さししめ)した。
「この3ヵ所でございます」
「ダムを作った場合に水没するのはどれくらいの広さになる?」
「この一帯が水没いたします」
ビーバー族のリーダーが、指を使って写真図の上に範囲を指し示す。
「ツェツィーリア、今報告を受けている鉱山に影響は出そうか?」
「いえ、幸いにして1番近い鉱山でも水没地区からは離れております。しかしながら念のため、ダム工事に入る前にモグラ族に再確認させましょう」
「御待ち下さいツェツィーリア騎士団長様、無駄になる事になっても、直ぐにダム工事を始めさせて頂けませんか」
「それでは、万が一鉱山が発見された場合、工事途中でダムを放棄してもらう事になり、無駄働きに成るがそれでも構わないのか?」
「構いません! 男爵閣下の御厚情の御蔭で安全な家屋敷を賜り、離散していたビーバー族が再び1つ所に村を築く事が出来るようになりました。その御恩に報いる為でしたら、ダムの1つや2つ放棄するなど何ほどのことでもありません」
「そうか、そう言ってくれるのなら、1日でも早いダム完成は男爵領の利益になるから直ぐに始めてくれ」
「はい、そうさせていただきます」
「イグナーツ、期待しているぞ」
「勿体無いお言葉、恐悦至極でございます!」
俺が各地から集めた獣人族の中には、里をモンスターや人間に滅ぼされ、一族が離散した種族や部族が多くいた。その中の1種族にダム建設が出来るビーバー族がいた事は僥倖(ぎょうこう)と言えた。彼らの力を借りて、砦や鉱山開発に悪影響が出ない範囲でダム建設を実行してもらう事にした。
ダムを建設することが出来れば、飲料水だけでなく農業用水も安定して確保する事が出来る上に、地下道農場計画で使用料が増大するであろう電気も、必要量を安定して確保することが可能になる。おまけではあるが、ダムを利用した養魚場を創り出せるかもしれないのだ。
そして出来れば使いたくはないが、普通では勝てないような大軍に攻め込まれた場合に、ダムを決壊させて水攻めを実施することも可能だ。ローゼンミュラー領など、下流の場所は極端に狭い領域しかない所が多い。貯水量にもよるだろうが、3ヵ所のダムがあれば万余の軍勢を全滅させる事が出来る水攻めを、3度続けて実施する事も可能だろう。
龍子姉さんを通して、日本のダム専門家・軍事専門家に相談して、最善の図面を書いてもらおう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます