第68話コボルト軍団

「サートウ卿、コボルトだ! しかも武装を整え一直線に砦に向かってる」


「ツェツィーリア、急ぎ第1砦に撤退しろ!」


 ドローンを追加購入し、獣人家事奴隷(メイド)隊にも操作方法を教え、魔境と奥山の境界線を確定すべく動いていた。満月期に入り、魔獣や魔族が活発に活動する夜は、病をおしてカール殿がドローンで境界線を見張ってくれていたのだ。


 幸か不幸か、ローゼンミュラー館でカール殿がビアンカと交代した直後に魔境から魔族が攻め込んで来た!


 先月は100ほどのオークが攻め込んで来たが、ドローン魔法攻撃と人狼姉妹の漸減撤退(ざんげんてったい)の連携で、砦に誘導するまでに半数にオークを減らし全滅させた。


 だが今度のコボルトの数は多すぎた、何と言っても数え切れないくらいの兵力なのだ!


「心配するな、過去の経験ではコボルトが万の軍勢で攻めて来た事はない。多くても千を少し超える程度が限界だ、だから我らなら恐れることは何もない!」


「そうですね、我々は何度も貴族の大軍を撃退してきましたよね」


「ローゼンミュラー家の従士隊にも動員をかける、だがその分報酬は高いぞ?」


「分かっています、ですが大切な家臣や領民の命には代えれません」


「ならば堂々と稼がせてもらおう、ついでに新兵たちの実力を見せてもらおうではないか」


 カール殿の言葉を受けて、看護役に側に控えていたメイドの1人が急いでローゼンミュラー館へ伝令に走った。カール殿付きのメイドは、日常生活の御世話だけでなく警護や伝令としても働かなければならない。


 カール殿と画面を通してそんな遣り取りをしながらも、俺はドローンを使って魔法を駆使し、コボルトに攻撃を繰り返していた。最前線から撤退するツェツィーリアたちを無事に砦に帰すのが、今俺が1番優先すべき事だ。


 その上でコボルトの侵攻速度を遅らせ、砦の防衛準備を少しでも整えなければならない。何よりタツコ村・第2砦にコボルトを行かせないこと、そのためにもドローンでコボルトを誘導しなければならない!


「グォー!」


 しまった!


 タツコ村と第2砦の方向に向かったコボルトを迎撃するのに集中し、ツェツィーリアたちへの支援が遅れてしまった。人狼姉妹は上手く連携を取り、コボルトを一撃で殺しては撤退しているが、人熊族のグレーテルは連携に失敗して敵中に取り残されている!


 グレーテルの周りに張りついているドローンは2機、睡魔陣首飾り・防御力上昇指輪・防御力低下陣指輪・麻痺陣の首飾りを装備させている。グレーテルなら身体能力が高く、少々の攻撃を受けても即死する事はないし、圧倒的な攻撃力でコボルト程度なら一撃で叩き殺せるだろう。


 まずは防御力上昇指輪を使ってグレーテルの防御力を上昇させて、次はグレーテルを取り囲んでいるコボルトよりも、応援に来るコボルトを睡魔陣首飾りと麻痺陣の首飾りで足止めすべきだろう。グレーテルなら7頭程度のコボルトなら独力で斃せると信じている、信じてはいるが保険は掛けておくべきだろう!


「ギーゼラ、グレーテルの援護に向かってくれ!」

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