第52話スカウト
「さて、条件なのだが、通常1日銀貨1枚に銅貨3枚が傭兵の相場だが、最初は従兵として銀貨2枚を日当として与える。働きぶりによっては騎士に叙勲した上で、1日銀貨5枚を与える条件でどうだ?」
「それはローゼンミュラー家でもサートウ家でも同じ条件ですか?」
「基本同じだが、サートウ家では1日3度の食事が無料で支給されるが、ローゼンミュラー家では自分で払ってもらう」
「それは大きいですね、でも何故(なぜ)そこまで待遇が違うのですか?」
「それについては、サートウ家の当主・イチロウ様に直接御話して頂こう」
「サートウ卿がこちらに来ておられるのですか?!」
「いや、覚悟しておいてもらいたいのだが、サートウ卿は魔道具を創り出す事のできる大魔導師様なのだ!」
「「「「「なっ?!」」」」」
5人全員が驚愕(きょうがく)で言葉を失っているようだ。
「なるほど、それほどの御方と縁を結ばれたから、あれほどの交易品をローゼンミュラー家が手に入れる事ができたのですね」
「そう言う話だ、だから会うと言っても魔道具を通して話をすることになる」
「他言無用と言う事ですね、話せば殺すと言う事ですか?」
「そう言う事になるが、5人にはローゼンミュラー家・サートウ家のどちらに仕えることになっても、奥地の本領を護る近衛の兵となってもらう。だからよそ者に話をしようとしても話しようがないのだ」
「わかりました、ではその魔道具とやらをお見せください」
べアトリクスが彼女たちから見えないように置いていたノートパソコンを机の上に置き、画面を彼女たちの方に向けた。
「「「「「なっ?!」」」」」
またも彼女たちは言葉を失うほど驚(おどろ)いている。まあ当然だろう、聞いた話では、この世界の秘法中の秘法である遠話の魔道具は、大きな大きな水晶球を使って言葉を送るだけの物で、彼女たちも水晶球を想像したいのだろう。
それが机の上に置かれたのは、想像もしていなかった四角い箱であり、その中に俺の姿があるのだから腰が抜けるほど驚いて当然かもしれない。
「初めて御目にかかる、私がバッハ聖教皇家に仕える騎士イチロウ・サートウだ」
「御初に御目にかかります、ハナセダンジョンで冒険者をしていたツェツィーリアと申します」
「同じくシャルロッテと申します」
「同じくクレメンティーネと申します」
「同じくコルドゥラと申します」
「同じくダニエラと申します」
「5人が変化する所は見させてもらった、その力をサートウ家に仕えて発揮(はっき)してもらいたいのだが、仕官に当たって希望する事はあるか?」
「では遠慮なく申し上げさせて頂きます」
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