第21話養鶏

 魔物の力が最も低下する新月期が近づき、ローゼンミュラー家では領民を動員して竹を狩り集めた。姉ちゃんがアーデルハイトたちに、近大が研究している薩摩芋(さつまいも)の空中栽培動画を見せたことで、人魔どちらと戦う事になっても、砦で籠城しても自給自足が可能になると理解したようだった。


 もちろん本当に理解したのはバルバラで、アーデルハイトが理解したとは思えない。下の2人の妹が賢いかどうかは分からない、ろくに会話もできない俺に、2人の本質を理解することは無理だ。だがバルバラが理解すれば、それで作業が素早(すばや)く動いた。バルバラが的確な指示を出して作業するので、俺が無理してビアンカを通じて指示出さなくてすむ。


「おにいちゃん、これなあに?」


「これはね、卵から鶏を孵(かえ)すための魔道具だよ」


「このたまごは、たべちゃだめなの?」


「食べたいの?」


「うん! たまごおいしくてだいすき! でもなかなかとれないの」


「後で食べてもいい卵を取り寄せるから、これは食べちゃ駄目だよ。これが上手く孵(かえ)ったら、毎日卵を沢山食べれるようになるからね」


「ほんとう? じゃあがまんする!」


「いい子だね、御褒美(ごほうび)に食べてもいい卵を直ぐに送ってもらうよ」


「ほんとう? たのしみ!」


 そこで俺が始めた事は、有精卵と孵卵器(ふらんき)をドローン配達してもらい、異世界で養鶏を始めることだった。アーデルハイトたちがダンジョン都市に出かけた後で、注文していた荷物が館の前に届いた。転卵機能つきの孵卵器で、2200g以下の商品を選んで購入した。


 孵化に成功した場合に備え保温器も購入したが、巣箱自体は領民に作ってもらった。肝心の有精卵については、食用ではなく孵化用と養鶏場に連絡を入れた上で、食用の2倍の値段で24個を手に入れた。温め初めて21日で孵化すると教えてもらったが、今から孵化が楽しみだ。だがその前に、ビアンカの為に無精卵を購入しよう。


鶏卵24個用孵卵器:1900g

鶏卵24個用転卵器: 600g×1=3万6720円セット

20匹用育雛保温器: 750g×1=  8370円

24個有精卵   :          2592円

10kg(160個)無精卵:      3300円


 無精卵に関しては、登山道を登った先にある廃村へのドローン輸送を頼んだため、2kgを5回に分けて輸送してもらう事になった。冷暗所に保管すれば、冷蔵庫など無くても1カ月は食べることが出来るが、大好きな卵は1日10個でも20個でも食べることが出来る。


 そしてビアンカには、砂糖をたっぷり入れた御菓子のような卵焼きと、味塩を振った半熟の目玉焼き、半熟に加減して煮たゆで卵を作ってあげた。

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