第113話 生きるは死・死は生きる

学園祭当日。


霊子にとっては、殺人の舞台。


霊子は、もう人外の心を持ち、殺人を快楽に生きている。


いつも見ない、学校を永らく眺めた。


何かに気づいたようだった。


霊子の顔に雫が落ちた。


雨だ。


死んだ魂と、これからの死に対して、弔うように雨が強まった。


霊子は天を見上げ、微笑んだ。


空に光が走った。


ゴゴゴと巨大な轟音が鳴り響いた。


雷が鳴った。


霊子には、雷の意味が分かった。


この世界の仕組みに。


「最後の記憶を…そして………」


玄関の扉が自動で開いた。


「ふふふ…やっぱり」


いつものように黒い靴を脱ぎ、白い靴を履いた。


教室に向かう途中、職員室を見て足を止めたが、直ぐに教室に向かった。


教室に入ると、クラス全員の視線が霊子に集められた。


すると、里奈が恐る恐る声をかけた。


「霊子…あ…あれ!」


霊子は里奈の指す方向に、顔を向けた。


すると、人体模型のように皮が剥がされ、血だらけの人が2人いた。


天井に吊るされて。


黒板には、木村友希君と白川正木君の人体模型を授業で使うので、理科室の中に運んで置いて下さい。


と真っ赤な血で書かれていた。


霊子は小さな声で呟いた。


「向こうは向こうで、復讐してるわけか。」


里奈は聞き取れず聞き返した。


「なんか言った?」


霊子は微笑みながら言った。


「うーん…何でもない。」


里奈は、この状況で笑顔を向けた霊子に、寒気がした。


でも、記憶喪失の霊子は、気持ちに整理がついてないだけかも知れない。


里奈は気持ちを押し殺した。


霊子はみんなに言った。


「逃げないの?」


公平が涙目で言った。


「教室から出たら殺されると思うと怖くて逃げられないんだ…う…うっう」


まぁ私は殺す側だけどね。


波は皆に言う。


「みんな聞いて、確かに今は危ない状況だけど、みんなで一緒に逃げたら、流石に向うもこの人数に迂闊に手が出せないんじゃない?」


章は言いづらそうに言った。


「でも、先生は理科室に来いって」


波は激高した。


「あんた馬鹿?…殺されに行くようなもんでしょ?」


章はビクっと、体を震わせた。


霊子がみんなに明るい感じで言った。


「じゃあ、行こっか!」


霊子を先頭に、回りをキョロキョロしながら、玄関まで歩いた。


すると、霊子を押し退け、潤が扉に手をかけるも開かない。


「おい…開かねぇぞ。」


潤は必死に体を使い、力の限り引くもビクともしない。

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