第103話 あの日の始まり

霊子の威圧感と、言葉に圧倒され、体は硬直し動かない。


霊子は話を続けた。


「あの先生は拓己や小平を殺したかも知れない先生だよ?…しかも、他にいなくなった生徒はどうしたの?犯人は先生かもってみんな言っているよ?」


春香と美雪は頷いた。


恐怖から何度も。


霊子には、恐怖に怯えた姿は愛くるしかった。


「次の所へ行きましょう。」


美雪はおどろおどろ聞いた。


「つ、次って?」


霊子はクスっと笑って言った。


「音楽室なら、誰かいるかも知れないですから」


2人は直感した。


この殺人に、霊子も携わっているのではないかと。


霊子の歩く後ろ姿が、身を隠すようには見えなかった。


むしろ、獲物を探し回ってるようにさえ思えた。


音楽室に着くと、霊子は躊躇いもなくドアを開けた。


中には人影もなく、真っ暗。


「誰もいないですね、暫くここにいましょう。」


春香と美雪は目線を送りあった。


「そうだね、ここなら他よりは安全だね。」


霊子はピアノの席に座った。


美雪はなるべく、ドアから離れた。


霊子の頭にズキンと痛みが走った。


「痛い…痛い。」


春香は霊子に駆け寄った。


「記憶が、私の記憶…あぁぁぁぁぁ」


今までの中で、1番強烈な痛みだった。


映像が頭の中に流れた。


正木と友希が死んだ為、霊子に記憶が返って来た。


白別世天高等学校。


学園祭前日。


流れた映像の中に、霊子はいなかった。


学校の屋上で里奈、瑠璃、京子、波、春香、美雪の6人で話している。


春香が話していた。


「零子ってさぁ、美人だからって全部自分の思い通りになると思ってない?」


京子は言った。


「確かに、あいつ男好きだよね。」


瑠璃が怒りを露わにして言った。


「私なんてさぁ、彼氏に零子が好きになったからもう付き合えないとか言われて、ぶっ殺してやりてぇ」


美雪が唐突に言った。


「そう言えば知ってる?零子って吉沢先生に告白されたらしいよ。」


里奈が即座に反応した。


「え!本当?それ」


「うん。見た人もいたらしい、まぁ、あんな年上に告白されても嬉しかないけど」


里奈は同様していた。


「じゃあ、私戻るね。」


手を振る一同。


「うん。」


里奈は、即座に吉沢先生の所に向かった。


理科室にドアを叩きつけるように開き、入って行った。


吉沢先生は、呑気に科学の実験をしている。


「健、霊子に告白したってどうゆう事?」


慌てる風もなく、面倒くさそうに答えた。

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