第96話 あの日の始まり

「わかった。」


また人が死ぬ、そんな予感がした。


それでも、頷くしかなかった。


知れば、誰かは助かるかも知れない。


正木は、みんなにまるで、戦争を仕掛ける指揮官のようだった。


「良く聞いて、今から言う事の意味を混乱しないで聞いて欲しい。」


すると亮が、仏頂面で言った。


「そんな前置きは良いから、早く言ってくれない?」


正木は、少し顔を引きつりながら頷いた。


「俺と友希…里奈…京子…波…瑠璃…そして、霊子で吉沢先生の机にある写真を見たんだ。」


すると、公平が不思議そうに首を傾げ質問した。


「何の写真?」


京介も続くように言った。


「写真くらい普通だろ?」


正木は少し沈黙の後口を開いた。


「霊子が来てから俺達、集合写真なんか撮ってなかったよな?」


クラスメート達は、意味がわからない、そんな顔をしていた。


京介は口を尖らせ言った。


「撮ってねーよ。それがどうかしたのか?」


正木は青ざめた顔で言った。


「あったんだよ。集合写真が!」


怠そうに言った。


「はぁ、だから集…」


言葉を遮るように、正木はみんなに語りかけた。


「霊子と俺達の集合写真が、しかも裏には1800年と書かれてて、今から200年前の写真って事になる。」


京介はあまりの事に、目を見開いた。


「うそだろ?まじ…なのか?…今その写真どこにあるんだよ。」


「吉沢先生の、机の上に!」


ガタンと席を立ち、勢い良く教室を飛び出そうとする京介に、体を張ってドアから行かせないようにしがみつく正木。


「俺が確かめて来る。どけぇ」


必死に押さえつけ、説得を試みた。


「まて、今行ったら吉沢先生に見つかるぞ!」


京介は眉を寄せ、怒り気味で言った。


「あんな先公、返り討ちにしてやる。」


「相手は殺人犯かも知れないんだぞ?…それに、学園祭準備と偽って、先生が帰ってからみんなで確認しよう。」


正木から目線をそらし、小さく頷いた。


「わかったから離せ!」


「おぉ。」


話は纏まり、放課後を迎え闇に包まれ森林に囲まれた学校。


だが、この時闇に紛れ、殺人を犯す人は吉沢先生だけではなかった。


記憶のピースは次第に集まりつつあり、霊子を本当の狂気に変える記憶は、この最悪の放課後にあった。


午後6時。


正木が職員玄関を見て、吉沢先生が帰宅を確認。


教室のドアをガラっと開けた。


「帰ったぞ!」


里奈は呆れた顔をした。


「馬鹿でしょ?そんな大きい声出して」

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