第75話 復讐の冷血

吉沢先生は、今日一日、居なくなった生徒の説明すらない。


皆は風邪で休んでるくらいの認識で、今日も変わらない日常だった。


放課後、以外は。


里奈は何か思い詰めた表情だった。


それでも里奈は、霊子にはいつも通り変わらず接して、一緒に体育館に向かった。


体育館に着くなり、辺りを見回し何かを警戒していた。


恐らく、吉沢先生だろう。


里奈の頭の中では、犯人は別の人という思考は微塵もないようだ。


里奈は不安な気持ちを、霊子には全て漏らした。


「ねぇ、私達は殺されるのかなぁ?瑠璃の言ってる事も一理あるけど…やっぱり巻き込めないよ。」



霊子には全てが茶番だった。


全ての記憶はない。


けれど、今までの記憶から推測すると、クラスみんなで私を追い込んだ。


そして、私は記憶を失った。


なんとなく、事故ではなく殺されかけた気がする。


だって、私はみんなの死を望んでる。


今日もまた1人友達が出来る。


本当の友達が!


誰にしようかな?。


霊子は説明するように述べた。


「殺されないですよ!みんなで生き残りましょう。」


曇っていた顔に、笑顔が戻った。


悲しい笑顔ではなく本当の笑顔が。


「霊子は強いね!記憶も無くて不安なのに」


霊子は複雑な気持ちで応えた。


「里奈が、友達でいてくれるからですよ。」


里奈は嬉しそうに霊子を抱き寄せた。


「私達、ずっと友達だからね。」


この何とも言えない、気持ちはなんだろう?。


里奈への仲間意識?


それとも罪悪感?


まだ、迷っているのかもしれない。


「はい。なんと言ったら良いか分かりませんが、友達とはどう言う事なんでしょう。私の気持ちは、一緒に居て楽しい存在です。」


里奈は霊子の頬に手を当て、自分の目に合わせるよう見つめた。


「それもあってるよ。友達って言葉だけじゃないよ、悲しい時、楽しい時も、みんな分かち合う事が友達なんだよ。」


冷静な顔で疑問を投げた。


「つまり、どう言う事でしょう?」


里奈はクスっと笑った。


「簡単に言うと、同じ思いをするって事、私が笑えば霊子も笑うの、それが友達」


霊子は初めて心から笑顔が出た。


気持ちを共有する事が友達。


じゃあ、意識のない私は、みんな友達だから殺したんだ。


じゃあ、悲しむ必要何てない。


クラスはみんな友達だもん。


一緒に苦しもう。


私の痛み、みんなで分かち合う為に。


赤い血を交えて。

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