第72話 復讐の冷血

室内に、悲鳴のような奇声が響く。


「何故、駄目なんだ?…………」


何かを閃き、口元が釣り上がる。


「そうか、そうか…死体も平凡な物じゃあ駄目なのか!より美しく、気高く、完璧な素材…それこそが不老不死たる儀式に必要なのか!」


誰もいない部屋で、誰かに語りかけるよう声を発した。


「ある女性は不老不死の為に、若く美しい血を浴びたという話もあるしな…まぁ、慌てる事はない。時間も、いい素材も、まだあるしな……アハハハハハハハハ」


映像が途切れた。


「今の記憶、いつの記憶?」


顔の左半分を抑え、考え込む。


「私、何か事故で記憶喪失なんじゃないの?吉沢先生は人を殺してたって事?…不老不死に成功したから、あの写真があったって事?…でも私達も一緒に写ってた・・・何で?取り敢えず、この血で書かれた文字を消さないと」


使われてない教室のロッカーから、バケツと雑巾を取り出し、水を汲み、血塗られた壁を擦り拭き取った。


「私が殺したのかなぁ?記憶がない時の私なのかな?」


1人呟きながら学園祭準備を忘れ、そのまま暗い闇に包まれる様に帰って行った。


次の日、この学校に来てから初めて雨が降った。


まるで自分の汚れた血を、洗い流すように。


自分を救えなかった神が、せめて罪だけでも綺麗に洗い流す、贖罪の雨に感じた。


私は暫く、この雨に打たれた。


自分を綺麗にしたくて。


自分の記憶を取り戻すのが、怖くなった。


雨は私の体を、くまなく冷やした。


それと同時に、心は温かく感じた。


温かく感じるのは、私が人を殺した事があるからかもしれない。


やっぱり、あれは私なんだろう。


私はどこまで、人を殺すんだろう。


31人いたクラスメートはもう26人。


私が5人も?。


怖い。


突如自分の中から、鼓動が熱くなった。


自然と口が開いた。


虚ろな意識の中。


「殺すのは後27人だ。」


今喋ったのが、自分じゃないと、疑いたくなる程太い声だった。


意識ははっきりしなかったけど、自分が声をあげた感覚は残っている。


やはり、私だった。


でも、私は何故、クラスの人を殺すんだろう。


それ程の、憎悪があるんだろうか?。


知りたい。


また胸が熱くなった。


「知りたいなら、残りを殺せ!「 」


胸の鼓動が収まった。


記憶を知るには、クラスメートを殺さなきゃならない。


里奈や瑠璃も全部。

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