第52話 復讐の冷血

第1の殺人があってから、丁度1ヶ月だった。


あの時の記憶、はない。


うる覚えな記憶が、途切れた最後の映像は、理枝を突き飛ばした所で途切れている。


事件があった次の日、登校するなりすぐさま事故現場に行くも、遺体も血も事件を指し示す者は、何一つなかった。


だが1つだけ思い出したのは、最初の記憶に流れた記憶に繋がる、もう一つの記憶。


彩によってクラスで、虐めが始まると言う物だった。


何故記憶が戻ったのか、霊子は知らない。


彩の死によって記憶が返って来た事を、まだ知らない。


唯一思い出した記憶は、全て虐められた記憶だけ。


霊子はクラスで馴染めるようになり、友達も増えた。


今では里奈や瑠璃と並ぶ程の友達。


両手を重ね合わせ、祈るように声をかけて来る少女。


「霊子様、今日も美しいです。」


クスと口に手を添え、小さく笑い答える。


「人見だって綺麗ですよ。」


目を輝かせ、子供のようにはしゃぐ。


彼女の名前は朝比奈人見。


学校での存在感は、あまりない。


全体的に顔立ちはいい方だが、自分に自信がなく、人前で話すのは苦手な為、孤立していた所、霊子に話かけられ話すようになった。


人見は霊子が転校して来た日から、ずっと見ていた。


美しく清らかで、上品な上に孤立していた人見にも、話かけた事が何より嬉しかった。


何より、始めて認めてくれた人、いや神。


人見からすれば、霊子は全てを持っていた。


霊子の言葉は、神の啓示に近かった。


もし仮に霊子が殺人命令を出せば、迷わず実行するだろう。

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