6.王子様は突然に

──御伽噺の王子様。


 勇敢で、誠実で、優しくて、決して負けないひと。

 お姫様を助け、お姫様と結ばれるひと。


 私は、王子様をずっと探してた。

 だって、私は囚われのお姫様だから。

 王子様の助けが必要な、か弱い女の子なのだから。


 でも、王子様は現れないの。

 どんな人も、恐ろしい獣からは逃れられなかった。

 だから、私は手を合わせた。


 早く、早く、私を助けて王子様。


 そうして祈っていたらね、とうとう貴方を見つけたの。


 獣の悪しき牙に殺されそうだったか弱い民草を救い、幾人かの騎士を伴って現れた貴方。

 その騎士達に任せるだけではなく、自らも先陣を切って獣を殺した貴方。

 フードを被っていたけれど、金色に輝く剣は持っていなかったけれど、白い燕尾服を身に纏っていなかったけれど、間違いなく私の王子様だ。そう確信した。


 運命って素敵ね。

 急にそこに現れて、そして気付いたら巡り会うのだもの。

 一目見ただけで、胸はドキドキしている。貴方を思うだけで、頬は赤くなる。


 ああ、早く。早く会いたいわ、貴方に。待ちきれないの。


 それか、シンデレラみたいに私から王子様の下へ出向いても良いかしら。

 そうしないと、いつまで経っても私達、愛し合えないわ。


 用意された脚本シナリオとは少し異なってしまうけれど。


 いいわよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る