人の姿でありながらも、バケモノと化し、絶望した剣士は願う。
自らの人生の終わりを、死を──だが、彼は出会ってしまう。
美しい少女の姿でありながら、彼に等しいバケモノとして生まれ、人々から疎まれ、恐怖された魔女と。
魔女は彼に問う。従者となって、新たな人生を手に入れないか、と。
こうして、主とその従者となった二人は、人としての人生を取り戻すため、過酷な戦いの運命に立ち向かう。
そこにあるのは、絶望的な力をもった巨大な怪物との死闘。
剣術の達人同士による、技巧を尽くす剣戟による激闘の紙一重。
そして、彼らの背負った宿命は、世界の運命を巡る陰謀に行き着いてしまうが──。
圧倒的な筆力によって描かれる、超正統派ダークファンタジーです。
最後まで読んだあと、こんなん無料で読んでいいのか? と、真顔になりました。
とにかくあらゆる要素が面白かった。
戦闘シーンの迫力 そんなん当たり前のようにすごい。
異能バトル的な要素はあまりなく、リアリティに寄った剣技と機転、戦術で、巨大な怪物と血みどろで立ち回ったりするわけですが。
これくらいシンプルなバトル要素だけで長尺で戦闘シーンを描くと、飽きがきたりするものですが、そういうのが一切ない。
キャラクターの立ち回り一つひとつに、意味を持たせ、その一つひとつが、起・承・転・結としてメリハリを持って描かれるから、バトルだけでも面白い。
でも面白いのはバトルだけじゃない。
人物が織りなす人間ドラマ これも当たり前のように濃い。
剣士の凄惨すぎる過去や、魔女の背負った過酷な宿命が明らかになるにつれて、
剣士にどっぷり感情移入してしまうし、魔女を宿命から守ってあげたくなる。
そしてもちろん、ダークファンタジーで重要な、ハードな世界観もガッツリ描かれる。
わりとどうしようもなく、詰んでる世界です。
でもその詰み状況をどうにかしようとすると、さらにやっばい災厄が巻き起こる。
そんな世界をどうするべきか、何が正義で、何が悪か、そもそも、そんな善悪の定義に意味があるのか、っていうような、勧善懲悪ではくくれない陰謀に巻き込まれていっちゃうんですね。
最初から最後まで、どこを切っても面白い。
あらすじでピンと来たものがある方は、絶対読まなきゃ損なやつです。
穏やかな日常、愛する者との日常を大切に想っている事が伝わる一話。
不穏な文章で区切りがされて、物語は外界と隔絶した隠れ里の日常へと場面が切り変わっていく。
過去の絶望を脳裏にちらつきながらも、今ある幸せを守り抜こうとする男の心境が、これから訪れる絶望の深さを知らしめるようだった。
作り込まれた世界観。どこかほのぼのとした日常を描く物語は異なる、どこまでも現実に即したダークファンタジー。
一人一人のキャラクターの全てに命が吹き込まれていて、作者が深い愛情を注いでいる事がよく分かる個性。
センスある言葉選びと、状況に合わせて場面を切り替える文章力の上手さは、まるでドラマか劇場を見ているような心境にさせる。
愛する者の死をきっかけに、とうとう男は理解した。己から全てを奪い去った【神】とやらは、どこまで行っても自分の敵なのだと。
良かろう、ならば憎悪と激情に身を焦がすまで。
この身体に入れられた呪われた血と共に、貴様らの全てを燃やし尽くそうと。
愛剣たる十字剣(クレイモア)を天に掲げる男の姿は、まさしく復讐の剣士。
【神】に、宗教に人生を狂わされ、運命までも翻弄された男の復讐の物語。
とても硬派なダークファンタジー作品でした。所々に伏線が散りばめられていて、敵である正教会や魔女の謎。
主人公であるスクートの身に宿る【黒血】と同様の血を持つドラゴン。
ワクワクすると同時にゾクゾクします。
これから、彼がどんな復讐の物語を歩むのか。
書籍化も狙えるだろう完成度です。誤字脱字が無いのも好感が持てます。
ベルセルクに似た重めのストーリーが展開されていますが、そういったリアルさを求める読者の方に、この作品はおすすめですね。
★★★は固いです。