第53話食事会への招待


 冬休みは、新年のお祝いと学校の宿題を熟すことで終わった。新学期には魅了の魔法に対抗する魔法の石ができあがっているはずだ。


 新学期が始まって、ベックウィズ先生に錬金装具教科室呼び出された。ジョシュア王子やマーゴ、シベル、クラレンスも呼び出されていた。いつものメンバーが集まる。


「石が出来た。魅了の魔法の対抗と言ったら、定番のルーンを刻んである」


 ベックウィズ先生は、人差し指の先ほどの宝石をジョシュア王子に渡した。宝石の中にルーン文字が浮かんでいる。


「このぐらいの大きさなら、アクセサリー加工すれば簡単に身につけられるな」


 ジョシュアが、魔法の石を手の中で転がす。確かに、女性用のアクセサリーだったら、ピアスでもよさそうな大きさだ。


「エディット・フィッツウィリアムはどうしてるの?」


「相変わらず、ホールドン嬢の側にべったりしてるわ。ホールドン嬢は、殿下と熱い仲なのと言っておきながら、フィッツウィリアム様と一緒なので、殿下との仲は虚言なのでは?と噂もでてきたわ」


「べったり……」


 女の私から見て、アリエル・ホールドンはそんなに魅力のある人物に見えないのだけれど、男性にはたまらない魅力でもあるのだろうか。全部が魔法の力だとは思えない。


「加工は一日もあればできるから、あさってにでも渡すとしよう」




●○●○


 エディット・フィッツウィリアムには、防御効果のある石を使ったネックレスということで、ジョシュアが下賜をしたらしい。あまり一緒に行動をしていない印象があったが、あれでも一応、王子の身辺を気にして警護しているので、そのお礼という名目で贈呈したとジョシュアが言っていた。


 エディットが魔法の石を身につけてから一週間がたったが、あまり効果がでているとは思えない。効果がでるのは、一ヶ月という見積もりだったのだから、まだ目に見えて効果はでてないのだろう。


 私は、今、例のお茶会部屋でパスタを茹でている。セモリナ粉がこの世界に見当たらなかったので、小麦粉で作った麺なので、パスタじゃなくてうどんかも知れない。


 マーゴがこの間の揚げ物女子会をクラレンスに伝え、クラレンスがジョシュアに話したことで、食事会を開催することになってしまったのだ。人数が多いし、男性がいるとなると食事量が増えるから、しっかりとお腹にたまるメニューに変更した。


 内装もこの間とは変えて、カウンターのキッチンとテーブルと組み合わせている。カウンターにできあがった料理を乗せて、誰かに取りに来て貰うようにしている。


 すでにテーブルには、クラッカーとチーズ、オリーブの実で作ったピンチョスを置いてある。パスタが茹で上がる前に、盛り付ける前まで作ったサラダ用の野菜を、サラダボウルに色よく盛り付けて、手作りのドレッシングをかける。今日は、オリーブオイルと、塩、マスタード、レモン果汁でつくったドレッシングだ。

オーブンには、今日のメインである鶏肉のローズマリー焼きが入っていて、肉の焼ける良い匂いがしている。パスタが茹で上がったみたいなので、笊にあげてオリーブオイルをまぶす。


 ドアベルが鳴る音がして、ジョシュアとクラレンスがやってきた。夕食っていうことだから、この二人ちょっとだけオシャレしてきたみたい。ローブ姿じゃない。


「いらっしゃい。席に座って」


「招待ありがとう」


 ジョシュアが私の左手を取って指先に軽く唇を触れさせる。こういう行為が、さらっとできるのがジョシュアなのだ。

 続いて、クラレンスも同じように軽く唇を触れさせる。


 私は、茹でたパスタを大きな器に空ける。フライパンで作っておいたトマトソースをその上にかけて混ぜる。人数多いときのパスタは、こうやって作った方ができたてをみんなで食べられる。


 マーゴとシベルもやってきた。軽く挨拶をして席に座って貰った。


 トマトソースパスタをテーブルに運ぶ。ピンチョス、サラダ、トマトパスタが並んでいる。飲み物は、レモンを蜂蜜で漬けたものを炭酸水で割ったやつを瓶に入れて置いてある。

 食べながらメイン料理が出来上がるのを待てばいいのだ。


「ジュリアって料理上手って知らなかったな。どれも美味しそう」


 ジョシュア王子が優しく私に向かって微笑んだ。

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