中の人

久しぶりに飲み友達が、家に遊びに来た。


「この話とは全く関係ないんだけどさ、俺の実家に昔から何体もマネキンがあって。マネキン集めが、親父の趣味なんだけど」


「マネキン?」


「うん、マネキン。ちなみに俺のお気に入りは、左足のないマネキンガールなんだけど……。今度、見る?」


「いや、そんなもん見るかよ。ってか、急に怖いな。えっ、何それ」


「うん。子供の頃は、そのマネキンだらけの状況がすげぇ怖かったんだけどさ、今はなんだか慣れてきて。しかも最近は、左足がないのが可哀想になってきたから………。ネットとかで探してるんだ」


「マネキンの足を? 大丈夫か、お前」


「でもどうしても良いモノが見つからないんだよ。仕方ないから俺の足をあげようとしたんだけどさ、人形が嫌だって言うから」



俺は、台所からノコギリを持ってきた。



「っ!?」


「だからさ、お前の左足をくれよ」


「バっ、ま、ま、待て!!」



…………………………………。


…………………。


…………。




「な~んちゃってぇ」


「おい………笑えないぞ、それ。はぁ~怖かった。お前さぁ、演技の才能あるかもな。目が、かなりヤバかった」


「そう? やったぁー! 大成功。あっ…………。もう、そろそろ彼女が来るからさ。お前、帰れよ」


「急になんだ、それ。相変わらず酷いな、お前。友達無くすぞ。ってか、お前いつから彼女いたんだよ」


「最近、出来た。じゃあ、また。妹さんに宜しく~」


「は? 俺に妹なんていねぇぞ。誰と勘違いしてんだよ。…………まぁ、いいや。じゃあな、変態マネキン野郎」


「うん。また」



友達が帰ったのをカーテンの隙間から確認後。俺は、浴室にいる彼女に声をかけた。


大量の睡眠薬で今もスヤスヤ夢の中。



「アイツがさ、この細い足が好きだって言うから。ごめん。悪いけどその左足をもらうわ」



俺の背後に立つ大好きなマネキンガール。


『お兄ちゃん……元気そうだったね』


「うん。アイツさぁ、すっかり忘れてるよな」





【自分が、元マネキンだったこと】



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