第76話 カラスの子④

白くて大きな施設を出た。初めて、土の上を裸足で歩く。チクチクした。




甘い花の香り……。虫の声………。眩しい太陽。手が届かない青空。




私を待っていたかのように、外の世界はこんな私を受け入れてくれた。まだ鼻の奥に残っているパパやその他の血の臭い。私は深呼吸して、過去と一緒にそれらを全て吐き出した。




「………………」




あの女の人にも見せてあげたかった。この景色を。


私が殺してしまったから、もう叶わない。




「ごめんなさい」




道の真ん中に黒い車が停まっていて、白髪の男が私を手招きしている。


「お嬢ちゃん。君が、あの有名な生物兵器かい? 世界を滅ぼす悪魔の子」


「アナタは、悪い人?」


「そうだよ。僕はね、あの施設から抜け出した君を戦争の道具として利用するために来たんだ」




パパ………私ね。今、やっと分かったよ。




「ようこそ地獄へ」






私が一番の悪者なんだってーーーーー





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る