第73話 カラスの子①
静かな部屋。
私以外に誰もいない。天井から、声がする。パパの声だ。
「何か欲しい物ある?」
「…………」
「そう……。何かあったら、パパに教えてね」
「はい」
「じゃあ、次の悪者退治もお願いね」
「はい」
ビーーーーーッッ!!!!
目の前のドアが、開いた。少しだけ外が、見えた。私が知らない外の世界。
産まれてから、ずっと私はここにいる。この白い部屋にいる。部屋の外は危険だから、絶対に出ちゃダメだとパパに言われている。
いつものように私の部屋に悪者が入ってきた。
私は、悪者が嫌い。
パパが、悪者が嫌いだから。
私が彼らを退治しないと、世界はもっとダメになってしまうとパパが前に言っていた。
この悪者は、私を見ると
「あなたを倒せば、ここから出られる。あなたを殺せば……」
「?」
意味が、分からない。でもこの悪者も前の悪者と同じことを言っていた。
私は、少しだけ。この悪者と話をすることにした。
「ここから出て、どうするの?」
「そんなの決まっているじゃない!! 家族のとこに帰るの。あなたにもいるでしょ? 家族が。心配してくれるパパやママが」
カゾク?
ママはいないけど、私にはパパがいる。まだ一度も会ったことがないパパ。いつも声だけ。
パパは、家族?
分からない。
「ごめんなさい。あなたには、悪いけど。私は、私は………。もう帰りたいの!!」
悪者は、いつものように首に大きな注射を突き刺した。中の緑色した液体を流し込む。
十秒もしないうちに悪者の体が、だんだんと大きくなる。
「だがら………死んデ……」
私を襲おうと向かってきた。鋭い歯。爪。尖った耳。
「やっぱり……。悪者は、み~んな一緒」
私を傷つけようとする。仲良く出来ない。
ピギュッ……。
私は、思い切り悪者の顔面を殴った。すると悪者の頭から、ブリュッと脳ミソが飛び出て、目玉や良く分からない血の塊が、部屋に散らばった。
あ~ぁ。また、部屋が汚れちゃった。
「良くやった。さすが、パパの娘だ」
「ねぇ、パパ……。パパは、私の家族?」
「あぁ……」
パパ……。なんで嘘をつくの。
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