第65話 夢物語②

今夜は、どんな夢が見れるかなぁ。


夢の中で、僕は目を覚ました。変な話なんだけど。


家には、誰もいなかった。パパもママも。僕は裸足のまま、パジャマ姿で外に出た。外は、真っ暗。


ほっぺをつねってみる。

痛くない。やっぱり、まだ夢の中だ。


「っ!?」


突然、大きな音が全身に響いた。大地が震える。夜空を見上げて、驚いた。黒い空を巨大な船が、優雅に突き進んでいた。


「あれは、Q型宇宙船だよ。遠い遠い宇宙から地球にやって来たんだ」



隣には、いつの間にか相棒のロボットがいた。


「じゃあ、あの船には宇宙人が乗っているの?」


「うん」


「すごいっ!! 本当に宇宙人っているんだね」


僕は、宇宙船が見えなくなるまで空を見続けた。


「でもあの船の宇宙人からしたら、マモル君も立派な宇宙人なんだけどね。まぁ、向こうはあまり人間が好きじゃないみたいだけど……」


突然、目の前が明るくなって炎の柱が何本もできた。そこらじゅうで火事が発生。燃える家。さっきの宇宙船が、静かに戻ってきた。船から青白い光を出して、今も僕たちを攻撃している。


「マモル君。僕から離れちゃダメだよ。死んじゃうからね」


僕は、怖くて怖くて。ロボットの体にギュッと抱きついた。僕だけの相棒。


こうやって、くっついてるだけで……安心できる。


燃える町。僕が住んでる町が、名もない敵に攻撃されている。どんなにヒドイことをされても何も出来ない。


ホントに最悪だよ。この世界は。


でも……僕には君がいる。それだけで僕は、こうやって目をそらさず悪夢を見れる。


「終わったの?」


「うん。もうこの辺には、人間は一人もいないからね」


「僕たちは、助かったんだ……」


「うん。彼らに僕たちの姿は見えない。これは、夢だから。マモル君の」


「本当に、これは夢なの?」


「夢だよ。マモル君は、この世界の住人じゃないから」


「住人って……良く分からない」


相棒は、用水路の側にしゃがみこんだ。

黒い濁った水が流れている。とっても鉄臭かった。



「どうしたの?」



「……」



相棒は、ドブから拾った一枚の写真を見ていた。

僕も写真を覗きこむ。


その写真の中には。


写真の中にはーーーー




『僕がいた』



パパとママと僕。それと相棒のロボットが仲良く並んで映っていた。


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