第83話 オリジナル魔法です!
男たちを星にしたあと、地面に落ちたお金の入った革袋へと近づく。
サミューちゃんの弓の腕はさすがで、革袋に穴が空くということはなく、ちょうど革袋の口を結んでいた部分に矢が刺さっていた。
矢を地面から引き抜き、革袋を拾う。
すると、木の上からサミューちゃんが降りてきて、空を飛んでいたムートちゃんも私のそばへと舞い降りた。
「それでどうするんじゃ? この貯水池を管理して、村から金を巻き上げていたやつらはいなくなったが、貯水池がこのままでは湖に水は戻らんぞ?」
ムートちゃんがいまだに濁った水が溜まる貯水池を見る。
大きさは湖よりは小さいがそれなりにある。小学校の25mプールよりは大きいかな。あと深さもある。
粗雑な作りの貯水池はこのままにしておけば決壊し、山を下り、村へと被害を及ぼすだろう。
水代を巻き上げられることはなくなったから、村人がここを管理していく道もあるとは思うが……。
「ちょすいち、なくす」
私がそう言うと、サミューちゃんが貯水池を見回しながら呟いた。
「この貯水池は元の山を崩し、掘り込んで作ったようです。まずは下へと掘り、地下水脈を当てたのちに、横へと広げていったのでしょう」
「うん」
「水脈が地表からあまり離れていないために、こうして貯水池を作れたようです。……どうしてここは水脈の場所が浅いと分かったのでしょうか……」
「普通の人間ならわからないじゃろうな。運が良かったのか、はたまた」
サミューちゃんの話にムートちゃんが眉根を寄せて、うーむと唸った。
「幼きエルフよ。ここに溜まっている水をなくしても、すぐにまた水はあふれてくるぞ。掘り抜いた部分を周りの地面と同じにしても、川のようになるだけじゃ」
「そう……ですね。レニ様のお力であればここを壊すことはできるでしょうが、そうすると水が決壊してしまいますね」
サミューちゃんも難しそうな顔をしている。
が、私は大丈夫! と胸を張って答えた。
「れに、できる。みてて」
とてとてと貯水池に近づく。
そして、貯水池の水に向かって猫の手で指を差した。多すぎず、多すぎず……。エルフの森でハサノちゃんと修行したことを思い出して……。
胸のあたりの熱さが、ゆっくりと指先へと集まっていく。これが魔力が【魔力路】を通っていく感覚だ。そして――
「――まほう、【でんしれんじ】」
――パチンとウインク。
その瞬間、ボッと貯水池の水が沸き、そのまますべてが蒸気へと変わった。
「れ、っレニさまっ!?」
「ぶふぉっ、おい、なんじゃこれはっ!!」
突然、蒸気が立ち上ったため、一体に白い雲のようなものができる。
たぶん熱いので、触れないようにして……、と。
「ねこのつめ!」
ジャッと右手を振るい、竜巻を発生させる。すると蒸気はそれに巻き込まれ、そのまま空へと登っていった。
「よし」
うまくいった! 想像通り! 我ながらうまくいったので、思わずふふふと笑ってしまう。
水を蒸気に変えたのは、私のオリジナル魔法、名付けて【電子レンジ】!
その名の通り、電子レンジの要領で、水分子を動かすイメージで行使する。今回はそのまま水に使用し、沸騰させて蒸気に変えたのだ。
ハサノちゃんと【魔力操作】の練習をしていたとき、熱中し過ぎて、せっかく持ってきてくれたあたたかいお茶が冷めてしまったときがあった。それを温めようとして、使ってみたらできるようになったのだ。
魔力の量としては。【
ゲームにはないオリジナル魔法だ。
「レニ様、お体は大丈夫ですか!? 魔力暴走は……!」
「だいじょうぶ。こんとろーるできてる」
サミューちゃんが焦ったように私の体を確認するように抱きしめる。なので、安心させるように、ぽんぽんと肩を叩いた。
「まだ、みてて」
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