第102話 囮

待ちに待った日曜日…。

今日は朝から雨だ。


雨の中傘を刺してファンタジーランドの入り口の前で小太りの老人が美少女五人と立っていた。

黒い高級車がゆっくりと近づいてきた。


「来たか」

鈴金角次郎は車から降りてくる栗生院吉城と雪見時奈を確認した。


「おい、まさか人形じゃないだろうな?あっちには根本博士の作ったガラクタがあるからな」


「安心しろ!僕は本物だ!」

と栗生院吉城は腕を捲りナイフで少し傷つけて血を見せた。


「雪見時奈の血も見せろ!それが嫌なわしが直々に触って確かめてもいいんだぞ?」

とにやりと視線を向けた。胸はないが、触ってやるか?

栗生院吉城は睨み彼女の指先を取ると


「ごめんよ…」

と言い、指先を少し切って血を見せた。


「本物のようだな!」


「彼女の両親はどこだ!?」


「その前に雪見時奈をこちらへ寄越せ!」

と言うと生意気にも栗生院吉城は


「嫌だね!両親の安否が確認できないのに渡せるか!」

と言った!


「ふん!まぁいい!両親はあの観覧車の中にいるさ。爆弾付きでな?」

と角次郎は大きな観覧車を見上げた。

ここからではどこに入っているか判らんだろう。だが、それはフェイクだ!あの中には誰もいやしない。爆弾があるだけだ。


本当はホラーハウスの叫びの魔女の家に縛り上げ睡眠薬で眠らせてある。もちろん見張りをつけている。


「汚い真似を…」


「さっさと雪見時奈を渡さないとドカンだ!」

と角次郎は笑った。


「解った…」

と栗生院吉城は雪見時奈にハグをし二人で近づいた。バカめ!

そこで美少女五人が動き雪見時奈と栗生院吉城をあっさり捕まえた!


「よくやった!お前達!さあ!やれ!」

と雪見時奈と栗生院吉城に注射針を刺した!


「くっ!!」

体内に薬が入った!これでもう奴は抵抗できないな!まさかこんなにすんなりいくとはな!

と思っていたら栗生院吉城と雪見時奈は美少女相手にその顔を思いっきり殴りつけた。


「がはっ!!」


「うぐっ!」


「千惠美!!ここみ!!」

まさか!そんなっ!人形か!?


千惠美とここみは鼻血を出し倒れ、杏子と七海と輝夜は武器を取り出して


「この野郎!よくもっ!」

と栗生院吉城に向かって拳銃を放った!ビシリと彼は弾を受けて血が吹き出したが、構わず撃った杏子に腹パンをかまして気絶させた!


「がっ!」


「何だ随分弱いな?女だからか?」

栗生院吉城が笑う。


雪見時奈も七海の腕を折り頭を地面に叩きつけた!


「はっ!!」


「杏子!七海!!」

輝夜はそこそこ強いはずの二人が倒れたのを見た。そしてちっ!と舌打ちし、新しい注射針を出して自分に打った!

すると打った腕がむくむくと盛り上がり白くて太い腕に変わる!


「ほう…そうやって怪人を作ってたのか…気に食わないね!」

輝夜は腕を振り下ろし殴りかかってきたがその腕を栗生院吉城は受け止めて輝夜を引き寄せ額を打ち付けた!!


ガンっ!と音がして


「グアっ!」

と輝夜も倒れた!


「な!何だと!?一体どういうことだ!?輝夜達がこんな…あっさり!!」

しかしそこで栗生院吉城と雪見時奈はブクブクと膨れて大男の怪人に様変わりした!!


「なっ!何だと!?囮かっ!!?」


「そう言うこった!鈴金さんよぉ!次はお前の番だ」

ニヤニヤと怪人が笑い近づく。


「バカめ!わしに近づいて見ろ!両親の命はない!!」

わしが命令したら両親は死ぬ!

しかし怪人は構わず近づく!


「おい待てえ!近づくな!両親は死ぬって言ってんだろ!」

パンパンと銃を撃つが怪人は怪我をしても止まらずついに角次郎をあっさり捉えて首を絞めた。


「ぐええええ!!」

死ぬっ!死んでしまう!つか両親を殺すからなぁ!とスーツのポケットに入っていたボタンを押した。くくくこれでもう終わりだ!


「おいおい?今何かしたか?」

と怪人がポケットの手をボキンと折った。


「ぎゃああああ!!」

角次郎は悲鳴をあげた!こいつら老人に何てことをしやがる!!


「爺さん?悪の組織を舐めてんじゃねぇぞ?次は首の骨でも折って地獄に行くか?」


「は!わしを謀ったな!今頃部下が雪見時奈の両親を殺しているころだぞ!」

とそこで怪人の持っていたスマホが鳴った。


「はいボス!そっちはどうですか?」

雪見時奈に化けていた怪人も美少女を縛り上げたところだった。


「おお、君なんて名前だっけー?まぁいいやよくやったな!ホラーハウスの叫びの魔女の家にいたわ。こっちは大丈夫だ!この翡翠様にかかればこんなもんだ!」

と言うと


「あ…ボスじゃねえじゃんあんた…用務員かよぉ…まぁいいや」


「おいちょっとお前ええ!どういうことだよ!俺用務員じゃなくて幹部だからな!?お前名前教えろこの…」

ブチっとスマホを切る怪人。


「な…何故…叫びの魔女にいると判った!?」


「悪の組織を舐めてんじゃねえって言っただろ?お前が知る必要はないっ!!」

と怪人はビシリと決めた。

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