第81話 女社長とその部下になりました

 テストが無事に終わった。

 結果は平均点より少し上で再テストを免れた!!

 因みに枝利香さんはギリギリで何とか免れて頭から煙を出していた。

 委員長も私と同じくらいか。

 吉城くんは全教科満点なのはもう言うまでもない。

 この人大学生とかでもやってける頭だよ!一つ下なのに!!


 ともかく再テストの学生以外は試験休みだ!

 その間に私の誕生日がある。

 吉城くんと2人きりの旅行だ。

 サントリーニ島では結局、ハイジャックとか蜂に刺されたりしてたしなぁ。

 今度は何も無いといいんだけど…なんか嫌な予感する。

 親衛隊とかが全国に潜んでて

(雪見時奈を殺せ!!)

(イケメンを独り占めにする憎き敵の首を取れ!)

 とか一斉に襲ってこられたらどうしよう…。

 大丈夫なんだろうか…。


 ていうかそっちも心配だけどやっぱり温泉旅行だし…い、いいいい一緒に温泉入るのかな?

 いや流石に男女別だよね。

 マンションでも風呂あがりの彼はもう素敵過ぎて直視できないけど。


 とりあえず私は旅行鞄に荷物を詰め込み眠りについた。


 *


 明日は時奈さんと温泉旅行だ。

 僕は荷物を準備した。


 カチャリ。


 ナイフにダーツ矢に拳銃…これはいらないかな?麻酔銃くらいにしとくか。

 後は煙ガス…。


 いやいや…流石に物騒かな?温泉宿は貸し切りにしたから他の客は泊まれないようにしたし従業員も部下の精鋭を滑り込ませたし怪しい奴は徹底的に排除するようにと言った!


 絶対に邪魔させるか!

 僕は気合を入れて眠りについた。


 *

 翌朝、朝日が輝き綺麗な朝焼けの中、私達はマンションを降りて鳴島さんに駅まで送ってもらった。


「坊っちゃま、雪見様行ってらっしゃいませ!ご無事で!」


「うん、行ってくるよ!鳴島もたまにはゆっくりしなよ!」


「ありがとうございます!」

 本当に鳴島さん付いてこないんだ…と思うと急にドキドキしてきた。だって新幹線で行くなんて普通過ぎるし!二人きりだし!


 でも私と吉城くんはその日変装をしていた。吉城くんは髪を七三分けにしてメガネをかけてビジネススーツを来てパソコンをカモフラージュに持っている。


 私は茶色のウィッグを被りサングラスをかけ、高そうなイヤリングとかつけて黒いドレススーツを着て金持ち風の女社長みたいな格好。


 完全に女社長とその部下だ。

 これなら割とバレないだろう…。私達はネットで顔バレしているし仕方なかった。


「ごめんなさい社長…窮屈な思いをさせてしまい…目的地まで暫く我慢を…」


「わ、判ってます!し、新幹線のグラグラクラスでしたっけ?こういうのもあるのね!」


「ふふ…グランクラスですよ…飛行機のファーストクラスの新幹線バージョンですね。飛行機よりは狭いですが、社長とより近くでご商談できるかと」

 と彼は演技をしながら隣に座る私の手をソッと握る。

 ひあああっ!この女社長と部下できてるうううう!!と思われるけど周りにはあまり人はいない。金持ち風の客が数人いるくらい。


 新幹線にしたのはヘリで行くと親衛隊が追跡するだろうし目立つ。変装して地味に行くのが1番だと言うことになりこんな茶番をしているのだ。


「大丈夫…客も部下だし、変な人がサントリーニ島の時みたいにハイジャックしないか見張ってるだけ」

 と小声で言う。

 ええええ!後ろにいるの部下かい!演技必要ないじゃん!!


「でも念のためだよ…それに楽しいからいいや」


「う、うん…」

 しかし吉城くんはスマホでこれ見てと画面を見せた。そこには


【E様と雪見時奈がお忍び旅行か?】

 の記事が出回っていた!!

 ひいいいいっ!もはや芸能人かよっ!!と思うくらいだ。どこにマスコミが潜んでるか判らない!

 しかもE様親衛隊達のページでは

【ドローンで全国全力操作中!目撃情報求む!】の見出しで雪見時奈を許すな!

 などめちゃくちゃ誹謗中傷され私は悲しくなる。すると吉城くんが


「ごめん…ごめんよ…」

 と私の手を少し強く握る。


「貴方がいるから大丈夫です!」

 と私は言う。


「社長…」

 と彼は赤くなり私の頰にキスする。


「ひぐっ!!」

 部下いるから!後ろの方にいるから!!

 シートでそりゃ見えないだろうけど!桃色の空気がただ漏れてるからあ!!


 女社長とその部下はイチャイチャしながら目的地へと運ばれていく。


 しかし後ろの方でガタンと音がした。

 彼は状況をこっそりと聞くとやはり怪しい動きの女がグランクラスの中を覗こうとしていたとか。


「鉄道警察に次の駅で突き出しておけ!」

 と彼は小声で指示した。


「嗅ぎつけられたかな?」


「ええっ?はやっ!」


「親衛隊を甘く見てたらいけない…宿もバレてなきゃいいんだけど…まぁ対策はしてるけど…露天は外じゃ無理かもしれないな…」


「うっ…うん、そうだよ、大丈夫男女別の室内温泉風呂でも私は平気よ」

 というと彼は


「何言ってるの?男女別の室内温泉風呂なんて危険過ぎる!貸し切りにしていても奴等は従業員になりすまして入ってくる可能性もある!昔からいる従業員達だろうけど女性従業員には注意しないとだから!」


「ええっ!じゃあ、温泉に入れないの?」

 折角行くのに!温泉無しかよ!!?


「いや…部屋についてるし一応」

 と彼はまた赤くなる。


 えっ…待って。

 部屋に温泉が…付いとると?


 部屋に…。


「そそそそ!そうなのっ!!??」

 部屋にシャワーとかが付いてる旅館とかは聞いたことあるけど。


 えっ?

 でもそれってまさか…


「いいい…一緒に入ったりしないよね?」

 と一応聞くと


「社長が嫌なら…」

 と言われ彼はしゅんとした。

 入りたいんかいいいいいいい!!!!

 いや、だって!そんなのカップルじゃん!!

 いや、カップルだったよおおおお!!

 でででもあのその!健全に私はその!

 いやクリスマスでそりゃあの!

 それ以来キスくらいでずっと済ませてますけど!


 いやでも!!いや!


 私からシューーーーーッと煙が出始めた。

 ダメだ!想像したら死ぬぞ!


「社長!しっかり!社長!!」

 私は目的地まで気を失いそうになった。

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